肺がん患者が放射線療法を予定通りに受けなかった場合、治療の延長期間が長くなるほど早期死亡リスクが高まるが、一部の患者では、放射線量を上げて治療することでそれを埋め合わせることができる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米フォックスチェイスがんセンターのPeter Lee氏らによるこの研究結果は、米国放射線腫瘍学会年次総会(ASTRO Annual Meeting 2022、10月23〜26日、米サンアントニオ)で発表された。
この研究では、2004年から2017年の間に化学療法と標準的な線量(59.4〜66.6Gy)での放射線療法を同時に受けたステージIIIの非小細胞肺がん患者2万6,101人のデータが解析された。患者は、全治療期間(OTT)の延長日数によって、延長なし、1〜3日、4〜6日、7〜9日、10〜12日、13〜15日、16日以上に分類された。
計8,644人でOTTの延長が確認された(46.5%が1〜3日、18.6%が4〜6日、12.9%が7〜9日、6%が10〜12日、4.5%が13〜15日、11.2%が16日以上の延長)。OTT延長のなかった群と比べて延長のあった全ての群で死亡のハザード比(HR)の有意な上昇が認められた。HRは延長日数が増えるにつれ増加していた。
OTTが延長した患者のうち、3,809人はトータルで60Gy、1,924人は66Gyの照射を受けていた。OTTの1〜3日の延長では、60Gyの照射を受けた人と66Gyの照射を受けた人との間で死亡率に有意差は認められなかったが、OTTの4〜9日の延長では、前者で死亡リスクの有意な上昇が認められた(HR 1.2、P=0.0052)。しかし、OTT延長が10日以上になると、66Gyの照射を受けた人で認められた死亡リスクに対するベネフィットは、もはや確認されなかった(同1.16、P=0.065)。
Lee氏は、「OTTが10日以上延びた患者では、死亡リスクに対するベネフィットは得られなかったことから、延長期間がある点に達すると、高い線量でも逃した期間を埋め合わせることはできないということなのかもしれない」と述べている。
その上でLee氏は、「たいていの場合、われわれは治療の遅れた患者に、“1日休んだからといって、大きな問題にはならない。治療を追加して最終的に必要な線量を照射するので大丈夫”と言う。その一方で、実際には、処方通りに治療を受けるのが理想的で、治療を1回たりとも休むべきではないことをわれわれはよく知っている」と話す。
ただし、この研究では、治療の遅れと死亡との因果関係が示されたわけではない。研究グループは、治療に遅れが生じた患者は、治療開始時点から状態が悪く、肺がん以外の原因で死亡するリスクが高かった可能性もあると見ている。研究グループは今後、放射線療法に加えて手術と化学療法を受けた肺がん患者に関する研究を予定しているという。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[2022年10月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら