高血圧患者も正常血圧の人も、まずは-4.4g/日、4週以上の減塩継続を/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/04/19

 

 現在、多くの国で、食塩の1日摂取量は約9~12g/日から5~6g/日へという減塩の推進が行われている。そのような減塩の降圧効果のエビデンスも多く示されるようになり、より少ない食塩摂取(3g/日)は心血管疾患リスクの低下と関連するとの前向きコホート研究の結果も示されている。しかし最近のメタ解析報告で、減塩はホルモンや脂質には逆効果で降圧のベネフィットが軽減される可能性があり、正常血圧の一般集団における減塩効果は疑問とする報告がなされた。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFeng J He氏らは、その解析には20g/日を4~5日間だけ1g/日とするといった最近の流れとは異なる多量・短期の減塩効果をみた試験が含まれているとして、少量・長期の減塩効果に的を絞ったメタ解析を行った。その結果、-4.4g/日、4週以上の減塩継続が、高血圧患者、正常血圧の人、また性別、人種を問わず、有意に大きな降圧効果をもたらし心血管疾患予防に結びつくことを報告した。BMJ誌オンライン版2013年4月3日号掲載の報告より。

少量・長期の減塩効果に的を絞った34試験・3,230例についてメタ解析
 He氏らは、減塩量が少量で試験期間が4週間以上であった無作為化試験を適格基準とし、Medline、Embase、Cochrane Hypertension Group Specialised Registerなどから該当文献を検索した。2人の独立レビュワーがデータ抽出を行い、ランダムエフェクトメタ解析、サブグループ解析、メタ回帰分析を行った。

 解析には、34試験・3,230例が組み込まれた。試験期間中央値は4週間(範囲:4週~3年)、被験者の年齢中央値は50歳、24時間尿中Na量中央値160mmol、食塩摂取量中央値9.4g/日(範囲:7.3~11.7g/日)、血圧中央値141/86mmHgであった。

 プール解析の結果、被験者の24時間尿中Na量の平均低下値は75mmol、食塩相当量で4.4g/日の減塩を行っており、この減塩に伴い血圧中央値は収縮期血圧が-4.18mmHg(95%信頼区間[CI]:-5.18~-3.18、I2=75%)、拡張期血圧は-2.06mmHg(同:-2.67~-1.45、68%)低下していた。

 メタ回帰分析では、年齢、人種、血圧状態(高血圧あるいは正常血圧)、24時間尿中Na量はすべて、収縮期血圧低下と有意に関連していた(試験間のバリアンス68%)。

 また、24時間尿中Na量100mmol(食塩6g/日相当)の低下は、収縮期血圧5.8mmHg(95%CI:2.5~9.2、p=0.001)の低下(年齢、人種、血圧状態で調整後)をもたらした(拡張期血圧、年齢、人種、血圧状態、24時間尿中Na量変化値で補正後の試験間のバリアンスは41%)。

食塩1日摂取量5~6g/日の減塩推奨、将来的には3g/日を目標値に
 高血圧患者についてのメタ解析では、収縮期血圧-5.39mmHg(95%CI:-6.62~-4.15、I2=61%)、拡張期血圧-2.82mmHg(同:-3.54~-2.11、52%)の減塩効果が認められた。また正常血圧者のメタ解析でもそれぞれ-2.42mmHg(同:-3.56~-1.29、66%)、-1.00mmHg(同:-1.85~-0.15、66%)の減塩効果が認められた。人種や性別にみたサブグループ解析でも、収縮期血圧の有意な低下が認められた。

 本解析ではホルモン、脂質への効果も検証された。その結果、血中レニン活性(変化値中央値:0.26ng/mL/時、95%CI:0.17~0.36、I2=70%)、アルドステロン(同:73.20pmol/L、44.92~101.48、62%)、ノルアドレナリン(同:187pmol/L、39~336、5%)ではわずかだが減塩と各値上昇との関連が認められた。しかし、脂質とは有意な関連はみられなかった[総コレステロール(同:0.05mmol/L、-0.02~0.11、0%)、LDL-C(同:0.05mmol/L、-0.01~0.12、0%)、HDL-C(同:-0.02mmol/L、-0.06~0.01、16%)、トリグリセリド(同:0.04mmol/L、-0.02~0.09、0%)]。

 解析の結果を踏まえて著者は、「本結果は、一般集団において減塩が降圧とそれによる心血管疾患発生の低下に結びつくことを支持するものである」と結論。「観察された24時間尿中Na量低下と収縮血圧値低下との関連は、減塩量が大きいほど収縮期血圧値の低下も大きくなることを示すものである」と述べた上で、「最近の潮流である食塩の1日摂取量約9~12g/日から5~6g/日へという減塩の推奨は血圧に大きな効果をもたらすと思われる。さらに3g/日への減塩がより大きな効果をもたらすと思われ、人々の食塩摂取量の長期の目標値とすべきである」とまとめている。