医療一般|page:149

ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。

医師の英語学習、どのくらいお金と時間をかけている?/1,000人アンケート

 英語で学会発表を行ったり、外国人患者を診療したりするために、英語は医師にとって欠かせないスキルとなっている。英語を学ぶ主な目的や学習方法といった医師の英語学習状況を把握するため、会員医師1,021人を対象に『医師の英語学習に関するアンケート』を9月21日に実施した。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。その結果、英語学習に最も費用と時間をかけているのは30代であることなどが明らかとなった。海外学会への参加頻度から、おすすめの英語系YouTubeチャンネルや語学学習アプリなど、学習に役立つツールまで、英語学習に関するさまざまな意見が寄せられた。

日本人統合失調症患者の下剤使用開始と関連する要因は

 抗精神病薬の一般的な副作用の1つに便秘がある。しかし、便秘をターゲットとした研究は、これまで行われていなかった。獨協医科大学の川俣 安史氏らは、同じ統合失調症患者を20年間さかのぼり、下剤使用開始と関連する要因を特定しようと試みた。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年9月12日号の報告。  2021年4月より各病院に通院する統合失調症患者14例を登録した。対象患者の2016、11、06、01年4月1日時点でのすべての処方箋データをレトロスペクティブに収集した。下剤の使用頻度の違いと傾向を特定するため、Bonferroni補正コクランQ検定およびコクラン・アーミテージ検定を用いた。20年にわたる下剤使用開始と関連する要因を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

膀胱がんリスク、仕事での立位/歩行は座位より5割減~日本人集団

 身体活動と膀胱がんリスクとの関連については、アジア人集団では一貫していない。今回、大阪大学のHang An氏らが日本人の大規模コホートで検討したところ、とくに男性において、レクリエーションスポーツへの参加や仕事での立位/歩行の身体活動が膀胱がんリスクと逆相関していたことが示された。Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年10月6日号に掲載。  本研究は集団ベースの前向きコホート研究で、がん/心血管疾患の既往のない40~79歳の日本人5万374人について自己記入式質問票で身体活動に関する情報を取得し解析した。Cox比例ハザードモデルを用いて、潜在的交絡因子を調整後の膀胱がん発症のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

HIVの流行終結を目指す取り組みとは

 HIV感染症は、医療の進歩により、もはや死に至る病気ではなくなった。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、2030年までにHIV流行を終結する目標を発表しており、HIV流行終結に向けた対策は世界的に推進されている。一方、日本においては、HIV/エイズの適切な予防・検査・治療の推進に加え、誤解の解消と正しい情報の提供が喫緊の課題とされている。2023年10月5日、「2030年までのHIV流行の終結に向けた道筋とは」をテーマとした、ギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催された。

日本における軽度認知障害とアルツハイマー病の疾病負荷

 軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病の予防や管理対策の開発には正確な疫学データが必要とされるが、日本ではこのようなデータが不足している。九州大学の福田 治久氏らは、日本における新規発症のMCIまたはアルツハイマー病患者の疾病負荷と進行について調査を行い、急速に高齢化が進む国においてMCIやアルツハイマー病は優先度の高い疾患であり、本結果は日本におけるこれらの疾病負荷や進行について重要な初の考察を提供するものである、とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年9月9日号の報告。

月1回のノンアル飲料提供で飲酒量は減らせるか?/筑波大

 本邦では、男性40g/日以上、女性20g/日以上の純アルコール摂取量を生活習慣病のリスクを上昇させる飲酒量と定義している。しかし、この飲酒量で飲酒する人の割合を2019年と2010年で比較すると、男性では変化がなく、女性では有意に増加したと報告されている。そのため、さらなる対策が求められている。そこで、吉本 尚氏(筑波大学医学医療系 准教授)らの研究グループは、アルコール依存症の患者を除いた週4回以上の飲酒をする20歳以上の成人を対象として、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量を減らすことが可能か検討した。その結果、ノンアルコール飲料の提供によりアルコール摂取量が減少し、提供期間終了後8週間においてもその効果が持続した。本研究結果は、BMC Medicine誌2023年10月2日号に掲載された。

アセトアミノフェンの禁忌解除で添付文書改訂、処方拡大へ/厚労省

 アセトアミノフェン含有製剤の添付文書について、2023年10月12日、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」及び「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行った。添付文書における禁忌への記載が、成書やガイドラインで推奨される適切な薬物治療の妨げになっていたことから、今年3月に日本運動器疼痛学会が禁忌解除の要望を厚生労働省に提出していた。

双極性障害のリスク基準を満たす患者の長期的な発症率

 双極性障害の発症を予測することができれば、予防的治療が容易になる可能性がある。リスク評価尺度の中でもBipolar At-Risk(BAR)は、臨床コホートにおいて最初の1年間での双極性障害発症を予測するうえで有用であることが示唆されているが、BARが長期的な発症と関連しているかは、明らかになっていない。オーストラリア・メルボルン大学のAswin Ratheesh氏らは、10~13年間のフォローアップ期間を通じて、BARと双極性障害発症との関連を評価した。その結果、メンタルヘルスに問題を抱えている人のうち、BAR基準を満たす人は、そうでない人と比較し、10年以上にわたり双極性障害の発症リスクが有意に高いことが確認された。JAMA Network Open誌2023年9月5日号の報告。

高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。  本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。また、薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。

