sibutramine長期投与の心血管転帰:SCOUT試験

提供元:ケアネット

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公開日:2010/09/15

 



肥満治療薬として過去に日本でも上市が目指されたことのあるsibutramineの長期投与リスクに関する報告が、英国ロンドン大学のW. Philip T. James氏らSCOUT研究グループによって報告された。本報告は同薬の、心血管疾患を有する患者への長期投与を検討したもので、「非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中のリスクは増加したが、心血管死亡または全死因死亡は増加しなかった」と結論している。NEJM誌2010年9月2日号掲載より。

6週間全例にsibutramine投与後、プラセボ対照化試験へ




SCOUT(Sibutramine Cardiovascular Outcomes)試験は、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、2003年1月~2009年3月にヨーロッパ、中南米、オーストラリアの16ヵ国298医療機関から被験者を募り行われた。

55歳以上で心血管疾患の既往または2型糖尿病(もしくはその両方)を有する過体重・肥満被験者1万744例を登録し、心血管イベントリスクが高い被験者における心血管転帰を、体重管理に用いたsibutramineの有無別で評価した。

導入期間の当初6週間は、全被験者がsibutramineを投与され、体重管理プログラムに参加した後、9,804例が二重盲検に移行し、sibutramine群(4,906例)、プラセボ群(4,898例)に無作為に割り付けられた。

主要エンドポイントは、主要評価項目としたイベント(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、心停止後の救急蘇生または心血管死)の無作為化から初発までの期間とした。

平均投与3.4年、非致死性イベントのリスクは増加したが死亡率での有意差は認められず




平均投与期間は、3.4年だった。導入期間中の平均体重減少は2.6kgで、ランダム化後、被験者は、sibutramine群でさらなる減量(平均値、1.7kg)を達成し、維持した。平均血圧は両群で低下し、プラセボ群の方がsibutramine群より大きな減少を示した(平均差1.2/1.4mm Hg)。

主要評価項目のイベントリスクは、プラセボ群の10.0%に対してsibutramine群は11.4%(ハザード比:1.16、95%信頼区間:1.03~1.31、P=0.02)だった。非致死性心筋梗塞の発生率は、sibutramine群4.1%、プラセボ群3.2%(ハザード比:1.28、95%信頼区間:1.04~1.57、P=0.02)、非致死性脳卒中の発生率は2.6%と1.9%(同:1.36、1.04~1.77、P=0.03)だった。

ただし、心血管系および全死因死亡率の増加は認められなかった。

(朝田哲明:医療ライター)