虚血性心筋症における幹細胞注入療法の安全性/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/06

 

 慢性虚血性心筋症患者における自己間葉系幹細胞(MSC)と自己骨髄単核細胞(BMC)による経心内膜幹細胞注入療法は、安全と思われることが報告された。米国・マイアミ大学のAlan W. Heldman氏らが、65例の患者について行った第1相および第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。同患者への自己細胞培養による幹細胞注入療法の有効性と安全性については議論の的となっている。著者は、「今回の結果は、サンプルサイズと多重比較の点で限定的だが、より大規模な試験で、安全性の明確なエビデンスを得ること、また治療アプローチの有効性の評価を行うことを支持するものであった」と述べている。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。

65例の患者をMSC、BMC、プラセボに無作為化
 試験は、2009年9月1日~2013年7月12日に、虚血性心筋症で左室駆出率50%未満の患者65例を対象に行われた。

 被験者は無作為に、MSC群(19例)vs.プラセボ群(10例)、BMC群(19例)vs.プラセボ群(10例)に割り付けられ、1年間のフォローアップを受けた。

 注入療法は左室に10ヵ所行われた。主要エンドポイントは、30日間における緊急治療を要した重大有害イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全増悪による入院、心穿孔、心タンポナーデ、持続性心室性不整脈の複合)発生率とした。

30日間の重大有害イベント発生はゼロ
 結果、主要エンドポイントを発生した患者は1人もいなかった。

 1年時点の重大有害イベント発生率は、MSC群31.6%(95%信頼区間[CI]:12.6~56.6%)、BMC群31.6%(同:12.6~56.6%)、プラセボ群38.1%(同:18.1~61.6%)であった。

 1年間で、ミネソタ心不全生存スコア(Minnesota Living With Heart Failure score)の有意な改善が、MSC群(-6.3、95%信頼区間[CI]:-15.0~2.4、反復測定分散分析のp=0.02)、BMC群(-8.2、-17.4~0.97、p=0.005)ではみられたが、プラセボ群ではスコアの改善がみられなかった(0.4、-9.45~10.25、p=0.38)。

 6分間歩行テストの結果は、MSC群のみで有意に延長した(p=0.03)。

 梗塞サイズ(左室容積%)は、MSC群では有意に減少したが(-18.9%、95%CI:-30.4~-7.4%、群内p=0.004)、BMC群(-7.0%、同:-15.7~1.7%、p=0.11)、プラセボ群(-5.2%、同:-16.8~6.5%、p=0.36)では減少は有意ではなかった。

 注入部の局所心筋機能(Eulerian circumferential strainのピークで評価)の改善は、MSC群では有意であったが(-4.9、95%CI:-13.3~3.5、群内p=0.03)、BMC群(-2.1、同:-5.5~1.3、p=0.21)、プラセボ群(-0.03、同:-1.9~1.9、p=0.14)では有意ではなかった。

 左室腔容積、左室駆出率に変化はみられなかった。

(武藤まき:医療ライター)