日本人男性では米飯が心血管死リスクを下げる?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/11

 

 日本人男性では、米の摂取量が多い方が心血管疾患による死亡リスクが低いという、有意な関連のあることが報告された。岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学の和田恵子氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に5月30日掲載された。なお、女性ではこの関連は認められないとのことだ。

 日本人は欧米人より心血管疾患リスクが低いことが古くから知られている。日本人の主食は米であり、その消費量は欧米よりはるかに高い。これまで、米の摂取量と心血管死リスクとの関連を前向きに解析した研究の結果は一致しなかった。和田氏らは岐阜県高山市で行われている「高山スタディ」のデータを用いて、主食としての米の摂取量と心血管死リスクとの関連を、日本でよく食べられる他の主食であるパンや麺と比較しながら検討した。これら3つの主食と関連する食事パターンについても検討した。

 高山スタディは同市の住民対象コホート研究であり、1992年9月に35歳以上の住民(入院患者以外)、3万1,552人が参加した。今回の研究では、登録時に食事摂取頻度に関する質問票に回答し、心血管疾患の既往のなかった2万9,079人(男性45.9%)を解析対象とした。

 ベースライン時の米摂取量の四分位で性別ごとに4群に分けると、男性は米の摂取量が少ない群で、糖尿病や高血圧の既往者が多く、身体活動量が少なく、飲酒量や食物繊維、塩分の摂取量が多い傾向があった。女性の米摂取量が少ない群は、教育歴が長く、飲酒やコーヒーの摂取量、および食物繊維と塩分の摂取量が多い傾向があった。

 また、男性と女性の双方で、米摂取量は大豆製品と海藻の摂取量と正の相関があり、肉と卵の摂取量とは負の相関が見られた。一方、パンの摂取量は果物や乳製品の摂取量と正の相関があり、大豆製品の摂取量とは負の相関があった。麺の摂取量は、いも類、肉類、魚介類、卵の摂取量と正の相関があった。

 2008年10月1日までの追跡(平均14.1年)で、1,685人(男性46.2%)の心血管死が発生。米摂取量の第1四分位群(米摂取量が最も少ない下位25%)を基準に、他群の年齢調整後の心血管死リスクを比較すると、第3四分位群はハザード比(HR)0.77(95%信頼区間0.62~0.96)、第4四分位群はHR0.81(同0.66~0.99)であり、米摂取量が多いほど心血管死リスクが低いという有意な関係が認められた(傾向性P=0.004)。

 調整因子に、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病・高血圧の既往、婚姻状況、教育歴、コーヒー・塩分摂取量を加えても、この関連は引き続き有意だった(傾向性P=0.013)。さらに、追跡開始から最初の2年以内の心血管死を除外した解析の結果も同様であり〔第4四分位群でHR0.77(同0.60~0.98)、傾向性P=0.012〕、ベースライン時点の健康状態が結果に影響を及ぼしている可能性は低いと考えられた。

 一方、パンの摂取量は男性の心血管死リスクと有意な関連がなかった。麺の摂取量は調整因子が年齢のみの場合、摂取量が多いほど心血管死リスクが高いという関連が見られたが(傾向性P=0.034)、前記の全ての因子で調整後は有意性が消失した。

 女性に関しては、米、パン、麺のいずれの摂取量も、心血管死リスクとの有意な関連が認められなかった。

 以上より著者らは、「米の摂取量が多いことが日本人男性の心血管死リスクの低さと関連している」と結論付けている。この背景として、「米摂取量が、健康的な食品とされる大豆や海藻の摂取量と正相関していることの影響が考えられる」という。ただし、「それらの摂取量を調整後にもなお、心血管死リスクの低さとの有意な関連が維持されており、米に含まれている食物繊維やビタミンB6が男性の心血管リスクに対して保護的に働くのではないか」との考察が加えられている。

 なお、女性ではこの関連が有意でないことに関しては、「男性は米摂取量と菓子摂取量が逆相関するのに対して女性では正相関することや、米や炭水化物の高摂取と糖尿病や脂質代謝異常との関連が女性は男性より大きく表れることなどの影響ではないか」と述べられている。

[2022年7月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら