慢性腎臓病+睡眠時無呼吸で死亡リスク上昇―国内医療費請求データの解析

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/08

 

 慢性腎臓病(CKD)に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している場合、死亡や心血管疾患などのリスクが有意に高いことを示すデータが報告された。名古屋大学医学部附属病院腎臓内科の田中章仁氏らが、国内医療機関の医療費請求データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月31日掲載された。SASに対して持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行っているCKD患者では、リスク上昇が見られないことも分かった。

 CKD患者はSAS有病率が高いことが知られているが、両者の併発が予後へどの程度の影響を及ぼすかは明らかでなく、またSASに対してCPAP治療を行った場合に予後が改善するのか否かも不明。そこで田中氏らは、国内449病院の医療費請求データベースを用いて、この点の解析を行った。

 2008年4月~2021年8月にCKDとして治療が行われたと考えられる92万4,238人から、年齢が20歳以上で血清クレアチニンが2回以上測定され1年以上の追跡が可能であり、ベースライン時に腎代替療法(透析療法、腎移植)を受けていない3万2,320人を解析対象とした。このうち1,026人(3.2%)がSASを併発していた。

 傾向スコアを用いて、年齢、性別、eGFR、ヘモグロビン、高血圧・糖尿病・心不全・心房細動・心房粗動の既往などをマッチさせ、SAS併発群と非併発群それぞれ940人からなるデータセットを作成。この両群を比較すると、アルブミン(3.76対3.87mg/dL)や総蛋白(6.83対6.94mg/dL)、およびカリウム(4.40対4.46mEq/L)はSAS併発群で有意に低値だったが、その他の臨床検査値やCKD病期(KDIGOステージ)、併発疾患有病率などは有意差がなかった。

 主要評価項目を、死亡、腎代替療法の開始、心不全・虚血性心疾患・脳卒中による入院で構成される複合エンドポイントとして、カプランマイヤー法で経過を比較すると、SAS併発群はイベント非発生率が有意に低値で推移していた。ただし、SAS併発群の35%に当たるCPAP施行群(330人)では、イベント非発生率がSAS非併発群と同レベルで推移していた。

 SAS非併発群を基準にイベント発生リスクを比較すると、未調整モデルではハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.10~1.45)であり、交絡因子(年齢、性別、eGFR、アルブミン、カリウム)を調整後にもHR1.25(同1.08~1.45)と、SAS併発群は有意にハイリスクであることが示された。

 次に、SAS併発群をCPAP施行の有無で二分して検討すると、CPAPを施行していない群では、未調整モデル〔HR1.42(1.22~1.65)〕、交絡因子調整モデル〔HR1.32(1.12~1.55)〕ともに、有意なリスク上昇が認められた。一方、CPAP施行群では、未調整モデル〔HR1.00(0.84~1.23)〕、交絡因子調整モデル〔HR0.96(0.76~1.22)〕であり、イベント発生リスクはSAS非併発群と同等であることが明らかになった。

 このほか、eGFRの低下速度を比較すると、有意差はないながらもSAS併発群で速く、特にCPAPを施行していない群で速いことが分かった(SAS非併発群は-1.7±5.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP施行群は-2.0±4.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP非施行群は-2.2±5.1/分/1.73m2/年)。

 著者らは、本研究が医療費請求データの解析であるため、SASの重症度を含めて詳細な患者背景が不明であることを限界点として挙げた上で、「SASを併発しているCKD患者は予後不良となりやすく、CPAP治療が予後を改善する可能性がある」と結論付けている。それらのメカニズムとしては、CKDによる体液貯留傾向とSASによる上気道の狭窄がともに心不全などの心血管イベントリスクを押し上げ、それに対してCPAPはSASとともに心不全を改善するように働くのではないかとの考察を加えている。

[2022年8月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら