睡眠の時間や質が緑内障リスクを左右する可能性

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/11/29

 

 睡眠時間が短過ぎたり長過ぎることや、睡眠中にいびきをかくといった症状から把握される睡眠の質の低下が、緑内障のリスクを高める可能性を示すデータが報告された。四川大学西中国病院(中国)のHuan Song氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に11月1日掲載された。

 緑内障は視神経が障害される病気で、治療が不十分だと視野の異常が進んでしまい失明に至る。失明の主要原因であり、日本ではその原因の第1位を占めている。また2040年までに世界中で1億1200万人が、緑内障によって視覚に何らかの影響を受けるとの予測もある。

 緑内障の進行は眼圧(眼球内の圧力)が高いほど速い。その眼圧を左右する因子の一つとして、睡眠が挙げられる。睡眠中は眼圧が高くなることや、睡眠時間の長短が眼圧と関係していることなどが既に報告されている。そこでSong氏らは、睡眠時間や睡眠の質が緑内障リスクと関連がある可能性を想定し、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて検討を行った。

 2006~2010年にUKバイオバンクに登録された人の中から、緑内障患者やデータ欠落者を除外した40万9,053人(平均年齢57.0±8.09歳、女性55.05%)を10.7±1.63年追跡したところ、8,690人が新たに緑内障と診断された。緑内障を発症した群はそうでない群より高齢で(62.2対56.9歳)、男性(47.4対44.9%)、喫煙歴のある人(48.6対45.3%)が多く、また高血圧(12.9対7.6%)や糖尿病(4.4対2.0%)の患者が多かった。

 緑内障リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、飲酒・喫煙・運動習慣、人種/民族、教育歴、高血圧、糖尿病、タウンゼント剥奪指数)で調整後、以下のように、睡眠時間、および睡眠の質の低下を表すさまざまな症状が、緑内障発症と有意に関連していることが明らかになった。

 まず睡眠時間については、7~9時間の人に比べてそれより短い人や長い人は8%リスクが高く〔ハザード比(HR)1.08(95%信頼区間1.03~1.13)〕、不眠症の症状がある人は12%ハイリスクだった〔HR1.12(同1.07~1.17)〕。また、いびきをかく人〔HR1.04(同1.00~1.09)〕や、日中に眠気を感じることの多い人〔めったにない人に比べて時々ある人はHR1.06(同1.01~1.11)、頻繁にある人はHR1.20(1.07~1.34)〕もリスクが高かった。なお、クロノタイプ(朝型か夜型か)は有意な関連がなかった。

 睡眠習慣が緑内障リスクに影響を及ぼす可能性を示したこの研究結果について、Song氏らは、「横になっているときは眼圧が高くなりやすい。また、不眠症の場合は睡眠に関連しているホルモンの乱れも眼圧に影響を及ぼし得る」と、メカニズムの考察を加えている。さらに、不眠症に伴うことの多い抑うつや不安も、コルチゾール(ストレスホルモン)産生の調節不全を介して眼圧を上昇させる可能性があるという。加えて、睡眠時無呼吸症候群による睡眠中の低酸素状態が視神経にダメージを与えるという経路も想定されるとしている。

 ただし、本研究は観察研究であるため因果関係の証明にはならない。とは言え、緑内障リスクの高い人にとって、適切な睡眠の時間や質の確保が大切であることが示唆された。Song氏らは、「睡眠関連の行動は修正可能であるため、緑内障のリスクのある人に対する睡眠習慣への介入が、発症抑制につながる可能性がある。また、睡眠習慣に問題がある人に対しては、眼科的スクリーニングを行うといった対策が必要かもしれない」と述べている。

[2022年11月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら