夜更かしする人は糖尿病や心臓病のリスクが高い?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/11/02

 

 就寝時刻が遅い人は2型糖尿病や心臓病のリスクが高い可能性を示唆するデータが報告された。米ラトガーズ大学のSteven Malin氏らの研究によるもので、詳細は「Experimental Physiology」に9月19日掲載された。

 この研究によって、就寝時刻が遅い「夜型」の人は、早く寝て朝早くに起きる「朝型」の人よりもインスリン抵抗性が高いことが明らかになった。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む際に必要とされるホルモンで、その作用が低下した状態であるインスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症につながりやすい。また、夜型の人は朝型の人よりも運動量が少なく脂肪燃焼も少なくて、血流中に脂質が蓄積しやすく心臓病のリスクが高くなりやすいことも分かった。本研究には関与していない、米ノースダコタ睡眠センターのSeema Khosla氏は、「この研究は、睡眠の時間と質に加えて、睡眠のタイミングも重要であることを示している」と論評している。なお、同氏は米国睡眠医学アカデミーの普及啓発委員会の委員長を務めている。

 Malin氏らは、糖尿病や心臓病の既往のない51人を、アンケートの回答に基づきクロノタイプ(朝型か夜型か)で分類。三軸加速度計で1週間の身体活動量を把握したほか、インスリン感受性、安静時と運動中のエネルギー基質(糖または脂質)の利用能を分析した。その結果、朝型の人はインスリン抵抗性が低く(インスリンに対する感受性が高く)、運動中に脂肪を多く燃焼することが示された。

この研究結果を生かすには

 Malin氏は、「夜型の人は健康のために睡眠習慣の改善策を講じた方が良い。15分早く寝て、15分早く起きることからスタートし、場合によってはさらに15分、生活を前倒しすべきだ」と話す。また、早朝に日光を浴びることも提案している。日光を浴びることで、24時間の体内時計である「サーカディアンリズム(概日リズム)」がリセットされて、夜型の生活から朝型の生活に切り替えやすくなる可能性があるとのことだ。サーカディアンリズムは、睡眠を促すメラトニンと呼ばれるホルモンの分泌制御などに関係している。

 一方、Khosla氏は「サーカディアンリズムを崩さないことは重要だ。しかし、それだけでなく、睡眠時間を削ったり夜型の生活をすることが、さまざまな問題を引き起こしていることを認識することも大切だ。また本研究は確かに興味深いものではあるが、クロノタイプが健康にどのような影響を及ぼすかについては、まだ不明な点が多く残されている」と語っている。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)睡眠障害センターのディレクターであるAlon Avidan氏は、「睡眠が十分でない場合、睡眠のタイミングの悪さによる影響がより大きく現れる」と話す。また同氏によると、就寝前にディスプレーデバイスのブルーライトにさらされると、影響がさらに大きくなる可能性があるという。「ブルーライトは非常に刺激的で、メラトニン作用を低下させ、睡眠時刻の遅れを引き起こす」とのことだ。なお、Avidan氏も本研究には関与していない。

 本研究に関与していないもう一人の専門家、英レスター大学のJoseph Henson氏は、クロノタイプは生まれつき決まっているのではなく、変更可能だとしている。「起きたらすぐに朝食を食べ、昼食も毎日同じ時間に食べるように心がけてほしい。朝はできるだけ多くの自然光を浴びながら運動することだ」と同氏はアドバイスする。また、カフェインの摂り過ぎに注意するとともに、寝室を暗く静かでリラックスでき、快適な温度に調整することも提案している。

[2022年9月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら