イソフラボンの摂取量が多い女性は頭痛が少ない―東京医科歯科大学

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/06/20

 

 イソフラボンの摂取量が多い閉経期以降の女性は、頭痛が少ないことが明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に3月14日掲載された。

 イソフラボンは大豆などのマメ科の植物に多く含まれている栄養素であり、抗酸化作用に加えて女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用を持つことから、“植物性エストロゲン”と言われることもある。これまでの研究から、女性の健康を保護するように働く可能性が示唆されている。

 一方、頭痛は女性に多い症状で、特に閉経期の更年期症状の一つとして現れやすい。頭痛の起こりやすさの一因として食事スタイルの関与を指摘した研究報告があるが、閉経期の頭痛と栄養素摂取量との関連はよく分かっていない。寺内氏らは、同大学病院の更年期外来受診者を対象とする横断研究により、その関連の有無を検討した。

 更年期外来で実施されている健康栄養教育プログラムの参加者から、ホルモン補充療法を受けている人、年齢が40歳未満または60歳以上の人、および解析に必要なデータが欠落している人を除外した409人の女性(平均年齢50.1±3.8歳)を解析対象とした。

 頭痛の頻度を「月に1回以下」、「週に1~2回」、「週に3~4回」、「ほぼ毎日」の中から四者択一で選択してもらったところ、14.7%が「ほぼ毎日」と回答。この14.7%を「頻繁な頭痛のある群」、前三者を対照群として、生活習慣、閉経状態(閉経前/閉経期/閉経後)、血管運動神経症状(寝汗やホットフラッシュなどの更年期症状)、精神症状、および栄養素の摂取量などを比較した。

 その結果、頻繁な頭痛のある群は、血管運動神経症状や不眠症、不安、うつレベルを表すスコアが対照群に比べて有意に高いことが分かった。一方、年齢や閉経状態、BMI、体脂肪率、喫煙・飲酒・運動習慣、基礎代謝量、体温、カフェイン摂取量などは有意差がなかった。

 栄養素摂取量については、検討した43種類の栄養素のうち、主要栄養素と大半の微量栄養素は有意差がなく、イソフラボンとビタミンKのみ摂取量に有意差が見られ、いずれも頻繁な頭痛のある群の方が少なかった。それらの摂取量は以下のとおり。イソフラボンは頻繁な頭痛のある群が20.7±15.7mg/1,000kcal/日、対照群が24.8±14.5mg/1,000kcal/日(P=0.009)、ビタミンKは同順に198±149μg/1,000kcal/日、209±101μg/1,000kcal/日(P=0.044)。

 多変量ロジスティック回帰分析により、イソフラボンの摂取量は頻繁な頭痛の独立した有意な負の関連因子として抽出された〔1mg/1,000kcal/日多いごとにオッズ比(OR)0.974(95%信頼区間0.950~0.999)、P=0.036〕。ビタミンKは有意な関連因子でなかった。栄養素摂取量以外では、不眠症と血管運動神経症状が頻繁な頭痛とそれぞれ独立して関連しており、不安やうつレベルのスコアは有意でなかった。

 次に、閉経前(過去3カ月間に定期的な月経あり)と、閉経期(過去3カ月間に月経がないか不規則)~閉経後(過去12カ月間に月経なし)に層別化して検討。すると、閉経期~閉経後の群では全体解析の結果と同様に、頻繁な頭痛の有無によりイソフラボンの摂取量に有意差が認められた(P=0.011)。しかし閉経前の群では、頻繁な頭痛の有無でイソフラボン摂取量に有意差は認められなかった(P=0.391)。

 この結果を基に著者らは、「閉経期以降の女性の頭痛の頻度は、イソフラボンの摂取量と逆相関している。イソフラボンの豊富な食事が中年期以降の頭痛を抑制する可能性がある」と結論付けている。またその機序として、既報研究を基に、「イソフラボンのエストロゲン様作用が更年期の血管運動神経症状や不眠症を抑制することを介して、頭痛を軽減するという経路が想定される」と考察。ただし本研究ではイソフラボンの摂取量と頻繁な頭痛との独立した関連が示されたことから、「イソフラボンの抗酸化作用やエストロゲン様作用が、頭痛抑制に直接寄与するとも考えられる」と付け加えている。

[2022年5月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら