カナキヌマブは心血管イベントリスクの抑制に有益か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2017/09/07

 

 インターロイキン-1βを標的とするヒトモノクローナル抗体のカナキヌマブ150mgを、心筋梗塞既往、高感度CRP値2mg/L以上の患者に毎3ヵ月投与することで、脂質値が低下せずとも心血管イベントの再発を長期にわたり抑制する効果があることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のP.M.Ridker氏らが、患者1万61例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験で明らかにした。これまでの実験・臨床データから、脂質値の低下に依らず炎症を抑えることで、心血管疾患リスクが低下する可能性が示されていたが、アテローム血栓症における炎症抑制の効果については検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2017年8月27日号掲載の報告

カナキヌマブ50mg、150mg、300mgとプラセボを投与し比較検証
 研究グループは、心筋梗塞歴があり、高感度CRP値が2mg/L以上の患者1万61例を無作為に4群に分け、カナキヌマブを50mg、150mg、300mgとプラセボを、毎3ヵ月で皮下投与した。

 主要有効性エンドポイントは、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管死のいずれかの発生とした。

カナキヌマブ150mg投与のみ有意に抑制、心血管イベントリスクは15%減
 試験開始48ヵ月時点で、高感度CRP値のベースラインからの減少幅中央値は、プラセボ群に比べ、50mg群で26%、150mg群で37%、300mg群で41%、それぞれ大きかった。一方、脂質値のベースラインからの減少は、カナキヌマブ群では認められなかった。

 中央値3.7年追跡時点で、主要エンドポイントの発生率は、プラセボ群4.50/100人年に対し、50mg群4.11/100人年、150mg群3.86/100人年、300mg群3.90/100人年だった。各群のプラセボ群に対するハザード比(HR)は、50mg群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.80~1.07、p=0.30)、150mg群が0.85(同:0.74~0.98、p=0.021)、300mg群が0.86(同:0.75~0.99、p=0.031)で、事前に規定した統計的有意差を示す多様性補正後の閾値に達したのは、150m群のみだった。また、主要エンドポイントに不安定狭心症のための緊急血行再建術による入院などを加えた副次エンドポイント発生についても、150mg群のみプラセボ群に対する有意な減少が示された(HR:0.83、95%CI:0.73~0.95、p=0.005)。

 一方で、カナキヌマブ群はプラセボ群に比べ、致死的感染症発生率が高率だった。全死因死亡率については、両群で同等だった(HR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.31)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)