高サポートのスポーツブラ着用でランニングパフォーマンスが向上

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2023/05/24

 

 良質なスポーツブラの長所は、そのサポート力だけではないようだ。サポート力の高いスポーツブラを着用している女性ではランニングパフォーマンスも向上する可能性が、新たな研究で示唆された。米メンフィス大学ブレストバイオメカニクス研究センターのDouglas Powell氏らによる研究で、「Frontiers in Sports and Active Living」に4月21日掲載された。

 Powell氏は、「この研究は、胸部のサポートと全身のバイオメカニクスに関する一連の研究調査の一つだ。われわれは、運動中の女性に生じる乳房の痛みを軽減するための方法を見つけたかった」と話している。

 この研究では、趣味でランニングを行っている18〜35歳の女性13人を対象に、ランニング中の膝関節のスティフネス(硬さ)に対する胸部サポートの影響を調べた。対象者には、1)スポーツブラの着用なし、2)サポート力の低いスポーツブラを着用、3)サポート力の高いスポーツブラを着用、の3つの条件下でトレッドミルでのランニングを3分間行ってもらった。10台のカメラから成るモーションキャプチャシステムと床反力を測定できるトレッドミルで試験参加者の運動力学的特性や床反力を調べ、また、動作解析ソフトのVisual3Dにより各条件下での膝関節の可動域やモーメントなどを、さらにカスタムソフトウェアで立脚期の膝関節スティフネスや胸部の変位などを計算した。

 膝関節スティフネスは力が加わったときの動きに対する膝の抵抗力を示す指標である。Powell氏らは過去の研究で、トレッドミルでのランニングでは、サポート力の高いスポーツブラの着用時にはサポート力の低いスポーツブラ着用時と比べて、ケイデンス(1分当たりの足の回転数)や歩幅、接地数は同じでも、酸素消費量が7%程度減り、ランニングエコノミーが改善することを報告している。

 実験の結果、胸部のサポートレベルが高くなると、関節可動域が狭まり、膝関節スティフネスが高くなることが明らかになった。対照条件(サポートなし)と比較して、低サポートは関節スティフネスの2%の増加、高サポートは5%の増加と関連していた。こうした結果と、Powell氏らの以前の研究結果を総合して、研究グループは、サポート力の高いスポーツブラの装着により、女性のランニングパフォーマンスは7%向上し得ると見ている。

 Powell氏は、「今回の研究結果は、ランニング時の胸部のサポートは胸の動きだけでなく、体全体に影響を及ぼすことを示している。適切に胸をサポートせずにランニングを行うことは、パフォーマンスの低下やけがのリスクの増加、さらには背中や胸の痛みなどの慢性的な痛みの発生につながる可能性がある」とジャーナルのニュースリリースで述べている。

 Powell氏は、「今回の研究結果と過去の研究結果を合わせて考えると、スポーツブラは単なるアパレルとしてだけでなく、パフォーマンスの向上とけがのリスクの低減を両立できるスポーツ用品として、女性の健康に一役買っていると考えるべきだ」と述べている。

[2023年4月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら