糖尿病がある人の3人に1人は病気を‘恥’と感じた経験あり

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/03/20

 

 糖尿病がある人の3人に1人は、糖尿病であることを恥ずかしく感じた経験があるというデータが報告された。神戸市立看護大学看護学部の稲垣聡氏、糖尿病内科まつだクリニックの松田友和氏らが行った横断研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」に12月13日掲載された。恥ずかしさを感じた経験のある人は精神的苦痛を強く感じており、幸福感が低いことも明らかになったという。

 近年、糖尿病に関するスティグマが、糖尿病のある人の生活の質(QOL)を低下させることへの関心が高まっている。スティグマとは「汚名」や「不名誉」といった意味。誤った情報に基づくスティグマが存在すると、対象者が社会に受け入れられにくい状況が生じる。糖尿病のある人の場合、スティグマのために糖尿病であることを恥と捉え、病気を隠そうとしたり、食事の際に周囲の人に合わせて健康的でない食べ物を食べたり、人目を避けてインスリン注射や血糖測定をするといった行動につながる。

 スティグマは、社会の認識が改善してそれが解消されることが最善であり、そのための働きかけも関係団体が中心となって行われている。ただし、糖尿病を持つ人が感じている可能性のある‘恥’をテーマとした研究は、これまでほとんど行われていない。稲垣氏らはこのような状況を背景として、糖尿病であることを恥ずかしく感じたことのある人の割合やその関連因子を明らかにするため、以下の研究を行った。

 この研究は、調査会社に登録されているパネルを対象とする、インターネット調査として実施された。質問内容は、「糖尿病であることを恥ずかしいと思うことはあるか」、「糖尿病であることを同僚や友人などに伝えているか」という2項目であり、それに加え、心理的幸福感(WHO-5)、糖尿病関連の精神的苦痛(PAID)、自己管理行動(J-SDSCA)、自己管理の効力感(SESD)などを評価。

 解析対象者は20歳以上で「2型糖尿病のために受診したことがある」と回答した510人。その主な特徴は、平均年齢63.7±8.7歳、男性67.1%、BMI24.8±4.4、大卒以上51.6%、糖尿病罹病歴13.2±8.5年、インスリン療法中16.9%、HbA1c7.0±1.1%、診断された合併症を有する人の割合11.8%など。

 「糖尿病を恥ずかしいと思うことはあるか」との質問には32.9%が「はい」と回答し、「糖尿病であることを同僚や友人などに伝えているか」には17.5%が「いいえ」と回答した。糖尿病を恥じたことのある群は、ない群に比べて心理的幸福感が低く、糖尿病関連の精神的苦痛は大きく、またBMIが高値だった(全てP<0.001)。ただし、実際の自己管理行動(P=0.797)やHbA1c(P=0.362)は有意差がなかった。

 糖尿病を恥じた経験のあることに関連する因子を二項ロジスティック回帰分析で検討した結果、女性〔オッズ比(OR)4.78(95%信頼区間2.90~7.89)〕、経済的負担感(OR1.55~3.79)が有意な正の関連因子として特定された。反対に、高齢〔OR0.94(95%信頼区間0.92~0.97)〕、教育歴〔大卒以上でOR0.60(同0.37~0.98)〕、自己効力感〔OR0.91(0.86~0.98)〕は、糖尿病を恥じることに対して保護的に働く可能性が示された。BMIやインスリン療法を行っているか否かは、有意な関連がなかった。

 著者らは本研究が、糖尿病のある人の恥ずかしさに焦点を当てた初の研究であったため参考となる文献が限られていたことから、アンケート内容が最適なものではなかった可能性があること、恥と感じた理由について調査していないことなど、いくつかの限界点があるとしている。その上で、「2型糖尿病のある人の約3分の1は、糖尿病関連の苦痛や心理的幸福感の低さを伴う恥の体験を有していた。糖尿病のある人のQOL改善には、恥に焦点を当てた研究およびケア方法の確立が必要である」と結論付けている。

[2023年2月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら