糖尿病性腎臓病の原因物質「フェニル硫酸」を同定―腸内細菌の酵素が新たな治療標的となる可能性、東北大

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HealthDay News

糖尿病性腎臓病の原因物質「フェニル硫酸」を同定のイメージ

 糖尿病に起因する腎臓病(糖尿病性腎臓病;DKD)は、腸内細菌が産生に関与する「フェニル硫酸」と呼ばれる代謝物が原因物質の一つであり、腎症増悪の予測因子でもあり得ることを、東北大学大学院病態液性制御学分野教授の阿部高明氏らの研究グループが動物実験と臨床研究で突き止めた。フェニル硫酸をマーカーとして測定し、その値が高い患者には、腸内細菌の酵素の働きを阻害する薬剤の使用や腸内細菌叢のバランスコントロールがDKDの新たな治療につながると期待されるという。研究の詳細は「Nature Communications」4月23日オンライン版に掲載された。

 日本国内の糖尿病患者は約1300万人に上ると推計される。このうち約3割はDKDを発症し、末期腎不全に進行すると透析治療や腎移植を必要とすることから、予防策の確立が喫緊の課題とされている。しかし、推算糸球体濾過量(eGFR)や尿中アルブミンといった既存の検査項目ではDKDの発症や進展の予測は難しいのが現状だ。

 そこで、阿部氏らはまず、ヒト腎臓のみに存在し老廃物を尿中に排泄する役割を持つトランスポーターSLCO4C1が働くように遺伝子改変したラットを用いて、DKDを発症すると蓄積し、SLCO4C1で排泄させると進行を抑えられる代謝物を探索する実験を行った。その結果、糖尿病を誘発した野生型ラットでは血中濃度が上昇する一方、遺伝子改変ラットではその濃度が低下する代謝物としてフェニル硫酸を同定した。

 このフェニル硫酸をさまざまなDKDモデルマウスに経口投与した結果、全てのモデルマウスで糸球体のバリアの働きをする細胞であるポドサイトや基底膜が障害され、アルブミン尿が増加することが分かった。

 次に、阿部氏らは糖尿病患者362人を対象とした岡山大学の臨床コホート(U-CARE)データを用いて、フェニル硫酸の血中濃度と臨床パラメーターとの関連を調べる追跡調査を実施した。その結果、糖尿病患者ではフェニル硫酸の血中濃度が高く、その値はアルブミン尿と有意に相関することが分かった。さらに微量アルブミン尿期の患者87人を対象に分析したところ、フェニル硫酸の血中濃度は腎機能や血糖値とは独立して、2年後のアルブミン尿増悪の予測因子であることも明らかになった。

 フェニル硫酸の産生に関与する腸内細菌のみが持つチロシン・フェノールリアーゼ(TPL)という酵素を阻害する薬(TPL阻害薬)を糖尿病モデルマウスに経口投与したところ、モデルマウスのフェニル硫酸の血中濃度は低下し、アルブミン尿が減少することが分かった。さらに、腎不全マウスにTPL阻害剤を投与すると、フェニル硫酸の血中濃度が下がるとともに腎不全が改善した。

 これらの結果を踏まえ、阿部氏らは「腸内細菌が産生に関与するフェニル硫酸はDKDの原因物質の一つであり、かつ増悪因子でもあることが示された」と結論。その上で、「糖尿病患者ではフェニル硫酸を測定してみる必要があり、その血中濃度が高い患者では、フェニル硫酸の産生に関わる腸内細菌が持つTPL酵素を阻害することや、プロバイオティクスなどの使用がDKDだけでなく腎不全の進行を抑制する新しい治療となる可能性がある」と期待を示している。

[2019年5月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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