減量目的のGLP-1作動薬、膵炎・腸閉塞・胃不全麻痺のリスク増加か/JAMA

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として用いられるが、体重減少の目的にも用いられている。糖尿病患者において消化器有害事象のリスクが増加していることが報告されており、2023年9月22日に米国食品医薬品局(FDA)よりセマグルチドについて、腸閉塞の注意喚起が追加された。しかし、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を検討した臨床試験はサンプル数が少なく、追跡期間が短いため、これらの有害事象を収集する試験デザインにはなっていない。

腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。  本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。  日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。

NSAIDなどを服用している高齢者、運転に注意

 認知機能が正常な高齢者の服用薬と、長期にわたる運転パフォーマンスとの関連を調査した前向きコホート研究の結果、抗うつ薬や睡眠導入薬、NSAIDsなどを服用していた高齢者は、非服用者と比べて時間の経過とともに運転パフォーマンスが有意に低下していたことを、米国・ワシントン大学のDavid B. Carr氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月29日号掲載の報告。  米国運輸省と米国道路交通安全局は、90種類以上の薬剤が高齢ドライバーの自動車事故と関連していることを報告している。しかし、自動車事故リスクの上昇が薬剤の副作用によるものなのか、治療中の疾患によるものなのか、ほかの薬剤や併存疾患によるものなのかを判断することは難しい。そこで研究グループは、認知機能が正常な高齢者において、特定の薬剤が路上試験における運転パフォーマンスと関連しているかどうかを前向きに調査した。

診察室での会話を基にした対話型AI、BRCA検査への疑問や不安に対応/AZ

 乳がんと診断されてから、患者は治療法選択のほか再建や遺伝子検査を行うかなどたくさんの意思決定を求められる。とくに遺伝子検査については、乳がんと遺伝の関係の理解に加え家族への配慮も必要となるが、外来で説明に十分な時間を設けるのが難しいことも多い。9月27日、アストラゼネカは「乳がんを遺伝子レベルで理解することの重要性~遺伝性乳がん治療における課題とは~」と題したメディアセミナーを開催し、大野 真司氏(相良病院)、乳がん経験者の園田 マイコ氏が登壇。BRCA検査やHBOCについての理解を促す患者向けのサポートツールとして、対話型人工知能WEBアプリ「ブルーカ」が紹介された。

身長低下が20代から4cm以上、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会

 日本整形外科学会(日整会)は、10月8日の「骨と関節の日」にちなみメディア向けセミナーを都内で開催した。「骨と関節の日」は、ホネのホは十と八に分かれること、「体育の日」に近く、骨の健康にふさわしい季節であることから1994年に日整会が制定し、全国で記念日に関連してさまざまなイベントなどが開催されている。  セミナーでは、日整会の今後の取り組みや骨粗鬆症による椎体骨折についての講演などが行われた。  はじめに同学会理事長の中島 康晴氏(九州大学整形外科 教授)が、学会活動の概要と今後の展望を説明した。

内科系疾患を併発するうつ病患者への抗うつ薬の有用性~メタ解析

 内科的疾患を有する患者の3~6人に1人は、抗うつ薬が使用されているといわれている。しかし、通常の臨床試験では、併発疾患を有する患者は除外されている。抗うつ薬に関するメタ解析では、エフェクトサイズが小~中程度であることが示唆されているが、併発疾患がまん延している臨床現場において、一般化できるかは不明である。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler-Forsberg氏らは、内科的疾患と併発するうつ病患者における抗うつ薬の有効性および安全性を明らかにするため、メタ解析エビデンスの包括的なシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、多くの内科的疾患では、大規模かつ質の高いランダム化比較試験(RCT)が少なかったものの、抗うつ薬は、併発疾患を有する患者のうつ病の治療および予防に対し効果的かつ安全に使用できることが示唆された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2023年9月6日号の報告。

レビー小体病のバイオマーカーとして期待される「脂肪酸結合タンパク質」

 高齢人口の世界的な増加は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)などの認知症や運動機能障害といった、加齢に伴う疾患の増加につながる。これらの障害に関連するリスク因子の正確な予測は、早期診断や予防に非常に重要であり、バイオマーカーは疾患の診断やモニタリングにおいて重要な役割を担う。α-シヌクレイノパチーなどの神経変性疾患では、特定のバイオマーカーが疾患の有無や進行を示す可能性がある。

アトピー性皮膚炎の成人・小児は炎症性腸疾患のリスク高

 アトピー性皮膚炎(AD)の小児および成人は、炎症性腸疾患(IBD)のリスクが高く、そのリスクは年齢、AD重症度、IBDの種類によって異なることが、米国・ペンシルベニア大学医学大学院のZelma C. Chiesa Fuxench氏らによる住民ベースのコホート研究で明らかにされた。これまで、ADとIBDの関連に関するデータは一貫性がなく、ADまたはAD重症度と潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)リスクとの関連を個別に検討した研究はほとんどなかった。著者は、「今回示された所見は、ADとIBDの関連について新たな知見を提供するものである。臨床医は、とくにADと消化器症状が合併する可能性がある患者に対してADの全身治療を行う際に、これらのリスクに留意する必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。

重度の精神疾患に対する入院リハビリテーションの有用性

 精神疾患や気分障害は、重度の機能障害、早期死亡リスク、社会的および経済的負担と関連している。イタリア・"G. D'Annunzio" UniversityのStefania Chiappini氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者と気分障害患者を対象に、イタリアの精神科入院施設で実施された心理社会的、心理的、リハビリテーション的な介入の有効性を評価した。その結果、重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入は、効果的かつ有用である可能性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年8月30日号の報告。