30分未満の昼寝で認知機能低下が緩やかに―新潟大

昼寝をする習慣のある高齢者は認知機能低下のリスクが低いという結果が報告された。ただしこの関連は、昼寝の時間が1日30分未満の人でのみ有意とのことだ。新潟大学大学院医歯学総合研究科環境予防医学分野の中村和利氏らの研究結果であり、詳細は「BMC Geriatrics」に8月28日掲載された。
これまでにも、昼寝の習慣と認知症リスクとの関連性を示す横断研究の結果が報告されている。しかし横断研究はある一時点の調査のため、因果関係は不明のまま残されていた。それに対して今回発表された研究は、同一対象者を5年間追跡するという縦断研究の結果であり、30分未満の昼寝と認知機能低下が少ないことの間に因果関係が存在する可能性を示唆するもの。
この研究では、新潟県小千谷市の3地域に住む介護保険を利用していない65歳以上の高齢者592人のうち、90.4%にあたる535人がベースライン検査を受けた。そのうち認知機能が正常と判定された509人(95.1%)を5年間追跡。追跡調査には371人(72.9%)が参加した。このほか、追跡調査には参加しなかったものの、医療機関で認知症と診断されていた18人も解析対象に含め、最終的な解析は389人(平均年齢74.6±6.4歳)で行われた。
ベースライン調査および追跡調査のいずれも、トレーニングを受けた看護師が対象者の自宅を訪問し、認知機能を評価するとともに、健康状態や生活習慣・環境、昼寝を含む睡眠習慣、疾患既往歴などを聞き取り調査した。認知機能は30点満点の改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で評価し、ベースライン調査では21点未満を認知機能が低下していると判定し対象から除外。5年後の追跡調査では、ベースライン時点から3点以上低下していた場合を「認知機能が低下した」と判定した。
解析対象者は、ベースライン時点で平均年齢74.6±6.4歳、男性38.6%。HDS-Rスコアは26点以上が約8割を占めており(男性は79.3%、女性は84.8%)、性別による有意差はなかった。昼寝の時間は以下に記すように、男性より女性の方が有意に短かった(P=0.0098)。昼寝をしない人の割合は男性32.7%、女性43.9%、30分未満の昼寝をする人は同順に22.0%、27.4%、30分以上1時間未満は24.5%、15.2%、1時間以上は20.8%、13.5%。
5年後の追跡調査で106人(27.3%)が、「認知機能が低下した」と判定された。認知機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、飲酒・喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脳血管疾患の既往、ベースライン時のHDS-Rスコア、就労の有無、就床時刻、睡眠時間、睡眠薬の使用など)で調整後、30分未満の昼寝の習慣がある人は認知機能低下リスクが有意に低いことが明らかになった。
具体的には、昼寝の習慣がない人と比較して、30分未満の昼寝の習慣がある人の認知機能低下のリスクは半分以下だった〔オッズ比(OR)0.47(95%信頼区間0.23~0.96)〕。ただし、昼寝の時間が30分以上の人の認知機能低下リスクは、昼寝の習慣がない人と有意差がなかった〔30分以上1時間未満の人はOR0.79(同0.40~1.58)、1時間以上の人はOR1.05(同0.51~2.13)〕。
30分未満の昼寝と認知機能低下リスクとの間に関連があるのに対して、夜間の睡眠時間は有意な関連が認められなかった(傾向性P=0.7540)。ただし、就床時刻が遅いことは、認知機能低下リスクの低さと関連があった(傾向性P=0.0480)。なお、昼寝の時間と就床時刻との間に有意な関連はなかった(スピアマンの相関係数=0.082、P=0.1036)。このほか、高齢であること(傾向性P<0.0001)や、就労していないこと〔就労者に対してOR1.78(同1.03~3.07)〕は、認知機能低下リスクと有意に関連していた。
著者らは本研究を、「短時間の昼寝を取る習慣のある高齢者の認知機能低下のリスクが小さくなることを示した初の研究」と位置付けている。この関連の機序については「不明」としながらも、「睡眠中に脳内のアミロイドβが脳内リンパ系を介して除去されるという報告が増えている。長すぎない昼寝は睡眠の質を改善することなどにより、アミロイドβのクリアランスに好ましい影響を及ぼすのではないか」との考察を加えている。ただし、「臨床的に診断される認知症のリスクをも低下させ得るかという点や、就床時刻との関連について、さらなる研究が必要」としている。
[2021年9月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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