爪の変色が再入院リスクと独立して関連―国内単施設前向き研究

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/17

 

 入院患者の爪の色から、退院後の再入院リスクを予測可能であることを示すデータが報告された。爪の半月(非高齢者の大半に見られる爪の根元の白い部分)がなくなっているのに爪の色が白く変化している高齢者は、交絡因子を調整後も再入院リスクが有意に高いという。雲南市立病院地域ケア科診療科の太田龍一氏らの研究によるもので、研究成果が「Cureus」に4月19日掲載された。

 爪の色は、メカニズムの理解は不十分ながら、慢性疾患患者や低栄養状態では白く変化するケースのあることが知られている。爪の色は簡単に確認できる上に、変化した色は短期間では変わらないため、急性疾患患者の入院前の状態の推測や管理強化・予後予測の指標となる可能性もある。ただし、それらの関連の実態は明らかでない。太田氏らは、入院患者に見られる白い爪と再入院リスクとの関連について、単施設前向きコホート研究により検討した。

 2020年4月~2021年3月に同院一般内科に入院した65歳超の患者から、爪白癬・欠損などのため評価不能の症例や院内死亡症例を除外した637人を検討対象とした。トレーニングを受けたスタッフが患者の爪の色を評価し、白く変化している群と変化していない群の2群に分類して、2021年6月30日まで追跡した。なお、第1指(親指)は高齢者でも半月が残っていることが多いため、評価の対象外とした。また、評価を行うスタッフは、患者の疾患名や病状の詳細を知らされていなかった。

 解析対象者637人の主な特徴は、平均年齢81.20±14.03歳、男性43.2%、BMI20.76、eGFR58.86mL/分/1.73m2、アルブミン3.55g/dL、ヘモグロビン11.93g/dL、退院時のFIMスコア(機能的自立度の指標)92.00、認知症18.1%など。入院中に158人(24.8%)が、爪が白く変化していると判定された。

 爪が白く変化している群とそうでない群を比較すると、前者は高齢で、BMI、アルブミン、ヘモグロビン、FIMスコアが有意に低く、チャールソン併存疾患指数、および認知症や脳血管疾患の有病率が有意に高いといった群間差が認められた。性別(男性の割合)やeGFR、および認知症・脳血管疾患以外の慢性疾患(心筋梗塞、心不全、糖尿病、COPD、肝疾患、腎疾患、がんなど)の有病率は有意差がなかった。

 追跡期間中に183人(28.7%)が再入院した。なお、同院は雲南地域の中核病院であり、同院退院後の患者は雲南市内の医療機関で継続的に管理され、再度入院が必要とされた全ての患者(転居者以外)が同院へ再入院していた。

 再入院率は、爪が白く変化している群41.1%、対照群24.6%であり、前者が有意に高かった(P<0.001)。Cox回帰分析の結果、心不全〔ハザード比(HR)1.53(95%信頼区間1.06~2.21)〕、がん〔HR1.52(同1.03~2.22)〕、認知症〔HR1.52(同1.03~2.25)〕とともに、爪が白く変化していること〔HR2.07(同1.45~2.97)〕が、それぞれ独立した再入院のリスク因子であることが分かった。反対に、初回入院時の在院日数が短いことや自宅退院は、再入院リスクの低さと関連していた。

 再入院の原因疾患としては、腎盂腎炎(18.0%)、心不全(16.9%)、肺炎(12.6%)、脳卒中(6.0%)、骨折(4.9%)などが多く見られた。また、再入院患者の4人に3人以上に当たる77.1%が退院後90日以内に再入院し、95.1%が180日以内に再入院していた。

 以上より著者らは、「さらなる研究が必要ではあるが、高齢入院患者の爪の色を評価することで、再入院リスクを予測できる可能性がある。爪の変色に関する情報を医療と介護のスタッフが共有することで、ケアの質を向上できるのではないか」と総括。また爪の変色の原因について、「毛細血管の血流障害などによる爪床の異常や物質の沈着といった機序が考えられるが詳細は不明であり、その解明も求められる」と付け加えている。

[2022年7月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら