糖尿病予備群もがん死のリスクが高い―日本人対象の職域多施設研究

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2021/03/23

 

 糖尿病患者は、がんによる死亡リスクが高いことが近年注目されている。では、糖尿病予備群はどうだろうか?どうやらその答えは“YES”のようだ。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部のZobida Islam氏、溝上哲也氏らの職域研究チームが行ったコホート研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に1月13日掲載された。

 糖尿病は、心血管疾患やがんの発症リスク要因であり、それらによる死亡や全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクを高める。血糖値が高いものの糖尿病と診断されるほどではない前糖尿病(糖尿病予備群)については、心血管疾患の発症リスクとの関連が示唆されているものの、全死亡やがん死・心血管死のリスクを高めるか否かははっきりしていない。

 前糖尿病には複数の診断基準があり、先行研究ではそれぞれ異なった定義が用いられている。このため、どの基準による前糖尿病が死亡リスクに、より強く関連するかは明らかでなかった。また、前糖尿病と死亡リスクとの関連は主に欧米から報告されており、アジア人のデータは限られていた。今回の研究では、主に民間企業の従業員を対象とした職域多施設研究「J-ECOHスタディ」において、HbA1cと空腹時血糖により2つの代表的な基準で前糖尿病を定義し、それらと死亡リスクとの関連を比較・検証した。

 2010~2011年度に職場健診を受けた10社、10万3,946人から、20歳未満や空腹時血糖のデータのない人を除いた6万2,785人を2019年度まで追跡。ベースライン時の前糖尿病の有病率は、米国糖尿病学会(ADA)の基準(空腹時血糖100~125mg/dLまたはHbA1c5.7~6.4%)では38.4%、世界保健機関(WHO)/国際専門委員会(IEC)の基準(空腹時血糖110~125mg/dLまたはHbA1c6.0~6.4%)では12.8%だった。また、糖尿病の有病率は7.4%だった(糖尿病の診断基準は同一)。

 最大7年の追跡中に229人が死亡。うち、がん死が97人、心血管死が57人だった。

 年齢、性別、勤務先、BMI、喫煙、高血圧、脂質異常症で調整後、ADA基準で定義した前糖尿病の正常血糖に対する全死亡リスクはHR1.53(95%信頼区間1.12~2.09)と有意に高かった。死因別に見ると、がん死はHR2.37(同1.45~3.89)と、前糖尿病との関連がはっきりしていた。その一方で心血管死はHR1.00(同0.52~1.93)であり、有意な関連はなかった。

 前糖尿病をWHO/IEC基準で定義した場合も、全死亡はHR1.46(同1.02~2.09)、がん死はHR2.03(同1.24~3.32)、心血管死はHR0.93(同0.42~2.08)と、ADA基準での解析と同様の関連が認められた。

 糖尿病については、全死亡(HR2.66、1.76~4.03)や、がん死(HR2.54、同1.25~5.15)に加え、心血管死(HR2.74、同1.29~5.81)の有意なリスク上昇が認められた(ADA基準での解析)。正常血糖をWHO/IEC基準で定義した場合も、ADA基準での解析結果とほぼ同じであった。

 まとめると、糖尿病は全死亡、がん死、心血管死のリスク上昇と関連していた。前糖尿病は全死亡、がん死のリスク上昇と関連していたものの、心血管死との関連は認めなかった。著者らは今回の研究を、「2つの国際的基準で前糖尿病を定義し、死亡リスクとの関連を定量的に比較したアジアで初めての研究」と位置付け、その結果から、「労働者の死亡リスクを下げるために、糖尿病だけでなく、前糖尿病の予防と管理の必要性を支持するデータが得られた」と述べている。

[2021年2月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら