自営業の女性には健康な人が多い

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/23

 

 被雇用者ではなく自営業の女性は、心血管疾患のリスクが低いことを示唆する研究結果が、「BMC Women's Health」に7月23日掲載された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)女性健康センターのKimberly Narain氏とSedina Dzodzomenyo氏が、4,600人以上の米国の女性有職者を対象に行った研究から、自営業者は運動量が多く、肥満、高血圧、糖尿病の有病率が低いことが分かった。

 論文の上席著者であるNarain氏は、「われわれの研究結果は、女性が自営業に就くことで健康になるという因果関係の証明ではない。しかし、自営業という働き方が、女性の心臓に良い影響を与える可能性を示している。自営業者は被雇用者よりも働く日時を自由に設定しやすいが、そのようなポジティブな側面を被雇用者の労働条件にも反映することを検討すべきかもしれない」と述べている。

 Narain氏らの研究には、米ミシガン大学が行っている、就労や定年退職と健康に関する研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータが用いられた。2016年にHRSに登録された4,624人の女性有職者(16.2%が自営業者)の就労形態と、心血管疾患リスク因子の有病率やメンタルヘルス、および健診受診率などとの関連を解析。その結果、自営業の女性は被雇用の女性に比べて活動的で(週に2回以上運動している割合が80.4%対72.0%)、肥満(31.7%対41.3%)や高血圧(19.1%対27.6%)、糖尿病(11.5%対14.3%)の有病率が低かった。

 この研究報告に対して、米ラトガース大学の女性と仕事センターのYana Rodgers氏は、「ニワトリが先か卵が先かという質問に答えるのは難しい」と話す。同氏によると、フリーランスや起業家として活動している女性は一般的に経済的に恵まれていたり、ほかの女性にはない健康上のメリットを有していたりする可能性があるという。

 ただし、Narain氏の研究では、結果に影響を及ぼす可能性のある、教育歴や婚姻状況などの因子を調査したが、それらは有意な群間差がなかった。むしろ、健康保険に加入していない人の割合は、自営業者の方が有意に高かった(9.1%対5.3%)。米国では健康保険料が高額なために保険に加入せず、結果として高血圧や糖尿病であるのに診断されていない人も少なくない。ただし、保険加入率の差異などの影響を統計学的に調整した解析の結果は、調整前と基本的に変わらず、自営業の女性は被雇用の女性より、肥満は34%、高血圧は43%、糖尿病は30%有意に少なく、週2回以上運動する人が68%多かった。

 なお、今回の研究では世帯収入が考慮されていなかった。Rodgers氏は、そのことが研究結果に影響を与えている可能性を指摘している。つまり、世帯収入が高くて生活が安定していれば、女性は自分自身でビジネスを立ち上げやすく、自分の裁量で労働を加減でき、そのような働き方が健康上のメリットを生むと同氏は主張する。そして、「企業の雇用者側は、このような研究の結果を参考にすべきではないか。労働者が自律的にスケジュールを管理し、柔軟な働き方ができるように、労働環境の調整を試みてはどうか」と提案している。

 Rodgers氏の指摘に関連してNarain氏も、「雇用者の一部は、労働者を厳格なスケジュールで管理することが収益アップにつながると考えているようだ。しかし、そのような就労形態では、労働者のストレスが増加して満足度は低下し、さらに健康状態が悪化するため、結果的に収益を悪化させる可能性がある」と話している。

[2022年8月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら