錠剤の効果をすぐに得るには服用姿勢が重要

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/19

 

 錠剤を飲むなら、体の右側を下にした状態で寝て飲むのが良いかもしれない。米ジョンズ・ホプキンス大学教授のRajat Mittal氏らは、錠剤を服用するときの姿勢が体内での薬の吸収に与える影響について調べるため、コンピューターモデルを用いた研究を実施。右側を下にした横臥位で錠剤を飲んだ場合、立位で飲んだ場合と比べて錠剤が胃の最奥部に到達して分解されるまでの時間が2.3倍速いことが示されたとする結果を、「Physics of Fluids」に8月9日発表した。

 ほとんどの錠剤は、飲み込んだ後、胃から腸へと排出されてから効果が現れる。このことはすでに研究者の間でも知られていた。このことから、胃の一番奥の幽門洞と呼ばれる部分により早く到達した錠剤ほど分解も早く、また、そこから小腸の入口部分にある十二指腸へと排出されるのも早いことが予測される。錠剤を幽門洞により早く到達させるには、重力と胃の非対称性を利用できるような姿勢を取る必要がある。

 Mittal氏らは今回、薬剤を服用する際の姿勢と胃運動がバイオアベイラビリティ(投与された薬物が全身循環に到達して作用する割合)に与える影響を、StomachSimと呼ばれるモデルを用いて検討した。StomachSimは、飲み込んだ食べ物や薬が胃の中で消化される様子をシミュレーションするために、物理学や生体力学、流体力学に基づいて作られたモデルである。薬剤を服用する姿勢として、体の右側を下にした横臥位に加え、左側を下にした横臥位、直立位、仰臥位で比較検討した。

 その結果、驚くべきことに、右側を下にした横臥位では、服用した錠剤が分解されるまでにかかる時間は10分であったが、直立位の場合では23分、左側を下にした横臥位の場合では100分以上かかることが明らかになった。仰臥位で服用した錠剤の分解にかかる時間は、直立位で服用した場合と同程度であった。

 Mittal氏は、「錠剤の吸収率に姿勢がこれほど大きな影響を与えているとは、われわれにとって大変な驚きだった」と振り返る。そして、「これまで、自分の錠剤の飲み方が正しいのか、あるいは間違っているのかといったことを考えたことがなかった。しかし今後は、確実に錠剤を飲むたびに考慮することになるだろう」と話している。

 Mittal氏はまた、同大学のニュースリリースの中で、「高齢で座って過ごすことが多い人や寝たきりの人にとって、薬を飲むときに左右のどちらを下にするかは大きな影響をもたらす可能性がある」と述べている。

 一方、研究論文の筆頭著者で同大学のJae Ho "Mike" Lee氏は、胃の状態のわずかな変化が飲み込んだ物の分解に大きな影響を与え得ると指摘する。例えば、糖尿病やパーキンソン病といった疾患が原因で胃の機能がベストの状態にないと、錠剤の分解に影響が及び、その影響の大きさは姿勢の違いによる影響と同程度であるという。

 研究グループは、今後は胃の生体力学的な変化が体内での薬剤の吸収に与える影響について予測を試みる研究などを計画していると話している。

[2022年8月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら