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2061.

精神疾患ドライバー、疾患による特徴の違い

 米国・バージニア大学のPaula A. Aduen氏らは、注意欠如・多動症(ADHD)、うつ病を有するドライバーと、精神疾患のないドライバーを比較し、衝突事故等との関連を調べた。結果、ADHDドライバーとうつ病ドライバーでは交通違反や衝突事故リスクが異なり、ADHDは多様な衝突事故や違反、衝突関連の障害と特異的に関連している一方、うつ病は自己報告による衝突後の受傷と関連していると思われる所見が示されたという。Psychiatric Research誌2015年5月号の掲載報告。 臨床においてほとんど議論にならないが、自動車運転は、複雑で多岐にわたる動作努力を要し、瞬間的な不注意が壊滅的な結果を招く。先行研究において、ADHDのような罹病率の高い精神障害は、過度の衝突率に関連し、種々の有害な社会的、経済的、健康、死亡そして法的なアウトカムの前兆となることが示唆されていたが、自己バイアスや精神疾患の比較群の欠落により、所見は限定的なものにとどまっていた。 研究グループはそうした限界に焦点を当て、ADHD、うつ病と、有害運転アウトカム、自己バイアスのない選択、運転曝露および紹介バイアスとの特徴的な関連を調べるStrategic Highway Research Program(SHRP-2)Naturalistic Driving Studyを行った。試験には、確率抽出法に基づくサンプリングにより6地域から米国ドライバーが参加し、Barkley ADHD評価、精神科診断質問票によって、ADHD群(275例)、うつ病群(251例)、健康対照(1,828例)にグループ分けされた。主要アウトカムは、自己報告による衝突事故、走行中の交通違反、衝突に関連した受傷および障害(過去3年間における)が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・ADHDは、多様な違反(OR:2.3)や衝突(同:2.2)、また衝突関連の障害(同2.1)のリスク増大要因となることが、統計学的差をもって示された。うつ病についてはいずれも認められなかった。・一方、ADHDにはなくうつ病がリスク増大要因となることがみられたのは、自己報告による衝突後の受傷であった(OR:2.4)。 結果を踏まえ、著者らは「こうしたリスクの特異的な基礎メカニズムを明らかにすることが重要であり、高罹病率の精神障害を有するドライバーについて長期的な機能改善を図る効果的な研究を考案することが求められる」とまとめている。関連医療ニュース 認知症ドライバーの運転能力、どう判断すべきか 成人ADHDをどう見極める うつになったら、休むべきか働き続けるべきか  担当者へのご意見箱はこちら

2062.

非定型抗精神病薬は認知症に有効なのか

 認知症によくみられる神経精神症状の治療に、さまざまな非定型抗精神病薬が広く用いられているが、これらの薬剤の有効性と安全性に関する無作為化比較試験では矛盾する結果が示されている。中国海洋大学のリン・タン氏らは、この問題に取り組むためシステマティックレビューを行った。結果、アリピプラゾールとリスペリドンは、平均12週で認知症の神経精神症状を改善し認知機能の低下を遅らせると結論付けた。ただし、著者は「認知症患者においては、重度の有害事象が非定型抗精神病薬の有効性を相殺する可能性がある」と指摘している。Alzheimer’s Research &Therapy誌オンライン版2015年4月20日号の掲載報告。 研究グループは、認知症患者の神経精神症状に対する非定型抗精神病薬の有効性と安全性を評価する目的で、PubMed、EMBASE、Cochrane Controlled Trials RegisterおよびCochrane Database of Systematic Reviewsを用い、2014年8月までに発表された論文で精神症状を有する認知症患者を対象とした非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、ジプラシドン、クロザピン)療法の無作為化比較試験を検索した。2人の研究者が独立して試験の質を評価し、情報を得た。 結果は以下のとおり。・検索により、23件の無作為化比較試験(合計5,819例)が確認された。・メタ解析において、非定型抗精神病薬はプラセボと比較して精神症状および認知機能に対する効果が有意に優れることが示された。・精神症状に関するスコアの変化量の加重平均差(WMD、対プラセボ)は、アリピプラゾールが-4.4(95%信頼区間[Cl]:-7.04~-1.77)、リスペリドンが-1.48(同:-2.35~-0.61)であった。・認知機能に関するスコア(Clinical Global Impression-Change:CGI-C)の変化は、アリピプラゾール、リスペリドン、オランザピン、クエチアピンにおいて有意な改善が認められ、変化量のWMDは、アリピプラゾールの-0.30(95%Cl:-0.59~-0.01)からリスペリドンの-0.43(95%Cl:-0.62~-0.25)にわたった。・非定型抗精神病薬治療群では、外傷または転倒のリスクに差はなかったが(p>0.05)、傾眠、尿路感染症、浮腫および歩行異常のリスクは有意に高かった(p<0.05)。・死亡に関して重要な所見は報告されなかった。関連医療ニュース 認知症への抗精神病薬、用量依存的に死亡リスクが増加 抗精神病薬は統合失調症患者の死亡率を上げているのか 脳血管性認知症患者に非定型抗精神病薬を使用すべきか  担当者へのご意見箱はこちら

2063.

妊娠中の抗精神病薬、母親や胎児への影響は?/BMJ

 妊娠中の抗精神病薬の使用が、妊婦や胎児の転帰に及ぼす影響は小さいことが、カナダ・トロント大学のSimone N Vigod氏らによる調査で明らかとなった。その一方で、一般人口に比べると妊娠高血圧や早産などの頻度が高いことから、妊娠中や周産期には注意深い健康評価を要することも示された。抗精神病薬は、妊婦の代謝性合併症(妊娠糖尿病など)や、その結果としての胎児の発育異常などの原因となる可能性が示唆されている。近年、妊婦の抗精神病薬の使用が増加しているが、評価が行われているのは、現在ではあまり使用されていない古い定型抗精神病薬がほとんどだという。BMJ誌オンライン版2015年5月13日掲載の報告より。曝露群と非曝露群を高次元傾向スコアマッチング法で比較 研究グループは、妊娠中の抗精神病薬の使用が妊婦および胎児に及ぼす影響を評価するコホート試験を行った。対象は、2003~2012年にオンタリオ州で単胎児(生児、死産児)を出産し、受胎から分娩までの間に抗精神病薬を2回以上処方され、そのうち少なくとも1回は妊娠27週以前の女性であった。 データの収集には、トロント市のInstitute for Clinical Evaluative Sciences(ICES)に集約された公衆衛生管理関連の複数のデータベースが用いられた。高次元傾向スコア(HDPS)によるマッチング法を用いて、妊娠中に抗精神病薬に曝露した妊婦と非曝露妊婦のベースラインの背景因子をマッチさせ、転帰の比較を行った。  母親の主な医学的転帰は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、静脈血栓塞栓症、主な周産期転帰は早産(<妊娠37週)および不良な出生児体重とし、性別・妊娠期間別の出生時体重が<3パーセンタイルに相当する場合に不当軽量体重(small for gestational age)、>97パーセンタイルの場合に不当重量体重(large for gestational age)と定義した。非定型抗精神病薬に限定しても差はない 背景因子をマッチさせたコホートとして、両群に1,021例ずつが登録された。両群とも、平均年齢は28.8歳、経産回数中央値は1回であった。妊娠前の精神医学的診断名は、精神病性障害が曝露群31.2%、非曝露群15.7%、双極性障害/大うつ病がそれぞれ74.2%、65.9%、アルコール/薬物性障害(喫煙を含む)が44.9%、40.7%、パーソナリティ障害が28.9%、22.6%であった。 妊娠糖尿病の発生率は、曝露群が7.0%、非曝露群は6.1%であった。未補正の相対リスク(RR)は1.15(95%信頼区間[CI]:0.82~1.61)、妊娠中の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、非SSRI、気分安定薬、ベンゾジアゼピンの処方で補正後のRRは1.10(95%CI:0.77~1.57)であり、いずれも有意な差を認めなかった。また、非定型抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン)に限定した解析でも、結果は変わらなかった。 妊娠高血圧(4.7 vs. 4.1%、未補正RR:1.14、95%CI:0.76~1.73、補正RR:1.12、95%CI:0.70~1.78)および静脈血栓塞栓症(1.2 vs. 1.3%、0.92、0.42~2.02、0.95、0.40~2.27)の発生率も同様の結果であり、非定型抗精神病薬のみの結果にも変化はなかった。また、これらの疾患はいずれも一般人口に比べると頻度が高い傾向がみられた。 早産(14.5 vs. 14.3%、未補正RR:1.01、95%CI:0.81~1.27、補正RR:0.99、95%CI:0.78~1.26)の発生率は両群とも一般人口の約2倍に達したが、群間にリスクの差はみられなかった。不当軽量体重(6.1 vs. 5.1%、1.22、0.84~1.77、1.21、0.81~1.82)および不当重量体重(3.6 vs. 2.3%、1.64、0.96~2.78、1.26、0.69~2.29)についても、両群間にリスクの差はなかった。さらに、非定型抗精神病薬のみの解析でも同様の結果であった。

2064.

呼称変更から12年、統合失調症への偏見は軽減されたのか:東京大学

 わが国では2002年、統合失調症に対するスティグマを軽減するため、精神分裂病から統合失調症へと呼称変更が行われた。しかし、その長期的な影響はあまり知られていない。東京大学の小池 進介氏らは、呼称変更から12年でどのような影響があったかを調査した。Social psychiatry and psychiatric epidemiology誌オンライン版2015年5月7日号の報告。 20大学、計259人の学生に匿名の自己記入式アンケートを実施した。調査項目は、自身のメンタルヘルス関連の経験、統合失調症、精神分裂病、うつ病、糖尿病の4疾患に対する認識(feasible knowledge)を含むスティグマスケールとネガティブな固定概念であった。また、統合失調症、認知症、10種類の精神または身体的な疾患および状態の新旧名称を選択させた。 主な結果は以下のとおり。・参加者は、精神分裂病よりも統合失調症に対してのほうが、認識がより高くネガティブな固定概念がより少なかった。しかし、これらはうつ病や糖尿病と比較すると有意に悪いものであった(p<0.01)。・精神衛生上の問題を抱えている人と直接関わった経験を持つ人では、ネガティブな固定概念ではなく、統合失調症の認識との関連が認められた(β=0.13、p=0.020)。・統合失調症の新旧名称の正解率は、認知症よりも有意に低かった(41 vs. 87%、p<0.001)。・メディアによるメンタルヘルス関連の経験が、呼称変更の認識と関連していたが(p=0.008)、このことは新名称である統合失調症のより低い認識と関連していた。 結果を踏まえ、著者らは「呼称変更から12年経過し、統合失調症に対するスティグマは軽減された。より効果的なキャンペーンや教育カリキュラム、政策決定が統合失調症へのスティグマを軽減させるために必要とされている」とまとめている。関連医療ニュース 呼称変更から10年、統合失調症患者へのスティグマを減らすためには:日本医科大学 統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学 画像診断から統合失調症の理解を深める:高知大  担当者へのご意見箱はこちら

2066.

学歴とうつ病の関連は、遺伝か、環境か

  うつ病と低学歴の関連には、遺伝的多面発現効果(pleiotropy)の影響は認められないが、社会経済的状況などの環境因子が関わっている可能性が示唆された。Major Depressive Disorder Working Group of the Psychiatric GWAS ConsortiumのW J Peyrot氏らがドイツ人、エストニア人のうつ病患者のデータを解析し報告した。Molecular Psychiatry誌2015年6月号の掲載報告。 低学歴とうつ病リスク増加との関連は、西欧諸国において確認されている。研究グループは、この関連に遺伝的pleiotropyが寄与しているか否かを検討した。ドイツ人およびエストニア人のデータを加えたPsychiatric Genomics Consortiumから、うつ病9,662例と対照1万4,949例(生涯にわたりうつ病の診断歴なし)のデータを解析した。 主な結果は以下のとおり。・1万5,138例において、低学歴とうつ病の関連をロジスティック回帰により評価したところ、有意な負の関連が示された。・低学歴のうつ病に対する標準偏差(SD)増加当たりのオッズ比は、0.78(0.75~0.82)であった。・常染色体性の主な一塩基多型(SNP)88万4,105件のデータを用いて、うつ病と低学歴のpleiotropyを、次の3つの方法で検証した。(1)低学歴(メタ解析とは独立した被験者12万例)とうつ病(現在のサンプルについて10分割交差確認法としてleave-one-out法を使用)の集合データに基づく遺伝子プロファイルリスクスコア(GPRS)で検証。→低学歴のGPRSはうつ病の状況を予測せず、またうつ病のGPRSは低学歴を予測しなかった。(2)二変量genomic-relationship-matrix restricted maximum likelihood(GREML)法で検証。→弱い負の遺伝学的関連が認められたが、この関連は一貫して有意ではなかった。(3)SNP effect concordance analysis(SECA)法で検証。→うつ病と低学歴のSNPの影響が一致するというエビデンスは確認されなかった。・以上より、低学歴とうつ病リスクとの関連は認められたものの、これは測定可能な遺伝的多面発現効果によるものではなく、たとえば社会経済的状況といった環境因子が関与している可能性が示唆された。関連医療ニュース うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大 うつ病患者の自殺企図、遺伝的な関連性は アルツハイマー病治療、学歴により疾患への対処に違いあり

2067.

統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学

 未治療の統合失調症では多くの場合、周囲の人たちは、患者の精神症状や自殺企図の可能性を認識できていない。東邦大学の山口 大樹氏らは、致死的な自殺企図を経験した未治療の統合失調症患者において、主観的な経験と観察された行動との間に矛盾があるかを質的パイロット研究により調査した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年4月15日号の報告。 自殺企図時の主観的経験を検討するために、直近に致死的な自殺企図を経験した未治療の統合失調症患者7例を対象に半構造化インタビューを行った。また、患者家族に対して、患者の精神症状や自殺念慮を認識していたかを評価するため、インタビューを実施した。インタビューデータは質的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・6例の被験者は、自殺関連の念慮を示す際、精神症状の悪化を経験した。・1例は、自殺を試みる前に、長期の抑うつ状態になっていた。・すべての患者が、精神症状や抑うつ気分による重度な苦痛を経験していたが、助けを求める行動は、低レベルまたはまったくない状況であった。・7家族中6家族は、患者の精神状態の変化を認識していなかった。 結果を踏まえ、著者らは「統合失調症患者の助けを求める行動が見過ごされないように、疾患に関する適切な情報が一般に提供されるべきであり、精神疾患のための利用しやすい早期介入サービスの確立が求められる」とまとめている。関連医療ニュース 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大 日本人統合失調症患者における自殺企図の特徴は?:岩手医科大学 統合失調症の自殺にプロラクチンは関連するのか  担当者へのご意見箱はこちら

2068.

SSRI抵抗性、脳内ヒスタミンが関与か

 治療抵抗性うつ病の背景に存在する神経生物学的変化については、不明な部分が多い。一方で選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)不応については、ヒスタミンなどのセロトニン作動性神経を活性化する神経伝達物質システムの異常に起因している可能性がある。イタリア・フィレンツェ大学のLeonardo Munari氏らは、ヒスタミン合成不能マウスモデルを用いて、抗うつ薬抵抗性のメカニズムについて検討を行った。その結果、ヒスタミン合成不能マウスにおいて、レボキセチンやイミプラミンは抗うつ効果を発揮することが示唆された一方、SSRIはセロトニン作動性神経系が機能している場合でも効果が認められなかった。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年4月21日号の掲載報告。  研究グループは、ヒスタミン合成不能マウスを用い、行動的(尾懸垂試験)および神経化学的(in-vivoマイクロダイアリシス法、ウエスタンブロット解析)アプローチによる検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・検討により、SSRI(シタロプラムまたはパロキセチン)の抗うつ効果は、ヒスチジン脱炭素酵素遺伝子(HDC, -/-)の標的破壊、あるいはこの酵素の自殺阻害剤であるα-フルオロメチルヒスチジン(α-FMHis)の注入により阻害されることが確認された。・尾懸垂試験では、検討したすべての種類の抗うつ薬において、対照群と比べ無動時間の短縮が認められた。・ヒスタミン合成不能マウスにおいて、レボキセチンまたはイミプラミンの全身投与は無動時間を短縮させたが、SSRIsはセロトニン作動性神経系が機能している場合でも効果が認められなかった。・in-vivo マイクロダイアリシスの実験において、シタロプラムは、自由行動下マウスの大脳皮質における神経外ヒスタミン濃度を有意に増加させ、メチセルジド、5-HT1/5-HT2受容体アンタゴニストはこの効果を阻害した。これは、内因性セロトニンの関与を示唆するものであった。・ヒスタミン欠損マウスにシタロプラムを投与したところ、抗うつ薬の分子レベルでのメカニズムに関連するCREBのリン酸化が阻害された。 ・8-Br-cAMPの投与によりCREB経路のリン酸化が亢進したため、HDC-/-マウスではCREB経路に障害はなかった。・また、尾懸垂試験では、いずれの遺伝子タイプのマウスにおいても、無動時間が有意に減少した。・以上の結果から、SSRIsがその前臨床反応を引き出すためには、脳内ヒスタミン系が完全に機能していることの必要性が示唆された。 結果を踏まえて、著者らは「とくにSSRIでは、脳内ヒスタミンによる神経伝達物質経路の異常が治療抵抗性の一因となっている可能性が示唆された」と報告している。関連医療ニュース 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か 治療抵抗性うつ病に対し抗精神病薬をどう使う 難治性うつ病発症に肥満が関連か  担当者へのご意見箱はこちら

2069.

慢性心不全に適度なワイン

 日常的に適度なワインを飲むことは、心血管イベントリスクの低下と関連するが、慢性心不全患者におけるデータは不足している。GISSI-HF試験の研究グループは、イタリア人慢性心不全患者の大規模コホートを対象とした多施設臨床研究により、ワイン摂取と健康状態、バイオマーカー、臨床アウトカムとの関連性を評価した。著者らは「本研究は、慢性心不全患者の大規模コホートにおいて、適度なワインがより良い主観的/客観的健康状態、低い抑うつ傾向、血管炎症の少なさと関連することを示した、初の研究である。ただし、より良好な4年後臨床アウトカムとの関連性は認められなかった」とした。Circulation: Heart failure誌オンライン版2015年4月29日号の掲載報告。 GISSI(Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Insufficienza cardiaca)-HF試験に参加した6,973例を対象に、ベースライン時に生活習慣に関する簡易アンケートを行った。ワイン摂取と致死的/非致死的臨床イベント、QOL、うつ症状、心機能・炎症性バイオマーカー(一部の患者において検査)との関連について、単変量解析および多変量解析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者の約56%が「1日1杯以上ワインを飲む」と報告していた。・調整後、臨床アウトカムはワインの摂取量で分けた患者4グループにおいて、有意な違いは認められなかった。・しかし、潜在的交絡因子の調整後、ワインの摂取量が多い患者ほど、より良い健康状態を認識しており(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire [KCCQ]スコアによる自己評価、p<0.0001)、抑うつ症状が少なく(The Geriatric Depression Scale [GDS]:高齢者うつ病評価尺度)、血管炎症性バイオマーカー値が低い(osteoprotegerin、C-terminal pro-endothelin-1;共に調整後p<0.0001、pentraxin-3;p=0.01)ことが示された。

2070.

うつ病 症状の有無のみの治療評価は危険

 2015年5月8日、都内にて「うつ病における社会機能回復の重要性」をテーマにプレスセミナー(主催:ファイザー株式会社)が開催された。本セミナーにおいて、日米間で異なるうつの治療環境や、うつ病の再発を防ぐための考え方が紹介された。今回は、デイビッド・シーハン氏(米国・南フロリダ大学 精神医学行動医学センター 教授)の講義に注目し、概要を紹介する。日米間で異なるうつの治療環境 うつ病を患う労働者は、日米において異なる治療環境にあるという。日本ではうつと診断されると医師より休職を勧められるのに対して、米国では労働を休むことなく外来にて治療していくケースが大多数を占める。これには、米国が厳しい競争主義の状況下にあり、十分に働けない者は自分の地位を失うという厳しい現状が背景にあるようだ。しかし、うつ病に苦しむ患者への社会的な支援があまり大きくない点は日米間で共通しており、それぞれの国においてうつ病の発症・再発予防の必要性が再認識されつつある。うつ病を評価するための指標 うつ病は症状の有無だけでなく、社会機能障害も含めたリスク管理を行う必要がある。うつ病を評価するための指標として、シーハン氏は自身が考案したシーハン障害尺度(Sheehan Disability Scale:SDS)を紹介した1)。この指標は疼痛評価における視覚的評価スケール(Visual Analog Scale:VAS)と同様に社会機能障害を数字で評価することができる。その簡便さと治療効果に対する正確性ゆえに、現在米国においてこの指標が広まりつつあるという。うつ病を再発させないために シーハン氏によると、患者個人で苦しむのではなく、まずは医師に相談すること、医師と共に問題解決を行っていくことが大切だという。また、抗うつ薬治療の安易な中断は再発のリスクを高める。身体症状や精神症状が軽減されてもSDSなど各種尺度を用いた社会機能障害を含めたうつの評価と、十分な期間の薬物治療の継続が必要となる。また、日本では、平成27年12月1日より労働者50人以上の企業に対して企業ストレスチェックが義務化されるため2)、この制度を活用してうつ病を1次予防していくこともポイントとなってくる。 シーハン氏は、「一般に抗うつ薬は効果を発揮するのに4~6週間かかる傾向にあるが、それまでに治療を中断されることもある。きちんとした治療を続ければ続けるほどうつ病の再発を抑えることができる。患者が医療従事者と協力し、治療を継続できるような支援体制を整え、患者1人で頑張らせる治療からシフトしていくべきだ」とメッセージを送り、講演を締めくくった。

2071.

パートナーがうつ病だと伝染するのか

 カップル間において、一方のうつ病はもう一方の適応障害のリスク因子となることを、スイス・チューリッヒ大学のAndrea B. Horn氏らが報告した。研究グループの検討では、このことはとくに男性に当てはまったという。適応障害は、ストレスフルなことに適切に対処できないことが診断理由である傾向が高い。一方で、臨床的に問題となる不適応を招く社会的リスクについては、ほとんどわかっていないが、文献的考察で、カップル間のコミュニケーションにおけるうつ病の影響やサポート状況の変化が示唆されていた。Psychother Psychosomatik Medizinische Psychologic誌オンライン版2015年3月30日号の掲載報告。 研究グループは、カップルにおいて臨床的に問題となるうつ病は、適応障害のリスク因子であり、ストレス反応障害をもたらすかどうかについて検討した。さらに、パートナーのうつ症状と自身の適応障害との関連の大きさについても検討した。それに関連して、単なるうつ感染を除外し、ストレス反応を切り離すため、自身のうつ症状について調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・オンラインカップル研究法にて検討した。294例(147組)が参加した。・152例が、今なお悩まされているストレスフルな出来事の経験があると報告した。・そのうち28例が、スクリーニング質問票のAdjustment disorder New Moduleで診断できうる閾値に達していた。・また、14例のパートナーが、CES-Dのカットオフ値を上回るうつ症状を報告した。・適応障害のリスクは、パートナーが女性であり、臨床的に問題となるうつ症状レベルを報告した場合に有意に上昇した(OR:7.13)。この関連は、女性パートナーがうつであった場合に限られ、男性パートナーがうつの場合は、いずれの有意な関連もみられなかった。・以上より、女性パートナーのうつ症状と、関心事(ストレス要因となる反復的でネガティブな考え方)への適応症状との間に、正の関連があることが示された。・パートナーのうつ病は、ストレスフルな出来事に対する不適応反応の有意なリスク因子になると思われた。・本検討により、研究や臨床的介入において対人関係を見据えることが重要であることが示唆された。関連医療ニュース 仕事と家庭の両立への悩み、女性ではうつ病リスク ロマンチックな恋愛は幸せか スタイルを気にしすぎる女性はうつに注意を  担当者へのご意見箱はこちら

2072.

統合失調症の社会参加に影響する症状は何か

 認知機能、陰性症状、抑うつは統合失調症における障害の潜在的な予測因子である。米国・マイアミ大学のMartin T. Strassnig氏らは、さまざまな障害とそれを決定付ける潜在的な要因を評価した4件の研究の統合解析から、認知機能に関する治療は社会的機能にあまり影響しないことを示した。このことは、統合失調症における認知障害の治療に関する先行研究と一致するもので、著者は、「統合失調症の特徴は認知障害ではなく、陰性症状が社会的予後と関連していることであり、この特徴に応じて治療に取り組まなくてはならない」との見解を示した。Schizophrenia Research誌オンライン版2015年4月10日号の掲載報告。 研究グループは、陰性症状が社会的予後を、認知機能と身体機能が職業的機能と日常生活を予測するという仮説を立て、4件の別個の研究データ(すべて170例以上、合計821例)の統合解析を行った。社会的および職業的予後に関する日常機能は、臨床医が情報提供者への聞き取りによって評価したものであり、日常生活は、認知機能および身体機能の検査で観察し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および自己申告による抑うつ症状の有無で臨床的に評価した。そのうえで、前述の仮説を検証する特異的モデルを算出し、陰性症状・抑うつ・認知機能・身体機能が、日常機能のあらゆる側面に同等に影響するという一般的な予測モデルと比較した。 主な結果は以下のとおり。・特異的モデルはデータと適合しており、4件すべての標本において同様に適合することが確認された。・相対適合度を分析したところ、特異的モデルは一般的な予測モデルよりデータと良く適合することが示唆された。・陰性症状は社会的機能を予測するが、認知機能障害に対する治療は他の障害ほどは社会的機能に影響しない可能性が示唆された。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状に対し、抗うつ薬の有用性は示されるのか 統合失調症の陰性症状改善は何と相関するか 厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ  担当者へのご意見箱はこちら

2073.

反復性うつ病の再発予防にマインドフルネス?(解説:岡村 毅 氏)-357

 近年、精神科にとどまらず、社会的に大きく注目されているマインドフルネスが、3回以上の重症うつ病エピソードを持つ反復性うつ病性障害(現在は完全寛解あるいは部分寛解)の再発予防において、抗うつ薬による維持療法と同等の効果を持つことを報告する論文である。 ところで、私は仏教の社会的貢献活動をなさっている僧侶の方々と親しくしているが、先日会った際にちょうどマインドフルネスが話題になった。彼らによれば、マインドフルネスとは禅そのものであるとのことだ。  私は認知症や公衆衛生を専門としており、マインドフルネスには明るくないことを最初に開示しておく。認知症領域ではreligiosity/spiritualityが、(1)認知症の予防効果がある、(2)認知症ケアラーのストレス緩衝作用がある、ということからいくらか注目されている。(2)はソーシャルサポートなどを考えれば容易に納得ができようが、(1)に関しては、たとえば「倫理的なことなどの抽象的なことを考えると良い知的刺激になる」、「良い感情を持つことがストレスホルモンとの関連から脳保護的」などの知見があるらしい。門外漢が勝手なことをいわせてもらえるならば、いま、ここ、に集中するマインドフルネスが、心の平安に有効であるのは、自明であるように個人的には思う。  さて、本論文では、マインドフルネスと抗うつ薬維持療法の同等の効果が報告されている。寛解が続く場合は、英国NICEガイドラインではおよそ2年維持療法をしてから治療の終了を検討するとなっているが、英国でも実際は自己判断でやめてしまう患者さんが多いとのことである。したがって、効果が長く期待できる心理的介入が求められているというのがこの研究の動機である。 再発を繰り返す反復性うつ病性障害は難治性であるのだから、つまり、適切な薬物治療をしているにもかかわらず再発を繰り返して苦しんでおられる方がいるのであるから、薬物治療以外の選択肢が有効であることが示されたのは喜ばしい。患者さんにとっても、また医師にとっても朗報と思う。 一方で、本研究でも再発率は44%あるいは47%といずれの群でも高く、本論文を読んで「やはりマインドフルネスが最高だ」という早とちりをしないことが重要である。あくまで同等(どちらも半分程度の方には効果がある)といっているに過ぎない。 個人的には以下のように考えている;正統派の臨床精神科医は2つの認知の歪みと戦わなければならない。すなわち、薬物治療が悩みをすべて解決してくれるはずという考え方と、薬物治療は無益であり一切不要だという考え方である。初回のうつ病エピソードなら薬物療法だけで良くなる可能性は高いので、きちんと普通に治療したほうがよい。しかし、再発を繰り返す場合は残念ながら今後も繰り返す可能性はあるので、非薬物的介入や、生活を変えること、価値観を変えることも時には必要かもしれない。今回のエビデンスは後者の枠組みでのお話である。 ただし、わが国において一定の質を担保したうえでの保険診療の枠内あるいは周辺でのマインドフルネスの提供体制の構築となると、これは私には何も書くことができない問題だ。

