喫煙者が年1回の肺がんスクリーニング検査を受けることで、肺がん生存率を大幅に改善できる見込みのあることが、国際的な大規模研究で明らかにされた。低線量CTスクリーニング検査で早期段階の肺がんが発見された場合の患者の20年生存率は80%であり、がんの種類によっては100%であることが示されたという。この知見は、北米放射線学会年次学術集会(RSNA 2022、11月27日〜12月1日、米シカゴ)で発表された。
米国肺協会(ALA)によると、肺がんの平均的な5年生存率は18.6%、早期発見される肺がんは全体の16%にとどまり、患者の半数以上が診断から1年以内に死亡するという。肺がんは、がんが小さいうちに発見、治療することで長期にわたる生存が見込める。しかし、肺がんのスクリーニング検査は十分に活用されているとはいえないと研究グループは話す。最近のALAの報告では、対象となる米国人のうちスクリーニング検査を受けているのは6%にとどまり、州によっては受診率が1%とかなり低い。
今回の研究を率いた米マウントサイナイ・アイカーン医科大学放射線学教授のClaudia Henschke氏は、スクリーニング検査の障壁をいくつか指摘している。「よく言われるのが偽陽性の多さと放射線被曝だが、被曝量はマンモグラフィ検査での被曝量よりも少ない」と同氏は言う。偽陽性についても、優れたプロトコルがあるため問題にはならないという。米国予防医療専門委員会(USPSTF)は、1日1箱の喫煙を20年以上続けているか、禁煙後15年以内の50~80歳の人に、年に1回のスクリーニング検査の受診を勧めている。
Henschke氏らは1992年にスクリーニング検査のベネフィットに関する国際的な研究(登録者数8万7,000人以上)を開始し、2006年時点で、スクリーニング検査によりがんを早期発見できた患者の10年生存率が80%であったことを報告している。今回の研究では、検査でがんが早期発見された1,285人を20年間追跡した結果、20年生存率は80%であることが判明した。肺結節の分類別に見ると、すりガラス状結節の139人と部分充実型結節の155人の20年生存率は100%、それ以外の充実型結節の患者での20年生存率は73%であった。ステージ1A(リンパ節への転移がなく、腫瘍サイズが30mm以下)の肺がん患者の生存率は、充実型であるか否かにかかわらず86%、腫瘍が10mm以下の場合は92%であった。
この研究には関与していない、米レイヒー病院・医療センターのAndrea McKee氏は、「この研究は、肺がんのスクリーニング検査がどれほど効果的であるかを明らかにした」と話す。Henschke氏とMcKee氏は、「課題は、より多くの喫煙者と元喫煙者にスクリーニング検査を受けてもらうようにすることだ」と話す。Henschke氏は、「肺がんスクリーニング検査は、有効性に関するデータが出てきたのが2011年以降、保険が適用されるようになったのは2016年以降と、比較的新しい検査であるため、人々にとってなじみが薄い」と説明する。一方McKee氏は、大手たばこ会社が肺がんスクリーニング検査に関する率直な会話を阻んでいる現状や、肺がんに対するスティグマから、「自分が肺がんになるのは自業自得だ」という考えを持っている喫煙者がいることも指摘している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[2022年11月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら