1型2型ともに糖尿病はばね指のリスクと関連

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/02

 

 指が曲がった状態で動かしにくくなる、ばね指という症状が、糖尿病の人に多いことを示すデータが「Diabetes Care」11月号に掲載された。ルンド大学およびスコーネ大学病院(いずれもスウェーデン)のMattias Rydberg氏、Lars Dahlin氏らの研究によるもの。

 ばね指は、指を曲げるための腱とその結合組織の肥厚を特徴とする状態。それらの肥厚のために、指が手のひらに向かって曲がった位置に固定され、痛みを生じやすい。多くの場合、ステロイド注射で治療できるが、手術が必要になることもある。

 論文の筆頭著者であるRydberg氏は、「手の手術を行っている医師の間では、古くから糖尿病がばね指のリスク因子である可能性に気付いていた。ばね指の治療のために手術が必要とされる患者の20%以上は糖尿病患者かそのリスクの高い人だ」と語っている。ただし、糖尿病がばね指のリスクをどの程度押し上げるかは、十分に検討されていなかった。そこで同氏らは、同国の糖尿病レジストリと医療情報データベースをリンクさせて、糖尿病とばね指との関連を解析した。

 この解析対象には、18歳以上の1型糖尿病患者9,682人と2型糖尿病患者8万5,755人が含まれていた。1型糖尿病患者では、女性486人、男性271人、2型糖尿病患者では同順に1,143人、1,009人にばね指の診断の記録があった。年齢、BMI、糖尿病罹病期間、収縮期血圧を調整後、糖尿病の病型や性別にかかわらず、糖尿病患者にはばね指が多いことが示された。それぞれのオッズ比(OR)は以下の通り。1型糖尿病の女性1.26(P=0.001)、男性1.4(P<0.001)、2型糖尿病の女性1.14(P<0.001)、男性1.12(P=0.003)。なお、1型糖尿病患者では特に人差し指の症状が顕著だった。

 血糖コントロール状態とばね指リスクとの関連も明らかになった。具体的には、男性糖尿病患者ではHbA1cが6.5%未満の患者に比較し8.0%を上回っている患者は、5倍多くばね指と診断されていた。

 糖尿病がなぜばね指のリスクを高めるのかは分かっていない。理論的には、血糖値が高いほど腱と結合組織の双方が厚くなりやすくなると考えられる。ただし今回の研究は、そのような因果関係を証明できる研究デザインではない。Lars Dahlin氏は、「糖尿病患者に生じるばね指は、糖尿病でない患者に見られるばね指とは、恐らく異なるメカニズムも関与しているのではないか」と述べている。

 同氏らは現在、糖尿病を有することが、ばね指に対する手術治療の成績に影響を及ぼしているかどうかを検討することを計画している。Rydberg氏によると、「これまでのわれわれの経験では、ばね指の手術は有効で合併症もほとんどない。しかし、1型あるいは2型の糖尿病患者では、手術後に指が完全な動きと機能を取り戻すまで少し時間がかかるようだ」とのことだ。

 本研究によって、糖尿病がばね指のリスクにどの程度影響を及ぼすかが示された。今後の研究テーマの一つとしてRydberg氏は、「ばね指という症状を手掛かりに2型糖尿病のリスクを判断することが可能か、という検討も興味深い」と述べている。

[2022年10月24日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら