地域ベースの健康増進・予防プログラム、高齢者の心血管疾患罹患率改善の可能性

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/03/04

 



ボランティア運営の高齢者を対象とした地域ベースの健康増進・予防プログラムによる介入が、心血管疾患罹患率を改善する可能性があることが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学家庭医療科のJanusz Kaczorowski氏らの検討で明らかとなった。文献的には、地域の心血管系の健康状態にはリスク因子分布のわずかな変動が重要な影響を及ぼすことが繰り返し強調されてきたが、そのような転換を促進する地域ベースの介入を支持する確固たるエビデンスはわずかしかないという。当該地域の状況によりよく適合した心血管疾患の地域予防プログラムを策定するには、実際に遂行した上で厳格な評価を行う必要がある。BMJ誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月7日号)掲載の報告。

介入の前後で入院率を比べるクラスター無作為化試験




研究グループは、地域ベースの健康増進プログラムであるCardiovascular Health Awareness Program (CHAP)が心血管疾患の罹患率に及ぼす影響を評価するクラスター無作為化試験を実施した。

対象は、カナダ・オンタリオ州の39の中規模地域に居住する65歳以上の住民であり、CHAPを受ける群(20地域)あるいは非介入群(19地域)に無作為に割り付けられた。各地域のかかりつけ医、薬剤師、看護師、ボランティア、主要な地域活動機関が参加した。

CHAP群の地域では、65歳以上の住民が、地域の薬局を会場としたボランティア運営の10週にわたる心血管リスク評価と教育セッションから成るプログラムに参加するよう促された。参加者の自動血圧測定値と自己申告によるリスク因子のデータが収集され、本人、かかりつけ医、薬剤師に知らされた。

主要評価項目は、急性心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院の複合エンドポイントとし、CHAP施行の前後で比較した。

介入前に比べ入院率が9%低下




介入群の20地域でCHAPは滞りなく実施された。10週のプログラム期間中に、地域の145の薬局のうち129ヵ所(89%)において、合計1,265の3時間にわたる長時間セッションが開催された。577人のボランティアの支援の下で、1万5,889人の参加者に対し合計2万7,358の心血管リスク評価が行われた。

介入の前年の入院率で調整したところ、CHAPによる介入によって、非介入群に比べ複合エンドポイントの発生率が相対的に9%低下した(発生率比:0.91、95%信頼区間:0.86~0.97、p=0.002)。これは、65歳以上の住民の心血管疾患による年間入院率が、人口1,000人当たり3.02人低下したことを示す。

急性心筋梗塞による入院は、非介入群に比べCHAP介入群で13%低下し(発生率比:0.87、95%信頼区間:0.79~0.97、p=0.008)、うっ血性心不全による入院は10%低下しており(同:0.90、0.81~0.99、p=0.029)、いずれも有意差がみられたが、脳卒中による入院には差を認めなかった(同:0.99、0.88~1.12、p=0.89)。

著者は、「高齢者を対象とした多彩な計画から成る地域ベースの健康増進・予防の共同プログラムは、住民の心血管疾患罹患率を改善する可能性がある」と結論している。また、「ボランティアによる介入は住民の参加率を向上させ、医療従事者や地域の活動機関の動員、組織化に有効であった」という。

(菅野守:医学ライター)