オープンソース開発の自動インスリン伝達システムが血糖管理を改善

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/20

 

 オープンソースで開発された自動インスリン伝達システムは、1型糖尿病患者の血糖管理に有効で安全とする研究結果が、米国糖尿病学会(ADA2022、6月3~7日、ニューオーリンズ)で6月6日報告された。オタゴ大学(ニュージーランド)のMartin de Bock氏らの研究によるもの。

 自動インスリン伝達(automated insulin delivery;AID)システムは、インスリン製剤を注入するためのポンプ、持続血糖モニター(continuous glucose monitor;CGM)、および、血糖レベルを設定範囲に維持するために必要なインスリン製剤の投与量を判断するアルゴリズムからなるシステム。現在臨床で使われているAIDシステムは、メーカーが開発・販売した商用システムが多くを占めているが、商用AIDシステムの臨床応用に先行して、糖尿病患者らがプログラムを公開・共有し修正を重ねてきた、オープンソースAIDシステムが存在する。このオープンソースAIDシステムは世界各地で使用されているものの、米食品医薬品局(FDA)の承認は受けていない。

 Bock氏らは、現在最も広く使用されているオープンソースAIDシステムの有効性と安全性を、CGMを利用しながらインスリン注入ポンプを使うSAP(sensor augmented pump)療法という治療法と比較検討した。なお、SAP療法ではインスリン投与量を予めプログラムしておき、CGMの値を基に使用者の判断でマニュアル調整を加える。

 この研究は、多施設共同無作為化比較試験として実施された。研究参加者は、AIDシステムの使用経験がほとんどない1型糖尿病の小児(7〜15歳)48人、および成人(16〜70歳)49人。介入の初期はシステムの使い方に慣れるための期間として設定し、介入の最後の2週間に、血糖値が70~180mg/dLの範囲内にある時間の割合(time in range;TIR)を評価して群間差を検討した。

 解析の結果、オープンソースAID群の評価期間(介入終了前の2週間)のTIRは、小児は67.5±11.5%(習熟期間から9.9±14.9ポイント増)、成人では74.5±11.9%(同9.6±11.8ポイント増)であり、有意な改善が認められた(いずれもP<0.001)。一方、SAP群のTIRは改善が見られなかった。両群の評価期間のTIRには、14ポイントの差が存在していた。

 一般的に、TIRは70%を超えることが良好な血糖コントロールの目安とされている。オープンソースAID群では、その患者割合が60%だったが、SAP群は15%に過ぎなかった。重症低血糖や糖尿病性ケトアシドーシスは、両群ともに発生しなかった。なお、ハードウェアの問題のため、オープンソースAID群の2人が介入中に脱落した。

 Bock氏はADA発のリリースの中で、「この結果は、オープンソースAIDシステムが安全で効果的な技術であり、血糖管理改善のための本システム使用を支持するエビデンスが、また一つ加わった」と述べている。これまでオープンソースAIDシステムの開発を主導してきた研究者で、共同発表者の1人であるDana Lewis氏は、「介入時のTIRが最も低い患者でより顕著なTIR改善が認められたことに、われわれは勇気付けられた。現在どのような治療を行っているのかにかかわらず、多くの糖尿病患者にとってオープンソースAIDシステムの使用はメリットとなるだろう」と語っている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年6月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら