2型糖尿病の子どもの4人に1人は肥満でない

子どもの2型糖尿病は、小児肥満と関連付けられて語られることが多い。しかし世界的に見ると、2型糖尿病の患児の4人に1人は肥満ではないとする研究結果が報告された。特にアジアはほかの地域に比べて、肥満を伴う患児の割合がより低いという。マクマスター大学(カナダ)のConstantine Samaan氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に12月15日掲載された。同氏は、「この結果は、子どもの2型糖尿病は多様性の高い疾患であることを示している」と述べている。
Samaan氏らは、小児2型糖尿病における肥満の有病率を報告した研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を実施。MEDLINE、Embase、CINAHL、Cochrane Library、Web of Scienceに2022年6月16日までに収載され、少なくとも10人以上の小児を研究対象としている論文を検索。53件(研究対象者数の合計8,942人)の研究報告をメタ解析の対象とした。
その結果、2型糖尿病患児の肥満有病率は75.27%(95%信頼区間70.47~79.78)であり、2型糖尿病診断時点の肥満有病率(解析対象者数4,688人)は77.24%(同70.55~83.34)であることが明らかになった。性別にみると男児は女児よりも肥満を伴っていることが多かった〔オッズ比2.10(1.33~3.31)〕。また人種別ではアジア人の肥満有病率が64.50%(53.28~74.99)と低く、白人は89.86%(71.50~99.74)と高かった。
肥満を伴わない小児2型糖尿病が少なくないという結果が得られたことから、Samaan氏らはその理由を考察し、いくつか候補を挙げた。一つの可能性は、肥満によって糖尿病発症後、診断が遅れて病態が進行した結果として体重が減少した子どもが含まれているというものであり、もう一つの可能性として、遺伝因子などが関与した「その他の型の糖尿病」が2型糖尿病と診断されているという考え方が候補に挙がった。しかし同氏によると、いずれの考え方も、今回の研究で示された結果をうまく説明できなかったという。現時点で同氏らは、非肥満でもインスリン抵抗性を生ずる、またはインスリンを十分産生できない子どもが一定数存在するのではないか、との仮説を立てている。
子どもの糖尿病と言えば、かつては1型糖尿病を指すことが多かった。しかし米国では過去数十年の間で、1型と2型、双方の小児糖尿病が増加してきた。米疾病対策センター(CDC)によると、20歳未満の2型糖尿病の患者数は2001年から2017年の間に95%増加し、2017年には米国の10~19歳の人口10万人あたり67人が2型糖尿病に罹患しているという。
本研究には関与していない、米シダーズ・サイナイ医療センターのBahareh Schweiger氏は、「報告された結果は、小児2型糖尿病の主要な原因が肥満であることを改めて認識させるものではあるが、それとともに、肥満以外のリスク因子が存在していることを示しており、臨床医はその点を念頭に置く必要がある」と述べている。同氏によると、肥満と判定されない程度の体重増加も2型糖尿病のリスクとなると考えられ、新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴う生活習慣の変化も、そのような傾向に影響を及ぼしている可能性があるという。また、「子どもの睡眠習慣、受動喫煙、ストレスレベルなどがエピジェネティックな影響、つまり塩基配列の変化を伴わない遺伝子的変化を引き起こしていないかという点も知りたいところだ」と同氏は述べている。
[2022年12月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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