2074.

若者の新型うつ病へのアプローチとなりうるか

 日本では、とくに若者の間で「新型うつ病」や「ひきこもり(6ヵ月以上持続している重度の社会的なひきこもり)」と表現される新たな精神医学的事象が報告されてきている。信頼ゲームと呼ばれる経済ゲームが現実社会における対人関係の評価に利用できることから、早稲田大学高等研究所の渡部 幹氏らは、大学生を対象に予備的研究を行った。その結果、信頼行動が精神医学的評価スケールと関連していることを報告した。著者は、「新型うつ病やひきこもり等の人々における経済ゲームの妥当性が研究されるべきである」とまとめている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。 研究には、日本人大学生81人が参加した。ゲームの相手40人の写真を提示した後に、その写真を参考にお金をいくら提供するかを決定してもらい、Lubben Social Network Scale(LSNS)-6およびPatient Health Questionnaire(PHQ)-9を含む7つの評価スケールに回答してもらった。 結果は以下のとおり。・先行研究と同様に、男子学生のほうが女子学生よりも相手を信頼した。・回帰分析の結果、男子学生ではLSNS-6の「家族」(家族からのサポートの認知)が、女子学生ではPHQ-9の項目8(主観的な焦燥性興奮や遅延)が、それぞれの信頼行動と関連していた。・男子学生において、家族からのサポートは家族以外の人への協力行動と、負の相関を示した。これは社会科学者の主張と一致した。・主観的な焦燥性興奮(および/または遅延)がより強い女子学生は、対人関係において魅力が少ない女性に対してよりも、男性およびより魅力的な女性に対してお金をあまり提供しなかった。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬使用、93%は適応外処方 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか? 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症への支持療法と標準的ケア、その差は

 英国・チェリイ・ノウル病院のLucy A Buckley氏らは、統合失調症に対する支持療法の有効性を、その他の治療法と比較するレビューのアップデートを行った。24件の無作為化試験(RCT)を組み込み評価した結果、標準的ケアとの比較では再発、入院、全般的機能に有意差は認められず、また心理的あるいは心理社会的療法のほうが入院、精神状態の改善、患者の治療満足度において有意に良好であったという。ただし、いずれの試験もエビデンスの質がきわめて低いものであったため、支持療法とその他の治療法との差異を明確化するには至らなかったと述べている。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年4月14日号の掲載報告。 レビューは、Cochrane Schizophrenia Group's register of trials(2012年11月)のデータを検索して行った。統合失調症患者を対象とし、支持療法とその他の治療あるいは標準的ケアを比較検討したすべてのRCTを検索対象とした。信頼性の高いソースから試験を選択し、質の評価ならびにデータを抽出。固定効果モデルを用いてリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を推算した。可能な限りintention-to-treat解析を実施した。連続データについては主に固定効果の平均差(MD)をCIと共に算出した。不均質性、公表バイアスも算出し、GRADEを用いてエビデンスの質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・2012年以降に4件の新規試験が追加され、本レビューでは妥当な研究24件(2,126例)を対象とした。全体的に、エビデンスの質はきわめて低かった。・主要アウトカムである再発、入院、全般的機能において、支持療法と標準的ケアの間に有意差は認められなかった。・一方、心理的あるいは心理社会的療法は、支持療法と比べて有意に良好な成績であることが示された。すなわち、入院率(4件、306例、RR:1.82、95%CI:1.11~2.99、エビデンスの質は非常に低い)、精神状態の臨床的改善(3件、194例、RR:1.27、95%CI:1.04~1.54、エビデンスの質は非常に低い)、患者の治療満足度(1件、45例、RR:3.19、95%CI:1.01~10.7、エビデンスの質は非常に低い)において有意差が認められた。・再発率、試験からの早期脱落、QOLに関して有意差は認められなかった。・支持療法を認知行動療法(CBT)と比較した場合も、主要アウトカムに有意差は認められなかった。・支持療法を家族療法および心理教育療法と比較したデータはきわめて限定的であり、関心の高い主要アウトカムの1つである全般的機能に関しては、いずれの研究においても臨床的に重要な変化を示すデータはなかった。・支持療法と標準的ケアのアウトカムにおける差異を明確にするにはデータが不十分であった。・入院、全般的な精神状態など、支持療法に比べ、その他の心理療法のほうが優位であることを示すアウトカムが複数認められた。しかしこれらの結果は、エビデンスの質が非常に低いと評価された数少ない小規模試験に基づいたものであった。支持療法を比較対照群とせず、主要な治療群に設定した大規模試験により研究を進めることで、成果が期待できるであろう。関連医療ニュース 統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法 統合失調症治療、家族への介入に効果はあるか 重度アルツハイマー病に心理社会的介入は有効か:東北大  担当者へのご意見箱はこちら

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アリピプラゾール、脳卒中後の抑うつに対するメカニズム

 虚血性脳卒中後、うつ病を発症することは少なくない。虚血性脳卒中の発作後、慢性弱ストレス(chronic mild stress:CMS)が加わることにより抑うつに進展するか否かに関し、韓国・釜山大学校のYu Ri Kim氏らは、マウスを用いて検討を行った。その結果、発作後のCMSにより生じるドパミン作動性ニューロン損傷や海馬におけるニューロン新生低下をアリピプラゾールが回復させ、抗うつ作用を発揮する可能性を示唆した。Behavioural Brain Research誌2015年7月号の掲載報告。 マウスを用い、CMS、左中大脳動脈閉塞(MCAO)、MCAO後のCMS(MCAO+CMS)の各種条件下におけるうつ障害を、行動学的および病理組織学的分析により評価した。抑うつスクリーニングテストとしてオープンフィールドテスト、スクロース嗜好性試験、強制水泳試験、モリス水迷路試験を実施した。 主な結果は以下のとおり。・MCAO+CMSマウスはMCAOマウスに比べ、有意な抑うつ行動を示した。・MCAO+CMSマウスはCMSマウスに比べ、強制水泳試験およびモリス水迷路試験において明らかな障害を示した。・病理組織学的分析において、MCAO治療マウスはCMSマウスに比べ、線条体と中脳に顕著な萎縮性変化が認められた。・MCAO+CMSマウスはCMSあるいはMCAO単独治療マウスに比べ、中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷と線条体および海馬における神経細胞の増殖および分化の減少が顕著に認められた。・MCAO+CMSマウスをアリピプラゾールで治療したところ、評価したすべての抑うつ行動が減少し、とくにモリス水迷路テストにおいてその効果がみられた。・中脳におけるドパミン作動性ニューロンの損傷回復および海馬におけるニューロン新生の増強も示された。関連医療ニュース 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か 抗精神病薬間で虚血性脳卒中リスクに違いはあるか

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難治性うつ病発症に肥満が関連か

 肥満と大うつ病性障害(MDD)は公衆衛生上の大きな問題である。MDDは不均一な疾患であり、反復性MDD(MDD-R)と単一エピソードのMDD(MDD-S)とでは病因や予後が異なることが知られているが、肥満との関連性についてのエビデンスは不十分である。オランダ・フローニンゲン大学のYeshambel T Nigatu氏らは、一般住民を対象とした大規模観察研究において、肥満がとくにMDD-Rの発症と関連している可能性があることを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「この問題を十分に評価するためにはさらなる大規模研究が必要であり、MDDに対する肥満の影響を調べる場合はMDDの不均一性を考慮すべきである」とまとめた。BMC Public Health誌オンライン版2015年4月10日号の掲載報告。 研究グループは、PREVEND研究に参加した1,094例を対象とし、ベースラインおよび平均2年の追跡期間後のデータを分析した。MDD-SとMDD-Rの評価にはComposite International Diagnostic Interview(CIDI 2.1)を使用した。肥満はBMI 30以上と定義した。肥満がMDD-S/MDD-Rを予測するか、またはその逆の予測がなされるかどうかについて、潜在的交絡因子補正後、バイナリロジスティック回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・予測分析において、ベースラインのBMIと追跡期間中のMDD-R発症の関連が示された(OR 1.32、95%信頼区間[CI]:1.11~1.57)。・しかし、MDD-S発症との関連は示されなかった(OR 0.98、95%CI:0.89~1.07)。・ベースラインの肥満は、追跡期間中のMDD-S発症と関連していなかった(OR 0.75、95%CI:0.25~0.23)。しかし、追跡期間中のMDD-R発症とは関連していた(同:11.63、1.05~128.60)。・2年の追跡期間中、MDD-SとMDD-Rのいずれも、追跡期間中の肥満への進展とは関連していなかった(それぞれOR 1.67、95%CI:0.64~4.29およびOR 2.32、95%CI:0.82~6.58)。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 少し歩くだけでもうつ病は予防できる 難治性うつ病に対する効果的な治療は何か  担当者へのご意見箱はこちら

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うつ再発にマインドフルネス認知療法が有望/Lancet

 うつの再発・再燃の予防療法として、マインドフルネス認知療法(mindfulness-based cognitive therapy:MBCT)と抗うつ薬維持療法を比較検討する無作為化試験PREVENTが、英国・オックスフォード大学のWillem Kuyken氏らにより行われた。有効性および費用対効果の観点で行われた評価の結果、MBCTが抗うつ薬維持療法より優れるというエビデンスは示されなかったが、両療法とも、再発・再燃、残存性のうつ症状およびQOLなどで良好なアウトカムを保つことが認められたという。Lancet誌オンライン版2015年4月20日号掲載の報告より。MBCT vs. 抗うつ薬維持療法の無作為化試験で検討 うつの再発経験がある人は、再燃リスクが高く、最低2年間の抗うつ薬維持療法が推奨されている。しかし患者の多くが、薬物療法に代わる治療法を望んでいる。 MBCTは、通常ケアとの比較で、再発・再燃リスクを減少することが示されているが、抗うつ薬維持療法と比較した検討は行われていなかった。 研究グループは、MBCT-TS(MBCTと併せて抗うつ薬を漸減または中断投与する療法)が抗うつ薬維持療法に優れるか、24ヵ月間のPREVENT試験を行った。多施設単盲検並行群間無作為化対照試験であった。 英国内の都市および周辺地域のプライマリケア一般医から、3回以上の重大うつエピソード経験があり、抗うつ薬維持療法を受ける患者を集めた。 参加者を、MBCT-TS群または抗うつ薬維持療法群に無作為に割り付けた。割り付けはコンピュータ生成乱数配列法にて行った。登録施設および症状で層別化した。参加者は治療割り付けを認識していたが、試験の評価者には治療割り付けはマスキングされた。  主要アウトカムは、うつの再発・再燃までの期間で、患者は24ヵ月間試験期間中5回にわたってフォローアップを受けた。主要解析は原則intention to treatに基づき行われた。24ヵ月間の再発・再燃リスクのハザード比0.89、両群差はなし 2010年3月23日~2011年10月21日の間に、2,188例の参加者について適格性を評価し、一般医95人から集めた424例の患者をMBCT-TS群(212例)と抗うつ薬維持療法群(212例)に無作為に割り付け検討した。 結果、うつの再発・再燃までの期間は、両群間で差はみられなかった。24ヵ月時点で再発・再燃がなかった人はMBCT-TS群44%、抗うつ薬維持療法群47%で、ハザード比は0.89(95%信頼区間[CI]:0.67~1.18、p=0.43)であった。 重篤有害事象の発生についても差はみられなかった。有害事象は5件報告され、うち2例が死亡(MBCT-TSと抗うつ薬維持療法の各群で報告)であったが、有害事象は、介入または試験に起因したものはなかった。

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うつ病と抗うつ薬治療は乳がんリスクに影響しているのか

 うつ病および抗うつ薬の使用がそれぞれ乳がんのリスクを高めるという仮説があるが、これらに同時に曝露した場合を考慮した先行研究はなく、うつ病によるリスク上昇が抗うつ薬使用に起因したものか、あるいはそうでないのかは未解決であった。米国マサチューセッツ大学アマースト校のKW Reeves氏らは、うつ病と抗うつ薬の使用を同時に考慮したモデルを用いて、乳がんリスクに及ぼす影響を検討した。その結果、うつ病は乳がんリスクと関連しなかったこと、抗うつ薬がわずかであるが乳がんのリスクを増加させ、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるリスク上昇が確認されたことを報告した。Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention誌2015年4月号の掲載報告。うつ病と乳がんリスクとの関連は認められなかったが抗うつ薬使用は有意にリスク増加 検討は、前向きコホートである米国看護師健康調査(Nurses’ Health Study)に2000年初頭に登録された女性7万7,482例の、うつ病と抗うつ薬使用に関するデータを使用して行われた。医師によるうつ病の診断歴、特定の種類の抗うつ薬使用について自己報告をしてもらい、2012年の1年間に乳がんと自己報告された症例を精査し、浸潤性がんと確定された症例のみをアウトカムに含めた(2,567例)。ロジスティック回帰モデルを用い、ベースライン時のうつ病ならびに抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響を、個々におよび相互調整後の両面から評価した。 うつ病ならびに抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響を評価した主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は66.2(SD 7.1)歳であった。臨床的にうつ病と診断された患者は8.9%で、8.7%が抗うつ薬を使用していた。・年齢、BMI、閉経状況で調整後、うつ病と抗うつ薬使用それぞれの個別モデルにおいて、うつ病(オッズ比[OR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.81~1.08)あるいは抗うつ薬使用(同:1.07、0.93~1.22)と、乳がんリスクとの間に統計的に有意な関連は認められなかった。・うつ病と抗うつ薬使用を1つのモデルに同時に組み込んだ場合、うつ病と乳がんリスクとの関連は依然認められなかったが(OR:0.87、95%CI:0.74~1.03)、抗うつ薬使用は有意なリスク増加と関連していた(同:1.15、0.98~1.35)。ただし、その差は小さく、有意差は境界線上であった。・抗うつ薬使用と乳がんリスクとの関連は、SSRIにおいて常に確認されたが(OR:1.16、95%CI:0.96~1.39)、他の種類の抗うつ薬では明らかではなかった(同:1.07、0.85~1.35)。・これら最初に得られた結果は、うつ病が乳がんリスクと関連しないことを示しているが、SSRI使用とリスクのわずかな上昇との関連は除外できなかった。 結果を踏まえて著者は、「さらなる分析でフォローアップ時の曝露情報が更新され、閉経状況やホルモン受容体サブタイプによる関連性の評価が可能となると思われる」と述べ、また「うつ病と抗うつ薬使用の乳がんリスクに及ぼす影響が明確になれば、うつ病や抗うつ薬を使用する数百万の女性に重要な情報を提供しうる」とまとめている。関連医療ニュース 片頭痛予防にSSRIやSNRIは支持されない がん患者のうつ病を簡単にスクリーニングするには SSRIは月経前症候群の治療に有用か?

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双極性障害、平均余命に大きく影響

 双極性障害患者は、平均余命が11~20年短縮することが報告されている。この計算は、個人の15歳時データに基づいており、それ以降に双極性障害を発症した多くの患者の誤解を招く可能性がある。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Vedel Kessing氏らは、異なる年齢の双極性障害患者における平均余命の計算を行った。Bipolar disorders誌オンライン版2015年4月4日号の報告。双極性障害患者の平均余命が大幅に短縮 1970~2012年にデンマークのすべての精神科病院に入院または外来通院している全患者の全国レジスタを用い、2000年に生存していた患者について、15~75歳まで10歳刻みでの平均余命を計算した。 異なる年齢の双極性障害患者における平均余命の計算を行った主な結果は以下のとおり。・25~45歳の標準的な双極性障害患者における平均余命は、男性で12.0~8.7年、女性で10.6~8.3年短かった。・双極性障害患者と一般集団の平均余命比は、年齢とともに低下しており、これは双極性障害が若年または中年期における余命期間の減少開始に影響していることが示唆された。・双極性障害患者の平均余命は、以前報告された程度ではないものの、大幅に短縮していた。関連医療ニュース うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 若年双極性障害への治療効果を高めるには アルツハイマー病への薬物治療は平均余命の延長に寄与しているのか:東北大学

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