食事療法の自己評価は実際より高くなりがち

米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)における、米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のJessica Cheng氏らの報告によると、何らかの食事療法に取り組んでいる人は、自分の食生活を実際よりも健康的だと過大評価しがちのようだ。減量のために食事療法を1年間続けた人に、自分の食事スタイルを評価してもらい医療者の評価と比較した結果、両者の評価が一致していたのは4人に1人にとどまり、さらに1年前からの改善幅が一致していたのはごくわずかだったという。
「米国成人の約半数が体重を減らそうとしている。実際に、果物や野菜、全粒穀物を増やしたり、肉は赤身肉にしたり、乳製品は低脂肪のものに変える人も少なくないが、その変化を過大に捉える可能性のあることが、これまでにも指摘されていた」とCheng氏はこの研究の背景を語っている。そこで同氏らは、個人の食事スタイルについての自己認識が医療者の評価とどの程度乖離しているのかを調べるため、減量に取り組んでいる米国ピッツバーグ地域の居住者116人(年齢35~58歳)を対象とする研究を行った。
この研究の参加者は、栄養士と1対1で栄養について指導を受けた後、フィットネスアプリ(Fitbit)を利用して1年間、毎日口にした食品を全て記録した。また、この研究の開始時点、中間時点、および終了時点には、24時間の食事を思い出すアンケートに回答するとともに、開始時点と終了時点で自分の食生活の質を自己評価した。一方、研究者は、アプリの記録と食事アンケートの回答を基に、対象者の健康食指数(HEIスコア)を算出。HEIスコアは0~100点で評価され、米国の食事ガイドラインに順守しているほど高得点になる。
研究参加者の自己評価と研究者が計算したHEIスコアを比べた結果、両者が一致していたのは27%だった。Cheng氏は、「参加者の約4人に1人のみが自分の食事スタイルを正しく認識していた。つまり、4人に3人は実際の評価と自己認識がずれていた。これは、自分の食事スタイルは健康的なものだとの過大評価に起因している」と総括している。
研究結果をより詳しく見ると、自己評価に基づくHEIスコアの平均は67.6であるのに対して、研究者が計算した平均スコアは56.4であり、全体的に10~15点ほど高く過大評価している人が多かった。また、1年間のHEIスコアの改善幅の評価が一致したのは、わずか13%しかいなかった。Cheng氏によると、研究参加者のHEIスコアの変化は、実際には平均1〜2点に過ぎないにもかかわらず、自己評価では18~19点も改善したと見積もられていたとのことだ。そして、「多くの人は、健康的な食事スタイルとはどのようなものかを理解している。しかし実行が伴っていない。この乖離の解消には、より的確なコーチングと評価ツールが必要と言える」と述べている。
この乖離の解決策の一案としてCheng氏は、米農務省が公開している食事管理アプリ「MyPlate Plan」を、比較的手軽な手段として紹介している。「MyPlate Planを使うことで、自分が何を食べるべきかを視覚的に理解できる。現在では、ウェアラブルデバイスに、歩数や睡眠、心拍数などの正確な測定を期待できるが、それと同じように食事についても、正確な食事管理が可能なアプリにその役割を担わせることができるのではないか」と同氏は話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[2022年10月31日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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