フェイスシールドの飛沫防御効果は十分か

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/23

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以来、顔面を覆うフェイスシールドを着用した人を見かけることも珍しくなくなった。しかし、英イーストアングリア大学(UEA)ノリッジ医科大学のPaul Hunter氏らがこのほど、13種類のフェイスシールドについて検討したところ、どのフェイスシールドも感染につながる飛沫を防御する効果については十分ではなかったとする研究結果を報告した。詳細は、「American Journal of Infection Control」8月1日号に掲載された。

 Hunter氏は、「フェイスシールドは呼吸を妨げず、マスクよりも自然なコミュニケーションを取ることができる上にしぶきを防御することができるため、人気がある。しかし、現時点で、フェイスシールドの新型コロナウイルス防御効果についてのエビデンスは、多くはない」と話す。

 そこでHunter氏らは今回、13種類のフェイスシールドの感染予防効果を実験室内で検証した。実験は、機械装置で人間の咳が吐き出す飛沫の量や速度、粒子サイズをシミュレートした「咳」を作り出し、それを、フェイスシールドを装着したマネキンの頭部に向かって放出させ、それぞれのフェイスシールドの防御効果を比較するという内容だった。

 その結果、いずれのフェイスシールドにもある程度の防御効果はあるものの、飛沫に対して高レベルの防御効果を示すものはないことが明らかになった。また、フェイスシールドの形状や、咳を受ける際のマネキンの頭部の傾け方により、防御効果が異なっていた。例えば、頭部を後ろに傾けたときには、フェイスシールド下部の隙間が広がり、そこから入り込む飛沫の量が増えていた。論文の筆頭著者である、UEAノリッジ医科大学のJulii Brainard氏は、「側面や下部、あるいは上部に大きな隙間があると、他の人から放出された飛沫が顔に到達する可能性がある。つまり、ウイルスに曝される危険性があるということだ」と話す。

 Brainard氏は、「最も防御効果が高かったフェイスシールドは、額の左右と顔の側面をしっかりと覆い、顎の下にまで届くものだった」と話す。ただし同氏は、「この実験室での実験は、フェイスシールドを着用した人の近くで誰かが激しく咳をした場合を想定したものであることを頭に入れておくべきだ。単なる会話で飛沫がシールドの周りから顔面にまで到達するという可能性は、咳の場合と比べるとはるかに低い」と述べている。

 研究グループはさらに、フェイスシールドのリアルワールドでの利用状況を知るために、ブラジルとナイジェリアの一般集団と医療従事者600人以上に対して調査を行った。その結果、調査対象者は、価格よりも快適で、装着時に安定性があり、洗浄が容易な製品を好んで購入していることが分かった。また、フェイスシールドの洗浄には、ブラジルでは消毒剤、ナイジェリアでは石鹸水が主に使われていることも明らかになった。

 研究グループは、「これまでフェイスシールドのような個人用防護具の受容性に関する研究は、主に英国や米国を対象に行われてきたが、われわれは低中所得国を対象にして調査を行った。この研究の重要性はその点にある。ただし、今回明らかになったブラジルとナイジェリアでの利用状況が他の国にも当てはまるとは限らない」と話している。

[2022年7月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら