余った薬が子どもの健康リスクに

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/11/30

 

 飲み残した薬の処分の仕方が分からずに、家の中に置いたままにしている人が少なくないという実態が報告された。研究者らは、それらを幼児が口にした場合に健康被害が生じるリスクがあるとして、注意を喚起している。

 米ミシガン大学のSarah Clark氏らは、家庭内での残薬の実態を把握するため、全国規模の調査を実施。その結果、約半数の世帯の保護者が、「処方薬の残薬がある」と回答した。「薬が不要になったり、あるいは有効期限が切れた薬さえも、多くの人がそれらを処分せずに保管していることが明らかになった。それらを子どもが誤って飲み込んだ場合、健康上のリスクが生じかねない」とClark氏は語っている。同氏によると、子どもたちの残薬の服用は意図しない中毒の主要な原因の一つであるばかりか、年長の子どもたちの場合には、仲間に渡したり意図的に誤った使い方をするリスクもあるという。

 この調査は2022年8~9月に、18歳以下の子どもを持つ2,023人の保護者を対象に実施され、家庭での市販薬や処方薬の取り扱いに関する多岐にわたる質問がなされた。結果の詳細は、同大学のサイト内に掲載されている。それによると、例えば、有効期限が切れた市販薬は効果がなくなると回答した保護者は半分に満たないことが分かった。さらに、そのような薬は安全でないと考えている保護者は約20%に過ぎなかった。

 「子どもに何かしらの症状が現れて薬が必要になるまで、保護者はその薬の有効期限が切れていることに気付かないことが多いのではないか。そうだとすると、そのような状況になった時、保護者は新しい薬を買いに走るか、期限切れの薬を子どもに与えるか、どちらかを選択しなければならない」とClark氏は述べる。そして、調査の結果は、保護者の3分の1強は「子どもに有効期限切れの薬を与えることは絶対に許されない」と答え、他の3分の1は「有効期限が切れてから3カ月以内なら与えても問題ない」とし、ほぼ同数の保護者は「有効期限を6カ月以上過ぎた薬でも問題ない」と答えた。

 この結果についてClark氏は、「医薬品は時間の経過とともに有効性を失う。そのために、製造業者がその医薬品が安全で効果的であることを保証する期間として、有効期限が設けられている。期限切れの薬を子どもに与えようとしている親は、それが本当に有効なのか疑問を持つべきだ」と述べている。

 また、60%以上の保護者が、市販薬よりも処方薬の残薬の取り扱いに注意を払っていると答えていたが、約4人に3人はその適切な方法を知らないと回答し、約7人に1人はトイレに流していた。Clark氏によると、残薬の最も安全な処分方法は、医療機関や薬局に持参すること、もしくは米麻薬取締局が定期的に行っている全国薬物回収デーの際に、定められた場所に持ち込むことだという。「未使用の薬または期限切れの薬は公共の安全に関わる問題であり、子どもたちに健康上のリスクをもたらす。子どもが病気になるリスクや環境への悪影響を減らすために、不要になった薬は保護者が適切に処分することが重要」と同氏は強調する。

 一方、残薬を減らすためには、処方箋に書かれている薬を薬局で分割調剤してもらったり、市販薬を買いだめしないといった方策が考えられる。また研究者らは、薬は服用方法と有効期限の情報を含めて元のパッケージに保管し、年に2回は有効期限が切れていないかを確認すると良いとアドバイスしている。さらに、特に年長の子どもがいる家庭では、鎮痛剤や睡眠薬などを子どもが持ち出している可能性にも注意が必要だという。

[2022年10月24日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら