肥満でも新型コロナワクチンの効果は適正体重の人と同等

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/29

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(以下、新型コロナワクチン)の接種により得られる重症化予防効果は、肥満や過体重の人でも適正体重の人と同等であるとする研究結果が発表された。英オックスフォード大学のCarmen Piernas-Sanchez氏らが実施したこの研究結果は、「The Lancet Diabetes and Endocrinology」に6月30日掲載された。

 既存のエビデンスによると、肥満の人ではインフルエンザワクチンの効果が低減してしまう。「そのため、新型コロナワクチンの効果についても、同様に肥満者では効果が低減するのではないかと懸念する声があった。そこでわれわれは、BMIと新型コロナワクチンの効果との関係について調べることにした」とPiernas-Sanchez氏は研究背景について説明する。

 Piernas-Sanchez氏らの研究では、英国の大規模コホートを対象に、BMIと新型コロナワクチン接種とその効果、ワクチン接種後のCOVID-19の重症化との関連について検討が行われた。対象者は、英国のプライマリケアのデータベースであるQResearchから抽出した、BMIの判明している18歳以上の患者917万1,524人(平均年齢52歳、平均BMI 26.7)。対象者はBMIにより、低体重(BMI<18.5)、適正体重(BMI 18.5〜24.9、アジア系は18.5〜22.9)、過体重(BMI 25.0〜29.9、アジア系は23〜27.5)、肥満(BMI≧30、アジア系は≧27.5)の4群に分類された。

 試験期間内に総計56万6,461人が新型コロナウイルス検査で陽性の判定を受け、3万2,808人がCOVID-19により入院し、1万4,389人がCOVID-19により死亡した。対象者のワクチン接種状況については、19.2%(175万8,689人)が未接種、3.1%(28万7,246人)が1回接種を完了、52.6%(482万8,327人)が2回接種を完了、25.0%(229万7,262人)が3回接種を完了していた。

 ワクチンを接種した人では未接種の人に比べて、2回目接種から14日以降のCOVID-19の重症化と死亡のリスクが大きく低下していた。このリスク低下の程度にはBMIによる違いが認められ、入院のオッズ比は低体重で0.51(95%信頼区間0.41〜0.63)、適正体重で0.34(同0.32〜0.36)、過体重で0.32(同0.30〜0.34)、肥満で0.32(同0.30〜0.34)、死亡のオッズ比は同順で0.60(同0.36〜0.98)、0.39(同0.33〜0.47)、0.30(同0.25〜0.35)、0.26(同0.22〜0.30)だった。このように、ワクチンによるCOVID-19重症化の防御効果は、過体重または肥満の人と適正体重の人では似通っているが、低体重の人ではやや劣ることが示された。

 このような結果となったものの、Piernas-Sanchez氏は、「実際には、新型コロナウイルスに感染した場合、肥満の人の方が重症化しやすいように思われる。その理由を明らかにするための研究が必要だ」と話す。また、低体重の人でリスクの低下度がやや劣った理由について同氏は、「明確なことは不明だが、低体重の人には、免疫応答を減弱させるようながんなどの健康問題を抱えている人が含まれていた可能性がある」と推測している。

 Piernas-Sanchez氏をはじめとする専門家は、現状でできる重症化予防対策として新型コロナワクチンのブースター接種の重要性を強調する。米マウントサイナイ・サウスナッソーのAaron Glatt氏は、「ワクチンは完璧ではないため、接種しても新型コロナウイルスに感染することはある。しかし、ワクチン接種による重症化予防の効果は大いに期待できる」と話している。米ニューヨーク大学(NYU)ランゴンホスピタル・ブルックリンのLalitha Parameswaran氏もこの意見に同意を示し、「ブースター接種は軽度から中等度のCOVID-19を防ぐだけでなく、重症化に対する防御効果も高めてくれる」と強調している。

[2022年7月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら