身体活動が物質使用障害の治療に役立つ可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/06/19

 

 飲酒による問題が生じているのに飲むのをやめられない状態や、違法薬物を用いている状態を指す「物質使用障害」から立ち直ろうとしている人に対して、身体活動がそれを後押しするように働くことを示唆するデータが報告された。ケベック大学およびモントリオール大学(カナダ)のFlorence Piche氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に4月26日掲載された。週に3日、1時間の中強度運動で有効の可能性があるという。

 Piche氏らの研究は、物質使用障害に対する身体活動の効果を検討した43件の研究の報告を総合的に解析したもの。その結果、治療中の身体活動量の多さが、対象物質の使用量減少と関連していることを見いだした。同氏は、「私はかつて物質使用障害の人たちのためのセラピーハウスに運動生理学の専門家として勤務していたが、その時、この領域では運動療法の有効性があまり考慮されていないことに気付いた」と、研究の動機を語っている。

 実際、過去の多くの研究は「禁煙」に対する身体活動の有効性に焦点を当てていたり、それ以外の研究も1種類の物質(例えばアルコールのみ)の使用障害に対する身体活動の有効性を検討していて、患者の多くが複数の物質への依存状態にあるという実態に即していない研究が多いとのことだ。そこでPiche氏らは今回、タバコ以外の多くの精神作用物質の使用障害に対する身体活動の影響をシステマティックレビューにより検討し、有効と考えられるとの結論を示した。同氏によると、物質使用障害の治療における身体活動による効果発現のメカニズムは、「複数の経路を介したものだと考えられる」という。

 効果を得るための身体活動量は、それほど多いものでないことも分かった。多くの研究で、週に3回、約1時間の中強度運動を、約3カ月間継続することの影響を検討した結果として、有効性を示していた。では、身体活動量をより増やしたとしたら、より大きな効果を得られるのだろうか? Piche氏は、「その疑問に対しては、どの研究も答えを示していない」と話す。

 解析対象となった43件の研究には、合計3,135人が参加していた。全体の約4割は米国からの報告で、約4分の1が中国からの報告だった。研究参加者には、アルコール依存状態の患者のほか、覚醒剤、コカイン、ヘロインなどの使用障害の患者が含まれていた。多くの研究で身体活動による物質使用の中止または使用量の減少が検討され、介入後の使用量の減少が報告されていた。また、身体活動による有酸素能力の向上や抑うつ症状の改善も報告されていた。

 本研究には関与していない、米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、「身体活動を行うと、多くの人は『健康になる』という目的意識が高まるとともに、多幸感のような感覚が生まれることもある。本研究のみでは因果関係を述べることはできず、このトピックに関するさらなる研究が求められるものの、物質使用障害から立ち直ろうとしている人々に対して身体活動は、確かに無視できない効果があるようだ」と話している。

[2023年4月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら