孤立している高齢者のメンタルを犬が救う?―大田区民での調査

提供元:HealthDay News

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公開日:2021/05/29

 

 社会的に孤立した生活の高齢者はメンタルヘルスが悪化しやすいことが知られているが、犬を飼っている人や過去に飼ったことのある高齢者は、そのリスクが低いという研究結果が報告された。一方、猫を飼うことには、そのような効果が認められなかったという。東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏らの研究によるもので、詳細は「Animals」に2月24日掲載された。

 ペットを飼うことによるメンタルヘルスへの影響を検討した研究は少なくないが、社会的に孤立した状態の高齢者での研究は少ない。池内氏らは、そのような高齢者でもペットを飼うことのメリットがあるとの仮説を立て、東京都大田区の住民を対象に行われている「大田元気シニアプロジェクト」のデータを用いて以下の検討を行った。

 2016年8月に大田区在住の65~84歳で要介護状態でない高齢者1万5,500人にアンケートを郵送。得られた回答1万1,925件(回答率76.9%)から、記載内容に不備のあるものなどを除き、9,856人分の回答を解析対象とした。対象者の平均年齢は79.9±5.5歳、50.1%が女性であり、19.6%は独居だった。また93%以上の人は、移動や買い物、金銭管理などを自分自身でできると回答した。

 「友人や隣人と会ったり外出したりする頻度」、「電話で友人や隣人と話す頻度」などの4つの質問に対する全ての回答が「週に1回以下」だった場合に、「社会的に孤立している」と定義すると、家族と同居している人でのその割合は29.7%、独居の人では25.3%だった。

 メンタルヘルス状態は、世界保健機関による指標(WHO-5)で評価した。これは主観的な幸福感を25点満点でスコア化するもので、点数が低い場合にうつ傾向が強いと判定される。本研究では13点未満をメンタルヘルスが不良と定義したところ、27.7%がこれに該当した。

 ペットの飼育経験については、14.1%が現在、犬または猫を飼っており、29.7%は過去にいずれかを飼っていた時期があり、56.2%は犬や猫を飼ったことがなかった。

 これらのデータを基に、社会的孤立やペットの飼育経験とメンタルヘルス状態との関連を、多重ロジスティック回帰分析により検討した。なお、メンタルヘルス状態に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、独居/同居、収入、居住地域)は調整した。

 まず犬の飼育経験の有無で比較すると、犬の飼育経験があり社会的に孤立している高齢者に比べ、犬の飼育経験がなく社会的に孤立している高齢者は、メンタルヘルス不良の起こる可能性が有意に高いことが明らかになった〔オッズ比(OR)1.22、95%信頼区間1.03~1.46〕。その一方で、猫の飼育経験の有無で比較した場合、メンタルヘルス不良の起こる可能性に有意な差はなかった(OR1.11、同0.90~1.37)。

 なお、社会的に孤立していない高齢者では、犬や猫の飼育経験の有無にかかわらず、メンタルヘルス不良に該当する確率が、ペットの飼育経験があり社会的に孤立している高齢者より有意に低かった。

 この結果を基に著者らは、「犬の飼育経験がある社会的に孤立した高齢者のメンタルヘルス状態は、飼育経験がない人よりも良好と言える」と結論付けている。なお、猫の飼育経験と犬の飼育経験とで異なる結果となった理由については、犬を散歩させる習慣がメンタルヘルスに好影響をもたらす可能性や、犬は人間との豊かな意思疎通が可能であることが関係しているのではないかと考察している。

[2021年4月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら