高気温と大気汚染は健康被害を相乗的に増やす

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/08/03

 

 暑さと大気汚染が重なると、健康への悪影響が相乗的に強まり、特に高齢者の死亡リスクが上昇することを示すデータが報告された。米南カリフォルニア大学のMd Mostafijur Rahman氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に4月5日掲載された。同氏は、「残念ながら、地球の温暖化とともに気温上昇と大気汚染が進行し、その影響で死亡者数も増えるだろう」と予想している。

 Rahman氏らは、2014~2019年の米国カリフォルニア州での150万人以上の死亡統計データと、気温および微小粒子状物質(PM2.5)の飛散状況に関するデータを用い、ケース・クロスオーバー法という手法により、それらの関連を検討。その結果、高気温とPM2.5の拡散は、それぞれ単独でも死亡リスクを高めるものの、両者が重なった場合には特に死亡者数が増えることが明らかになった。

 具体的には、気温が極端に高いもののPM2.5の飛散量は多くない日の死亡リスクは6.1%(95%信頼区間4.1~8.1)高く、PM2.5の飛散量が極端に多いものの気温は高くない日の死亡リスクは5.0%(同3.0~8.0)高かった。そして、気温が極端に高くてPM2.5飛散量も極端に多い日は、死亡リスクが21.0%(同6.6~37.3)上昇していた。

 死因別に検討すると、高気温とPM2.5の極端な飛散が重複した日は、心血管死のリスクが29.9%(同3.3~63.3)高いことが分かった。呼吸器系の疾患による死亡リスクも38.0%(同-12.5~117.7)高い傾向が見られた。また年齢層別の検討からは、高気温とPM2.5飛散の重複の影響は、高齢者により強く生じることが分かった(死亡リスクが75歳未満では8.5%上昇に対して75歳以上では36.2%上昇)。

 このような現象が生じるメカニズムについて、Rahman氏らは、「高気温と大気汚染の重複は、人々の体温調節機能への負担に加えて、炎症や酸化ストレスの負荷を強めるように作用するのではないか」と推測。その上で、「高気温と大気汚染が予測される日は、自宅のエアコンのある部屋で過ごすべきだ。もし自宅にエアコンがないなら、図書館やショッピングモールなどに行くと良い」とアドバイスしている。

 論文の上席著者である同大学のErika Garcia氏は、「地球温暖化が進めば進むほど、多くの対策が必要となってくるだろう。高気温や大気汚染のために命を失う人を減らすために、まず適切な政策立案が求められ、その政策に基づく継続的な努力が続けられるべきだろう」と語っている。

 本研究には関与していない、米カイザーパーマネンテの小児科医で米国肺協会(ALA)のスポークスパーソンであるAfif El-Hasan氏は、今回の報告について、「大気汚染と高気温が体に負担をかけるという事実を如実に物語っている。しかもそれらが重複した場合、リスクは単なる足し算ではなく、相乗的に増大することを示している」と総括。その過酷な条件に耐えるための個人レベルの対策として、「血圧や血糖値の管理、呼吸器系疾患の治療などにより、日頃から体調を万全の状態に整えておくべき」としている。

 ただし、「高温と大気汚染が続くこれからの季節を乗り切るには、それだけでは対策は不十分だ」とEl-Hasan氏は語る。そして、「自宅内の少なくとも1部屋にはエアコンと空気清浄機を取り付け、できるだけ安全に過ごすことのできる環境を確保しておいた方が良い」としている。El-Hasan氏は、将来的に気候の温暖化と大気汚染がより悪化すると予測しており、「そのために、今よりも多くの死者が発生するだろう」と述べている。

[2022年7月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら