新型コロナワクチンの効果、減弱してもブースター接種で再び回復

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/10/10

 

 米国では現在、オミクロン株が標的に含まれる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の改良型ワクチンのブースター接種(追加接種)が行われている。こうした中、この接種のタイミングが適切であることを示した研究結果を、米オハイオ州立大学のShan-Lu Liu氏らが、「The New England Journal of Medicine」に9月7日報告した。

 米食品医薬品局(FDA)は8月下旬、モデルナ社製とファイザー社製の新たな新型コロナウイルスワクチン(オミクロン株対応2価ワクチン)をブースター接種に使用することを承認した。これを受け、米国ではこれらのワクチンを9月から接種できるようになった。新たなブースター接種用ワクチンは、従来型の新型コロナウイルスに加えてオミクロン株に対しても防御効果を発揮するように設計されている。

 Liu氏らはこの研究で、mRNAワクチンを2回接種し、その後1回のブースター接種を済ませた46人(モデルナ社製ワクチン24人、ファイザー社製ワクチン22人)の健康な医療従事者から採取した血液を調べた。対象者から採取したサンプルは、ブースター接種をしてからサンプルを採取するまでの期間に応じて3群(1〜3カ月、4〜6カ月、7〜9カ月)に分類された。

 その結果、新型コロナウイルスの型によって差はあるものの、30日経過するごとに防御抗体レベル(あらゆる変異株に対する50%中和抗体価)が、D614G変異株に対して17.53%、オミクロン株のBA.1に対して19.50%、BA.2.12.1に対しては18.44%、BA.4/5に対しては19.55%低下することが明らかになった。

 これに対して、新型コロナウイルスへの感染歴がある人から採取したサンプルでは、抗体レベルの低下はこれほど急激ではなかった(D614G変異株に対して17.07%、オミクロン株のBA.1に対して14.22%、BA.2.12.1に対しては9.97%、BA.4/5に対しては12.12%の低下)。

 また、1回目のブースター接種から約4カ月後に新型コロナウイルスに対する防御抗体レベルが大きく低下していた2人の対象者では、2回目のブースター接種により抗体レベルが完全に回復し、COVID-19の重症化に対して強力な防御効果を得られることが示された。

 Liu氏は、「2回目のブースター接種は、とりわけ高齢者や基礎疾患のある人たちに対しては、強く推奨される」としている。

 今回のLiu氏らの研究について、全米感染症財団(NFID)メディカルディレクターのWilliam Schaffner氏は、「良いタイミングで発表された。われわれは、このオミクロン株対応2価ワクチンの接種を推進しているからだ」とコメント。また、「この研究結果は、ワクチンを接種済みかどうかや、COVID-19への罹患歴の有無にかかわらず、このワクチンの接種が有益であることを強く裏付けるエビデンスとなるはずだ。接種によりウイルスに対する防御効果は高まり、その効果は持続すると考えられる」と述べている。

 また、Schaffner氏は、通常の風邪の症状を引き起こす従来のコロナウイルスへの自然免疫は消失しやすいことから、Liu氏らが報告した研究結果は理にかなっていると話す。同氏は、「一例を挙げると、ヒトコロナウイルスは、抗体が長年にわたって維持され、防御効果が長続きする麻疹ウイルスとは異なる。ヒトコロナウイルスに対する抗体は消失するため、1年後には再び風邪をひくこともある」と説明している。

[2022年9月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら