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1001.

COVID-19パンデミックによる米国うつ病有病率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと感染症防止のための政策は、抑うつ症状に対する未知の影響を伴い、全米に拡大した。米国・ボストン大学のCatherine K. Ettman氏らは、米国成人におけるCOVID-19パンデミックによるの抑うつ症状の有症率とリスク因子を推定するため、検討を行った。JAMA Network Open誌2020年9月1日号の報告。 本研究は、18歳以上の米国成人を対象とした2つの人口ベースの調査を用いた、米国国民生活調査として実施した。COVID-19と生活ストレスによるメンタルヘルスやウェルビーイングへの影響に関する研究より、COVID-19パンデミック期間の推定値を算出した。調査期間は、2020年3月31日~4月13日とした。COVID-19パンデミック前の推定値は、2017~18年に実施した国民健康栄養調査のデータより抽出した。データの分析は、2020年4月15日~20日に実施した。COVID-19パンデミックおよびそれを軽減するための政策に関連するアウトカムへの影響を調査した。主要アウトカムは、抑うつ症状(こころとからだの質問票[PHQ-9]カットオフ値10以上)とした。抑うつ症状の重症度分類は、なし(スコア:0~4)、軽度(スコア:5~9)、中等度(スコア:10~14)、中等度から重度(スコア:15~19)、重度(スコア:20以上)とした。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19パンデミック中に調査を完了した参加者は1,470人(完了率:64.3%)であった。データが不十分な参加者のデータは削除し、最終的に1,441人のデータを分析した(18~39歳:619人[43.0%]、男性:723人[50.2%]、非ヒスパニック系白人:933人[64.7%])。・パンデミック前のデータとして、5,065人分のデータが使用された(18~39歳:1,704人[37.8%]、女性:2,588人[51.4%]、非ヒスパニック系白人:1,790人[62.9%])。・抑うつ症状の有病率は、いずれの重症度においてもCOVID-19パンデミック中のほうがパンデミック前よりも高かった。 ●軽度:24.6%(95%CI:21.8~27.7) vs.16.2%(95%CI:15.1~17.4) ●中等度:14.8%(95%CI:12.6~17.4) vs.5.7%(95%CI:4.8~6.9) ●中等度から重度:7.9%(95%CI:6.3~9.8) vs.2.1%(95%CI:1.6~2.8) ●重度:5.1%(95%CI:3.8~6.9) vs.0.7%(95%CI:0.5~0.9)・COVID-19パンデミック中に、抑うつ症状リスクの高さと関連していた因子は以下のとおりであった。 ●収入の少なさ(オッズ比:2.37、95%CI:1.26~4.43) ●収入と支出の差額が5,000ドル未満(オッズ比:1.52、95%CI:1.02~2.26) ●ストレス要因の多さ(オッズ比:3.05、95%CI:1.95~4.77) 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミック中の抑うつ症状有病率は、パンデミック前と比較し、3倍以上高いことが示唆された。社会的資源や経済的資源が少なく、失業などのストレス要因が、抑うつ症状の発症に影響を及ぼしている。COVID-19パンデミック後においては、今後精神疾患の発症が増加する可能性があり、とくに高リスク集団では、注意が必要である」としている。

1002.

日本人統合失調症患者における経皮吸収型ブロナンセリンのD2受容体占有率

 経皮吸収型の抗精神病薬は、アドヒアランスの改善など、潜在的なベネフィットを有している。大日本住友製薬のHironori Nishibe氏らは、経皮吸収型ブロナンセリン1日1回の使用による線条体のドパミンD2受容体占有率について調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年9月16日号の報告。 本研究は、ブロナンセリン錠8mg/日または16mg/日で治療された、日本人統合失調症外来患者18例(20~64歳、スクリーニング時の陽性・陰性症状評価尺度[PANSS]スコア120未満)を対象とした非盲検第II相臨床試験である。対象患者は、2~4週間のブロナンセリン錠による治療後、経口用量に基づき、2~4週間の経皮吸収型ブロナンセリン1日1回使用の1日量10mg、20mg、40mg、60mg、80mgに割り付けられた。主要評価項目は、ブロナンセリンの線条体ドパミンD2受容体占有率とし、[11C]raclopride-PET画像を用いて測定した。副次評価項目は、用量別の受容体占有率の評価、PANSSおよび臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアの変化、アドヒアランスに対する患者の意向、経皮吸収型製剤の粘着性とした。 主な結果は以下のとおり。・ブロナンセリン錠での治療を開始した患者18例のうち、14例が治療を完了した。・ブロナンセリンの錠剤および経皮吸収型製剤の用量別の平均D2受容体占有率は、以下のとおりであった。 ●ブロナンセリン錠8mg/日:59.2%(5例) ●ブロナンセリン錠16mg/日:66.3%(9例) ●経皮吸収型ブロナンセリン10mg/日:33.3%(3例) ●経皮吸収型ブロナンセリン20mg/日:29.9%(2例) ●経皮吸収型ブロナンセリン40mg/日:61.2%(3例) ●経皮吸収型ブロナンセリン60mg/日:59.0%(3例) ●経皮吸収型ブロナンセリン80mg/日:69.9%(3例)・受容体占有率は、錠剤、経皮吸収型製剤ともに用量依存的に増加していた。・受容体の50%阻害濃度(IC50)は、錠剤で6.9mg/日、経皮吸収型製剤で31.9mg/日であった。・受容体占有率の日内変動は、錠剤よりも経皮吸収型製剤のほうが小さかった。・経皮吸収型ブロナンセリンは、安全性に重大な問題は認められず、十分な忍容性が認められた。 著者らは「ブロナンセリンの経皮吸収型製剤は錠剤と比較し、D2受容体占有率の日内変動が小さく、錠剤8mg/日から経皮吸収型製剤40mg/日、錠剤16mg/日から経皮吸収型製剤80mg/日がそれぞれ適切な切り替え用量であると考えられる。経皮吸収型ブロナンセリンは、統合失調症の潜在的な新しい治療オプションであることが示唆された」としている。

1003.

統合失調症患者のCOVID-19による院内死亡率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院が必要となる統合失調症患者の特徴やアウトカムに関する情報は限られている。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、COVID-19に罹患した統合失調症患者の臨床的特徴およびアウトカムを明らかにするため、統合失調症でない感染者との比較検討を行った。L'Encephale誌オンライン版2020年7月30日号の報告。 本検討は、南フランス・マルセイユの4つの公的支援急性期医療病院に入院したCOVID-19患者の症例対照研究として実施した。入院を必要とするCOVID-19患者は、鼻咽頭サンプルのPCR検査および/または胸部CTの陽性結果で確認した。主要アウトカムは院内死亡率とし、副次的アウトカムはICU入室とした。 主な結果は以下のとおり。・対象感染者数は、1,092例であった。・院内死亡率は、全体で9.0%であった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、死亡率が高かった(26.7% vs.8.7%、p=0.039)。このことは、年齢、性別、喫煙状況、肥満、合併症で調整した後の多変量解析でも確認された(調整オッズ比:4.36、95%CI:1.09~17.44、p=0.038)。・COVID-19に罹患した統合失調症患者は、統合失調症でない感染者と比較し、ICU入室率が低かった。・COVID-19に罹患した統合失調症患者の63.6%は、施設に入所しており、死亡した患者は、すべて施設に入所していた。また、これらの患者は、がんや呼吸器疾患の合併症を有する割合が高かった。 著者らは「COVID-19に罹患した患者の中で、統合失調症患者の適切な評価がなされていない可能性が示唆された。統合失調症患者では、COVID-19による死亡リスクが高く、身体合併症などの有無を確認する必要がある」としている。

1004.

アジア人統合失調症患者におけるBMIと錐体外路症状との関係~REAP-AP研究

 これまでBMIとパーキンソン病との関連がいくつか報告されているが、統合失調症患者におけるBMIと抗精神病薬誘発性の錐体外路症状(EPS)との関連を報告した研究は少ない。韓国・Inje University Haeundae Paik HospitalのSeon-Cheol Park氏らは、統合失調症患者におけるBMIとEPSの関連を評価するため、検討を行った。Psychiatria Danubina誌2020年夏号の報告。 向精神薬処方に関するアジア国際共同研究の抗精神病薬(Research on Asian Psychotropic Prescription Patterns for Antipsychotics:REAP-AP)のデータを用いて、体重で層別化した統合失調症患者1,448例を対象にEPSの発現率を比較した。体重の層別化には、WHOの肥満度分類およびアジアパシフィック肥満分類を用いた。主な結果は以下のとおり。・WHO肥満度分類を用いた検討において、多項ロジスティック回帰モデル(交絡因子の潜在的な影響を調整)では、低体重は運動緩慢、筋強剛の発現率増加および歩行障害の発現率低下との有意な関連が認められた。・アジアパシフィック肥満分類を用いた検討において、多項ロジスティック回帰モデル(交絡因子の潜在的な影響を調整)では、低体重は筋強剛の発現率増加との有意な関連が認められた。 著者らは「アジア人統合失調症患者では、低体重が筋強剛の発現率増加と段階的なパターンで関連していることが明らかとなった。このメカニズムについては、不明な点があるものの、第1世代抗精神病薬の使用や抗精神病薬の用量にかかわらず、低BMIが筋強剛の発現に影響を及ぼしていると推測される」としている。

1005.

菜食とメンタルヘルスリスク

 これまでの研究では、うつ病、不安、ストレスなどのメンタルヘルスの問題への菜食の影響については、一貫した結果が得られていない。イラン・テヘラン医科大学のMohammadreza Askari氏らは、菜食とうつ病、不安、ストレスとの関連についての理解を深めるため、システマティックレビューを実施した。Critical Reviews in Food Science and Nutrition誌オンライン版2020年9月4日号の報告。 2020年7月までの研究を、Scopus、PubMed、Web of Scienceより検索した。成人を対象に菜食のうつ病、不安、ストレスへの推定リスクを検討したプロスペクティブコホート研究および横断研究を分析に含めた。エフェクトサイズの統合には、固定効果モデルおよびランダム効果モデルを用いた。主な結果は以下のとおり。・菜食とうつ病、不安、ストレスとの関連を評価した研究13件(コホート研究:4件、横断研究:9件)が抽出された。・10件の研究における統合エフェクトサイズでは、菜食とうつ病との関連は認められなかった(統合エフェクトサイズ:1.02、95%CI:0.84~1.25、p=0.817)。・4件の研究における統合エフェクトサイズでは、菜食と不安との関連は認められなかった(統合エフェクトサイズ:1.09、95%CI:0.71~1.68、p=0.678)。・ストレスに関するデータは不十分であった。 著者らは「菜食とうつ病または不安との有意な関連は認められなかった。メンタルヘルスに対する菜食の影響をさらに調査するためには、今後のコホート研究が求められる」としている。

1006.

初回エピソード統合失調症の治療開始の遅延に対する患者の性格や家族の影響

 統合失調症では、精神疾患の未治療期間が重要な予後の指標である。韓国・全南大学校のAnna Jo氏らは、統合失調症の治療開始の遅延に対する患者の性格や家族関係の影響について調査を行った。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2020年9月2日号の報告。 初回エピソード統合失調症と診断された患者169例より、データをプロスペクティブに収集した。患者の性格はビッグファイブ性格尺度(BFI-10)を用いて調査し、家族関係は家族機能測定尺度(FACES-III)を用いて評価した。患者の臨床的特徴を評価するため、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および社会的職業的機能評定尺度(SOFAS)を用いた。未治療期間の定義は、精神症状の最初の出現から適切な抗精神病薬治療の開始までの時間とした。対象患者は、未治療期間3ヵ月(カットオフ中央値)で2つのグループに分類した。主な結果は以下のとおり。・未治療期間は、平均12ヵ月、中央値3ヵ月であった。・未治療期間の長さは、年齢の高さ、PANSSスコアの高さ、SOFASスコアの低さと関連が認められた。・自殺企図の頻度は、未治療期間が長い患者群で高くなる傾向が認められた(p=0.055)。・未治療期間が長い患者では、BFI-10の誠実性が有意に高く、FACES-IIIの凝集性と適応性が有意に低かった。・ロジスティック回帰では、未治療期間が長いほど、BFI-10における高レベルの誠実性、FACES-IIIにおける凝集性の低さとの有意な関連が認められた。 著者らは「未治療期間の長さは、家族の凝集性の低さや患者の誠実性の高さと関連していることが示唆された。精神症状が発現した際、患者のメンタルヘルスサービスへのアクセスに関して、家族が重要な役割を果たしているであろう」としている。

1007.

うつ病予防のための運動介入~メタ解析

 うつ病の予防として、運動介入が注目されている。しかし、うつ病予防に対する運動介入の効果を検討したエビデンスの結果は、研究間で大きく異なっている。オランダ・アムステルダム自由大学のMandy X. Hu氏らは、うつ病予防のための運動介入の効果を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Public Health誌2020年8月18日号の報告。 2018年7月までの研究を、PubMed、Embase、PsycINFO、Cochraneよりシステマティックに検索した。一般集団におけるうつ病または抑うつ症状の発症に対する、運動介入の効果を検討したランダム化比較試験のメタ解析を分析した。うつ病患者の治療に焦点を当てた研究は除外した。2人の独立した執筆者によりスクリーニングを行い、AMSTAR 2を用いてメタ解析の質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・8件のメタ解析が抽出され、これらに含まれていた134研究の重複はほとんどなかった。・すべてのメタ解析において、うつ病ではなく抑うつ症状がターゲットとされていた。・メタ解析の質は、中程度:5件、低:3件であった。・小児、青年、成人、高齢者の抑うつ症状の軽減に対する運動介入は、6件のメタ解析で有意な効果が認められたが、2件のメタ解析では認められなかった(エフェクトサイズの範囲:-0.10~-0.81)。・エビデンスが不足しているため、うつ病に対する性別の影響や運動の内容については、明らかにできなかった。・しかし、いくつかの研究結果では、軽度の運動でも、高負荷運動と同様の効果があることが示唆された。・研究の質や運動の内容の違いにより、1次研究間での不均一性が高かったと考えられる。 著者らは「運動介入が、幅広い年齢層の一般集団において、抑うつ症状の軽減や予防に有用である可能性が示唆された」としている。

1008.

統合失調症に対する抗精神病薬の維持療法

 統合失調症の症状や徴候は、脳の辺縁系に代表される特定の領域における高レベルのドパミンと関連している。抗精神病薬は、脳内のドパミン伝達をブロックし、統合失調症の急性症状を軽減させる。本レビューの元となる2012年発表のレビューでは、抗精神病薬が再発防止にも有効であるか調査された。今回、イタリア・ブレシア大学のAnna Ceraso氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬の維持療法の効果について、薬剤を中止した場合と比較し、検討を行った。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2020年8月11日号の報告。 臨床試験を含むコクラン統合失調症グループのレジストリより検索した(2008年11月12日、2017年10月10日、2019年9月11日)。統合失調症または統合失調症様精神疾患の患者を対象とし、抗精神病薬とプラセボによる維持療法の比較を行ったすべてのランダム化比較試験(RCT)を選択した。独立してデータを抽出した。2値データの場合、ランダム効果モデルに基づくITT分析により、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。連続データの場合、ランダム効果モデルに基づき、平均差(MD)または標準化平均差(SMD)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、抗精神病薬とプラセボを比較したRCT 75件(9,145例)を含めた。・1959~2017年に公開された研究で、対象者の規模は14~420例の範囲であった。・多くの研究において、ランダム化、割り付け、盲検化の手法は、あまり報告されていなかった。また、分析をバイアスリスクが低い研究に限定した場合でも、同様の結果であった。・これらの潜在的なバイアスにより全体的な研究の質は限定されたが、統合失調症の維持療法に対する抗精神病薬の有効性は明らかであった。・抗精神病薬の維持療法は、プラセボと比較し、7~12ヵ月の再発予防に効果的であった(再発率:24% vs.61%、30 RCT、4,249例、RR:0.38[95%CI:0.32~0.45]、NNTB[number needed to treat for an additional beneficial outcome]:3[95%CI:2~3]、エビデンスの確実性:高い)。・入院リスクは、ベースライン時が低リスクであったものの、プラセボと比較し減少が認められた(入院率:7% vs.18%、21 RCT、3,558例、RR:0.43[95%CI:0.32~0.57]、NNTB:8[95%CI:6~14]、エビデンスの確実性:高い)。・抗精神病薬の維持療法よりもプラセボのほうが、すべての原因による治療中止(7~12ヵ月時点の中止率:36% vs.62%、24 RCT、3,951例、RR:0.56[95%CI:0.48~0.65]、NNTB:4[95%CI:3~5]、エビデンスの確実性:高い)および効果不十分による治療中止(7~12ヵ月時点の中止率:18% vs.46%、24 RCT、3,951例、RR:0.37[95%CI:0.31~0.44]、NNTB:3[95%CI:3~4])が多かった。・抗精神病薬の維持療法は、QOL(7 RCT、1,573例、SMD:-0.32[95%CI:-0.57~-0.07]、エビデンスの確実性:低い)および社会的機能(15 RCT、3,588例、SMD:-0.43[95%CI:-0.53~-0.34]、エビデンスの確実性:中程度)に対しても良好な影響を及ぼす可能性がある。・不十分なデータではあるものの、プラセボと比較し、自殺による死亡(0.04% vs.0.1%、19 RCT、4,634例、RR:0.60[95%CI:0.12~2.97]、エビデンスの確実性:低い)および就労の割合(9~15ヵ月の就労率:39% vs.34%、3 RCT、593例、RR:1.08[95%CI:0.82~1.41]、エビデンスの確実性:低い)についての差は認められなかった。・抗精神病薬の維持療法は、薬剤や期間に関係なく、運動障害(1つ以上の運動障害:14% vs.8%、29 RCT、5,276例、RR:1.52[95%CI:1.25~1.85]、NNTH[number needed to treat for an additional harmful outcome]:20[95%CI:14~50])、鎮静(8% vs.5%、18 RCT、4,078例、RR:1.52[95%CI:1.24~1.86]、NNTH:50[95%CI:有意差なし])、体重増加(9% vs.6%、19 RCT、4,767例、RR:1.69[95%CI:1.21~2.35]、NNTH:25[95%CI:20~50])の発生率がプラセボよりも高かった。 著者らは「統合失調症患者に対する抗精神病薬の維持療法は、約2年間のフォローアップ調査において、プラセボよりもはるかに高い再発予防効果が示唆された。ただし、この効果と副作用のバランスを検討する必要がある。今後の研究によって、薬剤に関連する長期的な副作用発現率や死亡率をより明らかにする必要がある」としている。

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イエスマン(後編)【日本人ならではの幸福感とは?(幸福感の心理)】Part 1

今回のキーワード幸福感(主観的ウェルビーイング)ポジティブ率セットポイント代償(トレードオフ)ミニマリスト幸福感学習性楽観学習性無力感マインドフルネス【前編】では、ポジティブさもネガティブさも、それぞれメリットとデメリットがあることが分かりました。幸せかどうかという視点に立つと、ネガティブ過ぎれば、明らかに幸福感は低くなります。実際に、幸福度における日本の世界順位は概ね50位圏外で、中・下位です。一方、ポジティブ過ぎれば、一見、幸福感は高まりそうです。しかし、そうではないようです。実際に、幸福度におけるアメリカの世界順位は20位程度で、最上位とは言えないです。つまり、ポジティブ過ぎても幸福感は高まらないと言えます。そもそも、幸せを感じるとはどういうことでしょうか? そして、日本人が幸せを感じるにはどうすれば良いでしょうか? これらの答えを探るために、今回も、映画「イエスマン」を取り上げます。この映画を通して、幸福感を行動遺伝学的にも解き明かします。そして、日本人ならではの幸福感について一緒に考えてみましょう。 幸せを感じるとは?-幸福感を左右する心理それでは、幸せを感じること、つまり幸福感(主観的ウェルビーイング)幸福感(主観的ウェルビーイング)を左右する心理を3つ挙げてみましょう。(1)良いことより悪いことは強い-ネガティビティ優勢性1つ目は、良いことより悪いことは強く感じることです。これは、ポジティブな体験よりも、ネガティブな体験はインパクトが強く影響を受けやすい心理です(ネガティビティ優勢性)。この訳は、脳科学的に言えば、ポジティブな体験がドパミンによる報酬である一方、ネガティブな体験はノルアドレナリンによる恐怖だからです。たとえば、ドパミンによる学習効果(ほめ)は即効性がなく繰り返す必要がありますが、ノルアドレナリンによる学習効果(叱り)は即効性があることが分かっています。この詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。進化心理学的に言えば、報酬は1回なくてもすぐに飢え死にすることはないですが、恐怖は1回だけでも死につながります。この点で、哺乳類の記憶学習のメカニズムである夢やフラッシュバックが基本的にネガティブなものであることも納得が行くでしょう。また、人が、良い噂よりも悪い噂に敏感であることや、良い印象よりも悪い印象を覆しにくいこと(印象形成のバイアス)にも納得するでしょう。つまり、ネガティブな体験のインパクト(質)が強いからこそ、人はポジティブな感情や行動の数(量)で対抗してバランスをとる心理を生存戦略として身に付けたと言えます。言い換えれば、人は、不幸がいきなりやって来るから、それを乗り越えるために、幸せをこつこつ追い続けていると言えるでしょう。実際に、ポジティブ心理学の研究(フレドリクソン)によると、ポジティブな感情とネガティブな感情の比の黄金比は3対1(ポジティブ率75%)であるという結果が出ています。また、カップルなどの親密な関係における研究(ゴッドマン)によると、ポジティブな行動とネガティブな行動の「魔法の比率」は5対1(ポジティブ率83%)であるという結果が出ています。なお、この記事のポジティブ率とは、ポジティブな感情の頻度(P)を、ポジティブな感情の頻度(P)とネガティブな感情の頻度(N)で割った値(P/P+N)とします。(2)良いことも悪いこともなければマシ-ポジティビティ補正2つ目は、良いことも悪いこともなければ、自分はマシ(まだ良い)と感じることです。これは、ポジティブ体験もネガティブ体験もない時は、人はポジティブな感情を軽く抱く心理です(ポジティビティ補正)。この訳は、脳科学的に言えば、ポジティブな感情は、ドパミンによる報酬(社会的報酬を含む)だけでなく、オキシトシンによる愛着・絆によるものでもあることが考えられます。オキシトシンは、それ自体に学習効果は(行動変容)ないですが、見守られている自尊心からポジティブな感情を維持できます。この詳細についても、末尾の関連記事2をご参照ください。進化心理学的に言えば、人は、原始の時代から、愛着・絆によって、ネガティブな感情よりもポジティブな感情を少しだけでも保つ心理を生存戦略として身に付けたのでしょう。つまり、人はもともと軽く幸せであると言えます(ポジティブ率50%+α)。ちなみに、このマシと思う心理は、自分は人と比べてもマシという心理(平均以上効果)や、何となくうまくいく気がするという心理(ポジティブバイアス)につながります。 (3)良いことも悪いことも長続きしない-感情減衰バイアス3つ目は、良いことも悪いことも長く感じ続けることはないことです。これは、ポジティブ体験もネガティブ体験も、時間とともにそのインパクトが目減りする心理です(感情減衰バイアス)。この訳は、脳科学的に言えば、一般的な記憶のメカニズムで説明できます。たとえば、受験に合格した時や失恋した時の感情の経過を想像すれば分かりやすいでしょう。進化心理学的に言えば、快感が持続してしまったら、食べる快感やセックスする快感を得るための行動づけや動機づけが行われなくなり、生存や生殖をしなくなるからです。つまり、人は、幸せがだんだん薄れるから、幸せをこつこつ追い続けていると言えるでしょう。どんなに恵まれた環境であっても、 慣れて飽きてくるというわけです。これは、下りのエレベータを上り続けている状況に例えられます(ヘドニックトレッドミル現象)。また、これは「楽あれば苦あり」「禍福はあざなえる縄のごとし」という日本のことわざに通じます。残念ながら、人は幸せになるように遺伝的にプログラムされていないということです。遺伝的にプログラムされているのは、人が幸せを追い続けることです。なお、つらいことも時間が経てば笑い話になるとよく言われます。これは、深刻さのインパクトが時間の経過によって失われるからであると説明できるでしょう。また、「昔は良かった」「古き良き時代」「最近の若者は」という言い回しは、ネガティブ体験のインパクトが失われた過去とまだインパクトが失われていない現在を比べた時の心理状態と考えると納得がいくでしょう(記憶の楽観性)。実は幸福感は遺伝的に決まっている!?幸福感(主観的ウェルビーイング)を左右する3つの心理から、人は、もともと軽く幸せですが、不幸がいきなりやって来るから、そして幸せがだんだん薄れるから、幸せをこつこつ追い続けていることが分かりました。では、「もともと幸せ」ということは、幸福感は、実は最初から決まっているのでしょうか? ここから、この答えを3つのポイントに分けて、行動遺伝学的に考えてみましょう。なお、幸福感の起源については、末尾の関連記事3をご覧ください。 (1)個人差双子研究から、幸福感の遺伝率は約50%であることが分かっています。言い換えれば、幸福感の半分の要素は、やはりもともと遺伝的に決まっています。これは、セットポイントと呼ばれます。ここで、幸福感を「体温」に例えてみましょう。すると、このセットポイントは「基礎体温」です。ネガティブな体験は「吹雪」、ポジティブな体験は「マッサージ」です。もし「吹雪」に1回襲われたら、「体温」が下がります。よって、「体温」を保つために、「マッサージ」を繰り返しやるのです。愛着・絆は、「基礎体温」を安定させる「防寒具」です。もちろん「防寒具」があれば、その分「吹雪」に耐えられます。逆に、家族との死別や離婚などによって「防寒具」が薄くなったら、その分「吹雪」に耐えられなくなります。ただし、「防寒具」に頼り過ぎると、「マッサージ」をするのを怠り、その「防寒具」が分厚くなる共依存やひきこもりのリスクがあります。なお、「マッサージ」と「防寒具」は体温を下げない点では同じですが、「マッサージ」が断続的であるのに対して「防寒具」は持続的であるとイメージすると分かりやすいでしょう。1つ目は、個人差です。人によって「基礎体温」がそれぞれ違うように、幸福感のセットポイントはそれぞれ違うと言えます。たとえば、基礎体温が35℃台の「寒がり」の人や37℃近い「暑がり」の人がいるように、幸福感を左右するポジティブ率が50%台のネガティブな人や70%近いポジティブな人がもともといると言えます。(2)年齢差幸福感の遺伝率は、対象期間が長くなればなるほど高まり、最終的には80%になることが分かっています。つまり、幸福感は、高齢になるとセットポイントに回帰して行くということです。よくよく考えると、若い頃は、活力に満ち溢れ、チャレンジ精神で革新的になります。その分、ポジティブ率は高いです。確かに、そのままうまく行けば、幸福感も高まるでしょう。ただし、チャレンジに失敗したら、ネガティブな体験を味わうので、結果的に幸福感は下がってしまいます。このように、若年期は、幸福感の振れ幅が大きくなります。これは、ポジティブ率が高過ぎることによる代償(トレードオフ)です。一方、歳を重ねると、活力が枯れしぼみ、これまで自分が得た家族や財産(リソース)を守ろうと保守的になります。すると、その分のポジティブ率が上がりません。もちろん、リスクを踏まないので、ネガティブな体験もありません。こうして、その人のもともとの幸福感が露わになっていくというわけです。例えるなら、先ほどの「体温」に影響する「吹雪」も「マッサージ」もなくなり、「体温」が「基礎体温」と同じになるということです。2つ目は、年齢差です。年齢によって「体温」がそれぞれ違うように、同じ人でも年齢によって幸福感はそれぞれ違うと言えます。高齢者の心理として見れば、猜疑的になる人と多幸的になる人がそれぞれいるのは、このセットポイントへの回帰が示唆されます(パーソナリティの先鋭化)。(3)人種差(文化差)ものごとを自分で判断できるという状況は、アメリカ人にとってはポジティブな体験です。しかし、日本人にとっては必ずしもそうではありません。なぜなら、日本人は、もともとの不安な気質から指示待ちすること好み、逆に自分で判断することがストレスになりうるからです。しかも、自分で判断したら、周りから「出しゃばり」「調子に乗っている」と思われ、ネガティブな体験をするリスクもあります。逆に、何もしなかったり変わらないことで、周りとの調和を生み出して、ポジティブな体験をすることもあります(ミニマリスト幸福感、協調的幸福感)。また、日本人の平均寿命の世界順位が最上位であることは、身体的な健康として誇るべきことです。つまり、幸福感の物差しは1つではないということです。この点で先ほど紹介した幸福感をランキングすることには、その評価基準に限界があるでしょう。一方で、アメリカ人はポジティブ率がとても高いのに、実際にはアメリカはストレス大国と言われています。このストレスは、先ほどの年齢差の説明でも登場したポジティブになることの代償(トレードオフ)です。例えるなら、日本人はもともと「基礎体温」が低い「寒がり」です。そして「心の風邪」であるうつ病になりやすいです。かと言って、「マッサージ」を無理にすることは、もっと「吹雪」を招くおそれがあるため、そう簡単に「暑がり」にはなれないと言えます。一方、アメリカ人はもともと「基礎体温」が高い「暑がり」です。その代償として、「心の肥大」である肥満や浪費の問題が起きやすくなると言えます。3つ目は、人種差(文化差)です。人種や文化によって「寒がり」だったり「暑がり」だったりするように、相互作用を起こす人種(遺伝)と文化(環境)によって幸福感はそれぞれ違うと言えます。たとえば、もともと「基礎体温」が35℃後半(ポジティブ率50%後半)の文化圏の人が、先ほどの理想とされるポジティブ率75%や83%にまで達する必要は必ずしもないと言えるでしょう。次のページへ >>

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イエスマン(後編)【日本人ならではの幸福感とは?(幸福感の心理)】Part 2

日本人が幸福感を再び取り戻すには?幸福感(主観的ウェルビーイング)は、ある程度遺伝的に決まっており、個人差、年齢差、人種差(文化差)があることが分かりました。それでは、日本人の幸福感はこのままで良いのでしょうか?答えは、江戸時代までなら良かったと言えます。なぜなら、日本人の幸福感は、資源の少ない江戸時代までの集団主義によって最適化されてきたからです。しかし、現代では、このままの幸福感はもはや決して良くはないでしょう。 理由は2つ挙げられます。1つ目は、現代の社会は、文明の進歩によって物質的には豊かで安全になっており、飢餓に不安を感じてネガティブになる必要がなくなったからです。もう1つは、世界基準による個人主義化によって、自己主張してポジティブになる必要が出てきたからです。つまり、幸福感を評価するには、時代(環境)の変化を考える必要があります。これは、4つ目の時代差とも言えます。実際に、うつ病やひきこもりによって精神的な健康が損なわれています。また、貧困(格差)、非婚、出生率の低下、超高齢化によって社会的な健康も危うくなっています。例えるなら、ストレスである「吹雪」(コロナ渦という「大吹雪」も含めて)がますます増えた一方で、愛着・絆である「防寒具」がますます薄くなってしまっています。つまり、時代の変化によって、日本人の幸福感はますます失われています。日本人は、幸福感を再び取り戻すために、もう少しポジティブになる時が来ています。それでは、具体的にどうすれば良いでしょうか? 大きく2つに分けてみましょう。(1)ルール化してポジティブになる映画の後半で、カールは、カリスマ主催者に再会した時、「無理にイエスと言うだけですよね?」と尋ねます。すると、カリスマ主催者は「最初はそうだが、それは馴らすためだ」「その後に自然とイエスが出るようになる」「義務だからじゃなく、心から言えるようになる」「誓いを破ったら災いなんて最初からない。ただの出まかせだ」と種明かしをします。1つ目は、ルール化してポジティブになることです。これは、ポジティブ心理学では、学習性楽観と呼ばれています。ポジティブな行動を繰り返すと、ポジティブな思考パターン(認知)を学習していくという認知行動療法です。ちなみに、その逆が、学習性無力感です。これは、犬に電気ショック(罰)を与え続けると、最初は逃げるのに、やがて逃げられないことが分かると、逃げるのをあきらめて無力感を学習することです。しかも、その後に逃げられる状況になっても、その無力感から逃げなくなることです。日本の文化においては、ポジティブになろうとしても、相手からネガティブに思われるかと不安になったり、相手のポジティブなリアクションがなくて不公平に思ったり、慣れなくて長続きしないおそれがあります。だからこそ、最初からルール化して割り切ることです。そして、自分だけでなく、相手もポジティブになる必要性を理解できるようになることです。例えるなら、ポジティブな体験である「マッサージ」の練習をし続けることです。(2)研ぎ澄ましてニュートラルになる2つ目は、研ぎ澄ましてニュートラルになることです。この心のあり方を、心理学ではマインドフルネスと言います。この詳細については、末尾の関連記事4をご参照ください。端的に言うと、どんな体験に対しても、ポジティブかネガティブかと価値判断せずに、さまざまな面を俯瞰して眺め、想像することで、人それぞれが一生懸命に生きている、自分も生かされていることに気付くようになることです。そこから、どんな状況や相手にもありがたみ(感謝)、思いやり(慈愛)、さらには許し(寛容)の気持ちが沸いてきて、受け入れるようになります(受容)。この受容は、ポジティブさとネガティブさを包括したニュートラルな心のあり方です。これは、関連記事1で紹介した概念化にも通じます。精神医学では、サリエンス(際立ち)とも言います。例えるなら、「防寒具」や「マッサージ」の存在の大きさに気付くことです。ちなみに、マインドフルネスは、森田療法や内観療法などの日本古来のセラピーにもつながります。ニュートラルになることは、白黒付けずに調和することです。これは、もともと日本人をはじめとする東洋人のメンタリティでもあります。なお、感謝、慈愛、寛容などの受容は、ポジティブ心理学では、ポジティブであること(ポジティビティ)に含まれています。確かに、受容(サリエンス)は、快感と同じドパミンとの関係が指摘されています。ただし、快感と受容の混同を避けるために、この記事では、ニュートラルになることとして分けて説明しています。 イエスマンとは?幸せになるとは、ポジティブな心とネガティブな心のバランスであり、それらを包括的に受け止めるニュートラルな心のあり方であると言えます。そして、幸せであるとは、幸せのゴールに着くことではなく、小さな幸せを感じる日々のスタートの積み重ねであり、ゴールに向かうプロセスそのものでしょう。カールは、最後に「義務じゃなくて、自然にイエスと言えるようになっている」と納得して、喜びます。私たち日本人が、もっとポジティブになり、再び幸福感を取り戻すためには、カールのように自然とイエスと言えるようになることであり、自分の人生にイエスと言って納得し受容することであるとも言えるでしょう。そうなれることこそが、イエスマンと言えるのではないでしょうか? ■関連記事2.Mother(後編)【家族機能】3.恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】4.「ZOOM」「RE-ZOOM」【どうキレキレに冴え渡る?(マインドフルネス)】1)実践 ポジティブ心理学:前野隆司、PHP新書、20172)ポジティブなこころの科学:堀毛一也、サイエンス社、20193)ポジティブ病の国、アメリカ:バーバラ・エーレンライク、河出書房新書、2010<< 前のページへ

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精神病性うつ病患者の再発に対するベンゾジアゼピンの影響

 ベンゾジアゼピンの長期投与は、依存、転倒、認知障害、死亡リスクを含む有害事象が懸念され、不安以外の症状に対する有効性のエビデンスが欠如していることから、うつ病治療には推奨されていない。しかし、多くのうつ病患者において、抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用が行われている。東京医科歯科大学の塩飽 裕紀氏らは、ベンゾジアゼピン使用がうつ病患者の再発または再燃リスクを低下させるか調査し、リスク低下の患者の特徴について検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2020年6月21日号の報告。 対象は、入院中に寛解を達成したうつ病患者108例。うつ病の再発および再燃を定量化するため、カプラン・マイヤー生存分析を用いた。主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、26例は重度の精神病性うつ病と診断されていた。・すべての患者をまとめて分析したところ、ベンゾジアゼピン使用患者と非使用患者の再発または再燃の割合に、有意な差は認められなかった。・精神病性うつ病患者の再発率は、ベンゾジアゼピン使用患者で21.2%、非使用患者で75.0%であった(log rank p=0.0040)。・カプラン・マイヤー生存分析では、効果は用量依存的であることが示唆された。 著者らは「ベンゾジアゼピンの補助療法は、重度の精神病性うつ病患者の再発または再燃の減少に有用である可能性がある」としている。

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日本人双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法~二重盲検プラセボ対照試験

 主に米国と欧州で実施されたこれまでの研究において、双極I型うつ病に対するルラシドン(20~120mg/日)の有効性および安全性が報告されている。理化学研究所 脳神経科学研究センターの加藤 忠史氏らは、日本人を含む多様な民族的背景を有する患者において、双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法の有効性および安全性を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年8月22日号の報告。 対象患者を、ルラシドン20~60mg/日群(182例)、同80~120mg/日群(169例)、プラセボ群(171例)にランダムに割り付け、6週間の二重盲検治療を実施した。主要評価項目は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから6週目までの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・ルラシドン20~60mg/日群で、プラセボと比較し、ベースラインから6週目までのMADRS合計スコアの有意な減少が認められた。しかし、ルラシドン80~120mg/日群では、有意な差は認められなかった。 ●ルラシドン20~60mg/日群:-13.6(調整後p=0.007、エフェクトサイズ:0.33) ●同80~120mg/日群:-12.6(調整後p=0.057、エフェクトサイズ:0.22) ●プラセボ群:-10.6・ルラシドン20~60mg/日群では、MADRS治療反応率、機能障害、不安症状の改善も認められた。・ルラシドン治療による体重増加、脂質、血糖コントロール値に対する影響は、最小限にとどめられた。 著者らは「ルラシドンは、高用量ではなく20~60mg/日の単剤での使用で、双極I型うつ病患者のうつ症状や機能を有意に改善した。この結果は、これまでの研究と全体的に一致しており、日本人を含む多様な民族において、ルラシドン20~60mg/日による治療は有効かつ安全であることを示唆している」としている。

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脳画像データの機械学習を用いた統合失調症と自閉スペクトラム症の鑑別

 神経精神疾患の診断は、問診による臨床症状に基づいて行われるため、難しい部分がある。ニューロイメージングなどの客観的なバイオマーカーが求められており、機械学習と組み合わせることで確定診断の助けとなり、その信頼性を高めることが可能である。東京大学のWalid Yassin氏らは、統合失調症患者、自閉スペクトラム症(ASD)患者、健常対照者から得た磁気共鳴画像(MRI)の脳構造データを用いて機械学習を行い、鑑別診断のための機械学習器の開発を試みた。Translational Psychiatry誌2020年8月17日号の報告。 統合失調症患者64例、ASD患者36例、健常対照者106例から得た脳構造データを、FreeSurferを用いて解析した。6つの機械学習器を用いて対象の分類を行った。また、精神疾患ハイリスク患者26例、初回エピソード精神疾患患者17例の脳構造データを、開発した機械学習器に当てはめた。最後に、各疾患群の臨床症状の重症度によって評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・6つの機械学習器のすべてが、比較的よく機能していた。・とくに、サポートベクターマシーン(SVM)とロジスティック回帰(LR)の2つの機械学習器が、鑑別診断により有効であることが示唆された。・皮質厚と皮質下体積は、判別に最も有効であった。・LRおよびSVMは、ASDの臨床指標と非常に一致していた。・精神疾患ハイリスク患者群、初回エピソード精神疾患患者群の脳構造データは、大部分が統合失調症と分類され、ASDとしては分類されなかった。 著者らは「今回開発した機械学習器は、統合失調症の異なる臨床病期の脳構造データを当てはめると、統合失調症または健常対照と分類され、ASDと分類されることはなかった。そのため、本研究による機械学習器は、臨床現場で必要とされる、鑑別診断や治療予測などのマーカーとしての応用が期待される」としている。

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第25回 脳の“女性”が雄の性欲の原動力~バイアグラ発売時の熱狂を雄弁に語る映画

男性ホルモン・テストステロンを女性ホルモン・エストロゲン(エストラジオール)に変える酵素・アロマターゼを発現している脳領域が雄マウスの性欲を支える原動力の一翼を担うと分かりました1,2)。脳に限ってアロマターゼを発現しない雄マウス(脳アロマターゼ欠損雄マウス)を調べたノースウエスタン大学の今回の成果はテストステロンが性欲を増進させる仕組みを初めて明らかにしました。雄マウスは雌マウスと一緒にいると正常であれば雌マウスを追いかけて交尾を試みます。しかし脳アロマターゼ欠損雄マウスは性活動に熱心ではなく、血中のテストステロン濃度が充分にもかかわらず正常マウスの半分しか性活動に取り組みませんでした。交尾の頻度は低下し、著者曰く性に“無関心”になっていました。脳アロマターゼ欠損雄マウスを去勢してテストステロンを投与しても性行動の完全な回復は認められませんでした。一方テストステロンとエストラジオールの両方を投与すると性活動が完全に回復し、脳のアロマターゼがテストステロンを発端とする雄の完全な性活動に必要なことが裏付けられました。今回の結果によると病的な性欲衝動を抑えるのに既存のアロマターゼ阻害剤が有効かもしれません。しかし骨粗鬆症などの副作用の心配があります。脳のアロマターゼ遺伝子プロモーター領域のみ抑制する薬が将来的に開発できれば既存のアロマターゼ阻害剤につきものの副作用を引き起こすことなく目当ての効果を引き出すことができそうです。また、逆にアロマターゼ活性を上げる治療は性欲減退に有効かもしれません。性欲減退はよくあることであり、うつ病を治療する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの広く使われている薬剤で生じることもあります。そのような性欲減退に対してアロマターゼ活性を底上げする性欲増進治療が可能かもしれないと今回の研究を率いたSerdar Bulun氏は言っています。男性の性機能改善薬の先駆けバイアグラ発売時の熱狂ぶりがわかる映画ところで男性の性活動を助ける薬といえばおよそ20年前の1998年に米国FDAに承認されたPfizer(ファイザー)のバイアグラ(Viagra)3)が先駆けです。実話に基づく2011年の映画「ラブ&ドラッグ」ではバイアグラの米国での発売時の熱狂ぶりを垣間見ることができます4)。物語はバイアグラのセールスマンと若くしてパーキンソン病を患う女性を中心に進み、アン・ハサウェイが演じる女性・マギーはパーキンソン病患者やその家族の困難や希望を映し出します。性的な描写があるR15+指定(15歳以上鑑賞可)の映画で一緒に見る相手を選びますし好みが分かれると思いますが、美男美女2人の恋愛成就までの道のりを通じてバイアグラ発売の頃のアメリカの医療の実際を伺い知ることができる作品となっています。参考1)Site of male sexual desire uncovered in brain / Eurekalert2)Brooks DC,et al. Endocrinology. 2020 Oct 01;161.3)VIAGRA PRESCRIBING INFORMATION4)「ラブ&ドラック」公式ホームページ

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初回SSRI治療に奏効しない場合の抗うつ薬切り替えへの期待~STAR*D研究

 初回のSSRI治療で奏効しない場合、その多くの臨床試験で抗うつ薬の切り替えが行われる。第2選択治療による治療反応や寛解が、いつ、どのような患者に、どれくらい発生するのか、またどれくらいの試験期間を要するかはよくわかっていない。この問題を解決するため、デューク・シンガポール国立大学のA John Rush氏らが検討を行った。多くの治療法が承認されていることから、エビデンスに基づく適切な治療の定義が求められていた。The Journal of Clinical Psychiatry誌2020年8月11日号の報告。 STAR*D研究(2001年7月~2006年9月実施)でのcitalopram治療後、16項目の簡易うつ症状自己評価尺度(QIDS-SR16)のスコアが11以上の患者を、徐放性bupropion、セルトラリン、徐放性ベンラファキシンによる治療のいずれかにランダムに割り付け、最大14週間治療を行った。治療反応、寛解、効果不十分の判定には、QIDS-SR16スコアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者438例のうち約80%が、切り替え後6週間以上の治療を完了した。・すべての治療で、同等のアウトカムが認められた。・寛解した患者の割合は21%(91例)、寛解はしなかったが治療反応が認められた患者の割合は9%(40例)、効果不十分であった患者の割合は58%(255例)であった。・治療反応が認められた患者の半数と寛解した患者の3分の2は、治療後6週間以降に効果が発現した。・治療反応が認められた患者の33%(43例)は、治療後9週間以降に効果が発現した。・治療反応または寛解の早さとベースライン時の評価との関連は認められなかった。・治療反応や寛解を早期に予測するトリアージポイントは明らかにならなかったが、第2週あたりのQIDS-SR16スコアがベースラインから20%以上減少した患者は、減少しなかった患者と比較し、治療反応率または寛解率が6倍高かった。 著者らは「初回SSRI治療に奏効しなかった患者に対する他のモノアミン作動性抗うつ薬への切り替えは、寛解率が約20%であり、半分以上の患者で効果不十分であった。第2選択治療による治療反応を評価するためには、試験期間が12週間は必要であると考えられる」としている。

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初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響

 初回エピソード統合失調症の初期段階における抗精神病薬の代謝への影響を明らかにするため、中国・四川大学華西病院のHailing Cao氏らが検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年8月10日号の報告。 薬物治療未実施の初回エピソード統合失調症入院患者を含む自然主義的な環境で、レトロスペクティブなリアルワールド研究を実施した。代謝プロファイルは、ベースライン時および抗精神病薬治療の2週間後と4週間後に測定した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療2週間後、トリグリセライド(TG)とHDLコレステロール(HDL-C)の比に基づくインスリン治療抵抗性は有意な増加が認められたが、空腹時血糖(FD)は有意な減少が認められた。・脂質代謝に関して、TG、コレステロール、LDLコレステロールは、抗精神病薬治療2週間後に有意な増加が認められたが、HDL-Cは、抗精神病薬治療4週間後に有意な減少が認められた。・いずれの代謝パラメータにおいても、抗精神病薬間の有意な差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬治療2週間後に、インスリン抵抗性および脂質代謝異常が発生することが明らかとなった。抗精神病薬治療の初期段階では、代謝プロファイルをモニタリングする必要性が示唆された。代謝パラメータに対する抗精神病薬の短期的な影響を明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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インターネット依存症の重症度とメンタルヘルスへの影響

 インターネット依存症は、メンタルヘルスに影響を及ぼす世界的な問題となっている。しかし、どの程度の影響が懸念されるかは、コンセンサスが得られていない。中国・四川大学華西病院のWanjun Guo氏らは、インターネット依存症の重症度がメンタルヘルスにどのような悪影響を及ぼすかについて、調査を行った。Journal of Medical Internet Research誌2020年8月11日号の報告。インターネット依存症とうつ病は最も強い関連が認められた 2015~18年の四川大学1年生を対象に調査を実施した。完全回答率は、85.13%(3万7,187人中3万1,659人)であった。インターネット依存症を評価するため、ヤングのインターネット依存度テスト20項目(IAT)、こころとからだの質問票(PHQ-15、PHQ-9)、症状チェックリスト-90(SCL-90)、Kessler Psychological Distress Scale(K6)、自殺行動アンケート改訂版を用いた。また、4つの精神病理学的症状(身体症状の重症度、臨床的なうつ病、精神疾患の傾向、パラノイア)、重度の精神疾患、生涯自殺念慮について評価した。 インターネット依存症の重症度がメンタルヘルスにどのような悪影響を及ぼすかについて調査した主な結果は以下のとおり。・インターネット依存症の重症度別の有病率は、以下のとおりであった。 ●軽度:37.93%(1万2,009人) ●中等度:6.33%(2,003人) ●重度:0.20%(63人)・各症状や自殺関連の有症率は、以下のとおりであった。 ●重度の身体症状:6.54%(2,072人) ●臨床的なうつ病:4.09%(1,294人) ●精神疾患の傾向:0.51%(160人) ●パラノイア:0.52%(165人) ●重度の精神疾患:1.88%(594人) ●生涯自殺念慮:36.31%(1万1,495人) ●自殺計画:5.13%(1,624人) ●自殺企図:1.00%(315人)・インターネット依存症でない学生における4つの精神病理学的症状、それらの合併、自殺に関する有症率やオッズ比(OR)は、調査対象者の平均レベルよりも非常に低かった。・軽度のインターネット依存症の学生における各症状や自殺関連の有症率は、調査対象者の平均レベルと同等もしくはわずかに高い程度であったが、インターネット依存症の重症度が増すにつれ、これらの割合の急激な増加が認められた。・人口統計学および精神病理学的な交絡因子で調整した後、4つの精神病理学的症状の中で臨床的なうつ病は、インターネット依存症と最も強い関連が認められた。インターネット依存症の重症度別のうつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●インターネット依存症なし:1.01%(1万7,584人中178人) ●軽度:4.85%(1万2,009人中582人) ●中等度:24.81%(2,003人中497人) ●重度:58.73%(63人中37人)・4つの精神病理学的症状のいずれかを有する学生および生涯自殺念慮、自殺計画、自殺企図の有症率は、インターネット依存症の重症度が増すにつれ、増加が認められた。【4つの精神病理学的症状のいずれかを有する学生の割合】 ●インターネット依存症なし:4.05%(713人) ●軽度:11.72%(1,408人) ●中等度:36.89%(739人) ●重症度:68.25%(43人)【生涯自殺念慮の有症率】 ●インターネット依存症なし:24.92%(4,382人) ●軽度:47.56%(5,711人) ●中等度:67.70%(1,356人) ●重症度:73.02%(46人)【自殺計画の有症率】 ●インターネット依存症なし:2.59%(456人) ●軽度:6.77%(813人) ●中等度:16.72%(335人) ●重症度:31.75%(20人)【自殺企図の有症率】 ●インターネット依存症なし:0.50%(88人) ●軽度:1.23%(148人) ●中等度:3.54%(71人) ●重症度:12.70%(8人) 著者らは「中等度から重度のインターネット依存症は、身体症状を含むメンタルヘルスへの悪影響と強く関連しており、うつ病との最も強い関連性が示唆された。このことから、中等度から重度のインターネット依存症に対するサポートは、妥当であると考えられる。インターネットプラスや人工知能の時代において、人間の健康問題を解決する観点から、健康政策担当者やサービスサプライヤーが、このことを理解することが重要である」としている。

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急性期統合失調症に対するルラシドンの有用性~国内第III相試験のネットワークメタ解析

 急性期統合失調症に対するルラシドンの国内第III相試験の結果では、その有効性に一貫性がないことから、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、これらの試験のシステマティックレビューおよびランダム効果モデルネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年8月7日号の報告。 日本での急性期統合失調症に対する二重盲検ランダム化試験を分析対象とした。有効性のアウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計、陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度の各スコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアの改善および治療反応率とした。中止率および有害事象の発生率も併せて評価した。 主な結果は以下のとおり。・4研究、1,608例が分析に含まれた。・プラセボと比較し、ルラシドン40mg/日(標準平均差:-0.298、95%確信区間[CrI]:-0.420~-0.176)および80mg/日(標準平均差:-0.170、95%CrI:-0.320~-0.019)は、PANSS合計スコアの有意な改善が認められた。・ルラシドン40mg/日および80mg/日は、プラセボと比較し、PANSS陽性尺度とCGI-Sスコアの有意な改善を示した。・ルラシドン80mg/日は、プラセボと比較し、PANSS陰性尺度、総合精神病理尺度のスコアと治療反応率の改善が認められたが、同40mg/日では認められなかった。・ルラシドン40mg/日は、同80mg/日よりもPANSS総合精神病理尺度スコアの改善が優れていた。・ルラシドン40mg/日および80mg/日は、プラセボと比較し、アカシジア、傾眠、体重増加の発生率が高かった。・プラセボと比較し、ルラシドン40mg/日は体重増加の発生率(7%以上)が高く、同80mg/日ではジストニアおよび体重減少の発生率(7%以上)の高さ、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)スコアの上昇が認められた。 著者らは「日本人の急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg/日および80mg/日での治療は、全体的な症状改善に寄与する。ただし、ルラシドン80mg/日では、錐体外路症状のリスクに注意が必要である」としている。

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慢性期統合失調症患者における喫煙と認知機能障害との関係

 これまでの研究において、統合失調症患者は喫煙率が高く、認知機能が低下していることが知られている。しかし、喫煙と認知機能障害との関係については、一貫した結論に至っていない。中国・中国科学院大学のShuochi Wei氏らは、中国人男性の統合失調症患者の認知機能に対する喫煙の影響を調査するため、MATRICS認知機能評価バッテリー(MCCB)を用いて検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2020年8月5日号の報告。 対象は、慢性期統合失調症患者164例、健康対照者82例。喫煙状況に関する面談を、すべての対象者に実施した。認知機能は、MCCBとストループテストにより評価した。患者の臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、対照群と比較し、全項目のMCCBスコアが低かった(すべてp<0.05)。・統合失調症患者において、喫煙患者は非喫煙患者と比較し、以下のスコアが低かった(すべてp<0.05、エフェクトサイズ:0.28~0.45)。 ●空間スパンテスト:42.3±11.6 ●デジタルシークエンステスト:42.9±10.6 ●ホプキンス言語学習テスト:42.2±10.1・ロジスティック回帰分析では、統合失調症患者の喫煙状況と、デジタルシークエンステストのスコアとの相関が示唆された(p<0.05、OR=1.072、95%CI:1.013~1.134)。・多変量回帰分析では、統合失調症患者の喫煙期間と、空間スパンテストの合計スコアとの関連が示唆された(β=-0.26、t=-2.74、p<0.001)。 著者らは「喫煙している慢性期統合失調症患者は、とくにワーキングメモリや実行機能などの認知機能に重大な問題を抱えていることが示唆された」としている。

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気分変調症とうつ病を合併した患者に対する治療~メタ解析

 うつ病と気分変調症を合併した二重うつ病(Double depression:DD)は、あまり知られておらず研究も少ないが、臨床においてうつ病患者の間に広がっている。そのため、DDに対する治療の有効性を把握することは重要である。米国・ノートルダム大学のDavid G. May氏らは、DDに対する治療の有効性を明らかにするため、メタ解析を実施した。Psychiatry Research誌オンライン版2020年7月8日号の報告。 抗うつ薬を使用したうつ病治療に関する研究のメタ解析を実施した。データベースをシステマティックに検索し、選択基準を満たす11研究、775例の患者を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・薬物療法前後での抑うつ症状の差を示す全体的なエフェクトサイズは1.81(95%CI:1.47~2.16)であり、治療後にうつ病患者の抑うつ症状は有意な軽減が認められた。・調整分析では、集団サンプル内のDDの割合が高いほど、エフェクトサイズは小さかった。・本結果に、出版バイアスの影響は認められなかった。・不均一性が高いため、エフェクトサイズの変動性が示唆された。・関連データの不足により、治療結果に対する潜在的なモデレーターは解明できなかった。 著者らは「DDの治療に薬物療法は有効であると考えられるが、うつ病または気分変調症単独の患者と比較し、治療が困難な場合がある。確実な結論を導き出すためには、DDの治療に焦点を当てた大規模なランダム化対照研究が必要とされる」としている。

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