食物繊維は何から摂取するのがベスト?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/09/09

 

 普段の食事に食物繊維が不足している人は、摂取源が何であろうと食物繊維の摂取量を増やすことで腸への良い影響が期待できることが、米デューク大学のLawrence David氏らの研究で示された。この研究結果は、「Microbiome」7月29日号に発表された。

 食物繊維は便通を良くする栄養素として広く知られている。その一方で、食物繊維は腸内細菌叢の構成にも大きな影響を及ぼしている。腸内では細菌が食物繊維を分解する際、大腸の細胞の主な栄養源となる短鎖脂肪酸が産生される。短鎖脂肪酸は、代謝や免疫防御といった重要な機能の調節にも関わっていることが示されている。しかし、数ある食物繊維のサプリメント(以下、サプリ)の中で、腸内細菌に対する作用が他よりも優れているものがあるのかどうかについては明らかになっていなかった。

 そこでDavid氏らは今回、現在広く使用されている3種類の粉末タイプの食物繊維サプリが腸内細菌叢に与える影響について調べた。研究に使用したのは、1)イヌリン(チコリの根から抽出される食物繊維)、2)小麦由来のデキストリン(Benefiberの商品名で販売されているサプリ)、3)ガラクトオリゴ糖(Bimunoの商品名で販売されているサプリ)の3種類だった。1日当たりの用量は、イヌリンと小麦デキストリンが9g、ガラクトオリゴ糖が3.6gであった。研究参加者である28人の健康な成人には、これらの3種類のサプリをそれぞれ1週間ずつ摂取してもらった。あるサプリを1週間摂取してから別のサプリの摂取を開始する前には、1週間の間隔が設けられた。

 その結果、研究参加者の腸内細菌叢に対する影響に関して、3種類のサプリの中で他の2種類よりも優れていることを示したものはなかった。いずれのサプリも、短鎖脂肪酸の一種である酪酸の産生量を増加させていた。酪酸は、腸壁のバリヤー機能を高めて病原体の侵入を防いだり、炎症抑制に重要な働きを担うとされている。ただし、サプリの種類による結果の違いはなくとも、サプリを摂取する人による違いは認められた。サプリによる酪酸の産生量増加が確認されたのは、普段の食事で食物繊維の豊富な食品をほとんど食べていない研究参加者のみであった。

 この結果についてDavid氏は、「普段から食物繊維を多く摂取していた参加者では、どのサプリを摂取しても腸内細菌叢の変化があまり見られなかった。これはおそらく、これらの参加者ではすでに腸内細菌叢の最適なバランスが保たれていたためだろう。これに対して、食物繊維の摂取量が最も少なかった参加者では、摂取したサプリの種類に関わりなく、サプリの摂取による酪酸の産生量の増加が最も大きかった」と述べている。

 なお、専門家らは、1日当たり女性で25g、男性で38gの食物繊維の摂取を推奨している。しかし、平均的な米国成人の食物繊維の摂取量はその30%程度であり、ほとんどの米国人で食物繊維の摂取量が不足していることを研究グループは指摘している。

 この研究には関与していない専門家の一人で、栄養と食事のアカデミー(米国栄養士会)のスポークスパーソンを務めるNancy Farrell Allen氏は、「食物繊維を摂取するのであれば、サプリよりも食品からの摂取が望ましい」と指摘。その理由として、植物性の食品には食物繊維だけでなく、ビタミンやミネラル、さらに健康に有益なファイトケミカルが含まれていることを挙げている。

 この点については研究グループの一員で同大学のJeffrey Letourneau氏も同意見で、「天然の未加工食品には、サプリでは補えない真の有益性がある」としている。しかし、食物繊維の重要性や食物繊維が不足した米国人の食事を考慮すれば、「摂取源にこだわらずに、できる限り多くの食物繊維を摂取することが望ましい」との見解を示している。

[2022年8月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら