“お腹が減るとイライラする”は本当か

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/09

 

 空腹のときにイライラしたり怒りっぽくなるのは、どうやら本当のことらしい。英アングリア・ラスキン大学のViren Swami氏らが実施した研究から、空腹は、怒りやイライラ感といったネガティブな感情と結び付いていることが明らかにされた。この研究の詳細は、「PLOS ONE」に7月6日掲載された。

 空腹時にイライラ感や怒りなどのネガティブな感情を抱いている状態を、英語ではhungry(空腹)とangry(怒り)を合わせてhangryという。この言葉は英語圏ではごく一般的に使われており、メリアムウェブスター英英辞典にも掲載されているという。Swami氏は、「私の妻は時々、私がhangryになっていると言う。そんなとき、私はいつも、hangryなんてものが真の精神状態であるはずはないと思っていた。しかし、今回の研究で、自分が間違っていたことが分かった」と話す。

 Swami氏らの研究では、中央ヨーロッパの成人64人にスマートフォンのアプリを用いて1日に5回、空腹と怒り、イライラ感を視覚アナログ尺度(VAS)で、また、喜びと覚醒の程度をアフェクトグリッド法で21日間にわたって評価してもらった。

 集めたデータを分析したところ、空腹は強い怒りの感情とイライラ感の増幅、および喜びの感情の低下と関連することが明らかになった。これらの関連は、対象者の性別や年齢、BMI、食習慣、特性怒り(気質としての怒りやすさのこと)を考慮して検討した後でも有意であった。これに対して、空腹と覚醒の間に関連は認められなかった。また、1日の中での空腹感の変動や、21日間での空腹感の平均値から、怒りやイライラ感といったネガティブな感情を予測できる可能性も示された。

 Swami氏は、「われわれの研究は、研究室の外でhangryの状態について検討した初めてのものだ」と述べる。そして、「得られた結果は、空腹を感じているときには、怒りやイライラを感じやすくなる一方で、喜びの感情は減じる傾向にあることを示唆するものだ」と話している。

 では、空腹を感じていると怒りやイライラを感じやすくなるのはなぜなのか。この問いに対してはいくつかの説明が考えられるという。その一つとして、Swami氏らの研究結果をレビューした、米マウントサイナイ病院のJennifer Cholewka氏は、「低血糖値は脳機能に直接影響を及ぼす可能性がある。血糖値が下がり始めると、脳が正常に機能しなくなって混乱し、イライラしやすくなる」と説明する。

 また、Swami氏は別の説明として、「空腹時には、周囲から得る手掛かりを否定的な目で見て解釈する可能性が高い」ことを挙げる。同氏は、「例えば、今私が空腹だとすると、私は自分の目の前にいる人や、暑さ、その他の環境中のあらゆる刺激を否定的に捉えがちになる。それが怒りの感情の原因になる」と具体的な説明を加えている。その上で、「hangryを実際に生じる精神状態だと理解することで、自分自身をよりうまくコントロールできるようになるのではないか」との考えを示している。

 ただしCholewka氏は、hangryを真の精神状態であると断言するには、さらなる研究が必要だと指摘する。そして、「今後の研究では、グレリンやレプチンなどの飢餓に関連するホルモンと血糖値を測定して、生物学的な真の空腹状態を確立する必要がある。そうすることで、空腹とそれが感情に及ぼす影響の関係をより明確に示すことができるだろう」と話している。

[2022年7月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら