糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:43

EDが前糖尿病や糖尿病の発症予測因子の可能性

 糖尿病罹患後に発症する合併症の一つに男性の勃起不全(ED)が挙げられることはよく知られているが、EDが前糖尿病や糖尿病の発症予測因子の一つであるという、逆の時間的関係も存在することを示すデータが報告された。論文の著者らは、若年のED患者を対象として糖尿病のスクリーニングを行うことを提案している。米セントルイス大学のJane Tucker氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」に7月25日掲載された。  この研究は、同大学が管理している米国中西部の大規模な医療データシステムを用いて行われた。2008年1月~2022年6月に受療行動があり、前糖尿病や糖尿病の既往のない18~40歳の男性23万1,523人(平均年齢28.3±7.0歳)のデータセットを作成。そのうち1.4%に相当する3,131人がEDを新規診断されていた。非ED群に比較しED群は、30歳以上(45.0対77.7%)、低テストステロン血症(0.3対5.5%)の割合が高く(いずれもP<0.0001)、肥満や併存疾患(高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患、脳血管疾患、心不全、うつ病、不安症など)が多いといった有意差が認められた。

植物性食品が豊富な食料支援が若年者の肥満解消・予防に寄与

 植物性食品を豊富に含む家族向けの食料支援サービスは、その家庭の子どもの肥満予防に有用な方策となる可能性が、「Preventing Chronic Disease」に6月22日掲載された研究から示唆された。  米ボストン小児病院のAllison J. Wu氏らは、2021年1月から2022年2月の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、米マサチューセッツ総合病院のリビア・フードパントリー(Revere Food Pantry;食料配給所)からの、植物性食品を中心とする家庭向けの食料支援が、その家庭の子どものBMIの変化に与える影響について検討した。対象とされた家庭には、新鮮な野菜と果物、ナッツ類、全粒穀物を含む食料品を、家族全員が1日3回摂取できるように毎週配給した。食料支援を受けた93世帯の子ども107人のうち、2~18歳の若年者計35人を対象に分析した。分析には線形回帰を使用した。

低体重のままの人や体重が減った人、死亡リスク高い~日本人集団

 成人後の体重変化が、高い死亡リスクと関連することが最近の研究でわかっている。今回、日本の前向きコホート研究であるJPHC前向き研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータで20歳以降のBMIの変化と死亡リスクとの関連を調べたところ、低体重のままの人と体重が減少した人では、正常体重の範囲内で体重が増加した人よりも死亡リスクが高いことがわかった。International Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年10月25日号に掲載。  本研究では、40~69歳の参加者を20年追跡したJPHC前向き研究から6万5,520人のデータを分析した。BMIの変化により参加者を、低体重のまま(第1群)、正常低BMI→正常高BMI(第2群)、正常高BMI→正常低BMI(第3群)、正常BMI→過体重(第4群)、過体重→正常BMI(第5群)、正常BMI→肥満(第6群)の6つの群に分類した。

2型糖尿病の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に負の関連

 2型糖尿病患者の罹病期間と大脳皮質の厚さとの間に、負の関連が見られるとする報告が発表された。米ミシガン大学アナーバー校のEvan L. Reynolds氏らが米国先住民を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Annals of Clinical and Translational Neurology」に7月30日掲載された。大脳皮質の厚さ以外にも、灰白質体積の減少や白質高信号領域の体積の増加という関連が認められたという。  認知症の有病率が世界的に上昇しており、その理由の一部は肥満や2型糖尿病の増加に起因するものと考えられている。また、糖尿病合併症と認知機能低下との関連も報告されている。一方、米国先住民であるピマインディアンは肥満や2型糖尿病の有病率が高く、糖代謝以外の代謝異常や慢性腎臓病の有病率も高い。しかしこれまでのところ、この集団を対象とする認知症リスクの詳細な検討は行われていない。これを背景としてReynolds氏らは、2型糖尿病罹病歴の長いピマインディアン51人を対象として、認知機能検査および脳画像検査による認知症リスクの評価結果と、糖代謝マーカーを含めた代謝関連臨床検査データとの関連を検討した。

善玉コレステロール値は高くても低くても認知症リスクと関連

 HDLコレステロール(HDL-C)は、心臓や脳の健康に良い「善玉コレステロール」と考えられているが、その値は高過ぎても低過ぎても認知症の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究論文の上席著者である米ボストン大学公衆衛生大学院のMaria Glymour氏は、「この研究は、非常に多くの参加者を長期間追跡したものであるため、得られた結果は極めて有益だ。われわれは、コレステロール値の非常に高い場合から非常に低い場合まで、あらゆる値と認知症の発症リスクとの関連を推定することができた」と話している。研究の詳細は、「Neurology」に10月4日掲載された。

幹細胞治療で1型糖尿病が寛解する可能性

 1型糖尿病患者に対して、幹細胞由来のインスリン産生細胞を移植するという新たな治療法の可能性を示した、トロント大学アジメラ移植センター(カナダ)のTrevor Reichman氏らの研究結果が、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表された。  1型糖尿病は、膵臓内のランゲルハンス島にあるインスリン産生細胞(膵島細胞)の機能が失われることで発症し、発症後には1日数回のインスリン注射、またはインスリンポンプによる治療が必須とされる。しかし、今回報告された新たな研究が実を結べば、1型糖尿病患者の一部はそのようなインスリン療法が不要になるかもしれない。

日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。

1型DM、週1回insulin icodec vs.1日1回インスリン デグルデク/Lancet

 1型糖尿病の成人患者において、週1回投与のinsulin icodec(icodec)は26週時の糖化ヘモグロビン値(HbA1c)低下に関して、1日1回投与のインスリン デグルデクに対し非劣性であることが認められたが、臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の合併が有意に高率であった。英国・Royal Surrey Foundation TrustのDavid Russell-Jones氏らが、12ヵ国の99施設で実施された52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験「ONWARDS 6試験」の結果を報告した。著者は、「1型糖尿病の特性を考慮すると、基礎インスリン注射を毎日から週1回に変更することは困難な可能性があるが、持続血糖モニタリングのデータとリアルワールド研究のさらなる解析により、icodec週1回投与の低血糖リスク軽減のための投与量調節に関する洞察が得られる可能性はある」とまとめている。Lancet誌2023年10月17日号掲載の報告。

医療費に大きな影響を与える患者背景は?/慶應大ほか

 多疾患併存(マルチモビディティ)による経済的負担は、世界的な課題となっている。高額医療費患者における多疾患併存の寄与については不明な点が多いことから慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの西田 優紀氏らの研究グループは、東京医科歯科大学、川崎医科大学、全国健康保険協会と共同して全国健康保険協会が提供する健康保険請求データを用いて横断研究を行い、日本人の医療費に大きな影響を与える多疾患併存パターンを解析した。その結果、上位10%の患者集団の95.6%で多疾患併存がみられたほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を同時併発した患者が全集団の31.8%を占めることが判明した。PLoS One誌2023年9月28日の報告。