男性と女性、性欲が強いのはどちら?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/01

 

 驚く人はいないかもしれないが、男性の方が女性よりも性欲が強いことが、ザールラント大学(ドイツ)心理学部のJulius Frankenbach氏らの研究で示された。200件以上の研究データの解析から、男性の自己申告に基づく性欲は一貫して女性より強いことが明らかになったという。研究結果は、「Psychological Bulletin」に10月13日掲載された。

 Frankenbach氏らは今回、1996年以降に発表された211件の研究データを収集し、性欲の性差についてメタアナリシスを実施した。これらの研究には、14歳以上の男女62万1,463人が含まれていた。

 その結果、男性は女性よりも性欲が強いことが示され、その効果量の大きさ(差の程度)は中~大であることが明らかになった。また、男性では女性と比べて、セックスについて考えたり空想したりする時間や、性欲を覚える時間、自慰行為に費やす時間が長いことが示された。

 Frankenbach氏は、「われわれにとって予想外だったのは、国や年齢層、民族、性的指向の違いにかかわらず同様の結果が示されたことだ。性欲は女性よりも男性の方が強いというのは、普遍的な心理パターンと思われる」と話す。なお、同氏によると、男女間の性欲の差の程度は男女間の体重の差とほぼ同程度で、男女間の標準的な体格差と同じくらいである可能性が高いと説明している。

 ただ、この研究には弱点もある。人々が自分自身の性的な傾向について、必ずしも正直に話すとは限らないという点だ。Frankenbach氏は、「性に関することはセンシティブな話題だ。そのため、われわれは人々の回答が完全に正確ではない可能性も考慮した。実際、われわれのデータには、そうした正確性に欠けた回答も含まれていることを示すエビデンスがあった」と言う。

 その上でFrankenbach氏は、「例えば、自己申告に基づく性的パートナーの数は、女性よりも男性の方が多かったが、当然ながら、それはあり得ない。しかし、こうした回答バイアスは比較的小さく、それだけでジェンダー間に認められた性欲の強さの違いを全て説明することはできないとの結論に至った。つまり、われわれは実際に性欲の強さに男女差はあると考えているということだ」と説明している。

 この研究には関与していない、米ハーバード大学人間進化生物学部講師のCarole Hooven氏は、この研究の優れた点として、「性欲の強さに性差があるのかどうかを調べた多くの研究の結果を集めて調べ、まとめ、人々の回答のバイアスによる影響を調整しようとしたところ」を挙げている。

 ただ、Frankenbach氏らは例外があることも指摘している。例えば、女性の24~29%は「平均的な」男性と比べて性欲が強い可能性が示されたことに言及し、平均的な男性は女性と比べて性欲が強いとみられるが、「多くの男性と比べてセックスに夢中な女性も数多くいる」と付け加えている。

 では、性欲をもたらす要因は何なのだろうか?
 Frankenbach氏は、「社会規範や社会的役割、社会的学習に加え、遺伝学的、生理学的、生物学的な因子などの複雑な相互作用によって性欲がもたらされるのではないか」との見解を示している。

 一方、Hooven氏は文化の影響力の大きさを指摘し、「セクシュアリティの表現の仕方だけでなく、男女それぞれの適切な行動に関する考え方にも文化が影響を及ぼす」と説明。さらに、「これまでに極めて多くの研究がさまざまな地域で実施されたが、それらから得られた知見はいずれも、女性よりも男性の方が性欲は強いということに集約される。男性で多く分泌される男性ホルモンのテストステロンが、生涯にわたる男性の性欲に重要な影響を与えているものと思われる」と付け加えている。

 その一方でHooven氏は、「明らかにセックスを楽しんでいる女性もいること、また、こうした科学的な情報が、どのような行動が正しくて、どのような行動が間違っているのかの線引きには全く影響しないものであることを認識しておく必要がある」と強調している。

[2022年10月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら