女性はCOVID-19急性期後に症状が長引きやすい

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/07/18

 

 女性は男性よりも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後にさまざまな症状が慢性的に続く状態、いわゆる「long COVID」のリスクが高い可能性が報告された。ジョンソン・エンド・ジョンソン社のShirley Sylvester氏らが行った文献レビューの結果であり、詳細は「Current Medical Research and Opinion」に6月20日掲載された。

 この研究は、文献データベースを用いて、2020年8月以前に公開された「COVID-19後遺症」に関する論文と、2021年6月以前に公開された「long COVID」に関する論文を検索し、性差について検討したもの。なお、COVID-19後遺症は、COVID-19発症後の持続期間が4週間未満の症状と定義。一方、long COVIDは、COVID-19発症後4週間以上続く症状と定義されている。

 検索により多くの研究報告がヒットしたが、それらの大半は、入院率やICU入室、人工呼吸管理、および死亡率などの客観的アウトカムの性差を調査していた。患者の自覚症状を含めて性差を検討していた研究は、COVID-19後遺症については23件、long COVIDについては12件に限られた。それらの研究対象者数は、合計139万3,355人だった。

 解析結果について、まずCOVID-19後遺症の性差を見ると、女性は男性に比較し、メンタルヘルス関連症状〔オッズ比(OR)1.80(95%信頼区間1.35~2.41)〕、耳・鼻・喉(ENT)の症状〔OR1.42(同1.39~1.46)〕、筋骨格系症状〔OR1.15(1.14~1.16)〕、および呼吸器症状〔OR1.09(1.08~1.11)〕のオッズ比が有意に高かった。一方、腎機能低下〔OR 0.83(0.75~0.93)〕は男性に多かった。

 次に、long COVIDとして報告されていた症状の性差を見ると、やはり女性の方が、22%有意に多く報告されていた〔OR1.22(1.13~1.32)〕。Long COVIDの症状別に比較すると、ENT症状〔OR2.28(1.94~2.67)〕、消化器症状〔OR1.60(1.04~2.44)〕、メンタルヘルス関連症状〔OR1.58(1.37~1.82)〕、神経学的症状〔OR1.30(1.03~1.63)〕、皮膚症状〔OR1.29(1.05~1.58)〕などの有意差が認められた。一方、腎機能低下〔OR 0.74(0.64~0.86)〕や内分泌障害〔OR0.75(0.69~0.81)〕は男性に多かった。

 この結果についてSylvester氏は、「免疫システムの性差がCOVID-19急性期以後の症状の差異に関与しているのではないか」と考察している。同氏によると、「女性はより迅速で強力な自然免疫と獲得免疫が働き、感染初期の重症化リスクが抑制される。しかし、自己免疫関連疾患に対しては脆弱になる可能性がある」とのことだ。

 一方、本研究の限界点として、「ほとんどの研究は、性別の詳細なデータを報告していなかった。そのため、予後に影響を与える性別特異的因子を特定することが困難だった」とSylvester氏らは述べている。同氏は、「研究の主目的がCOVID-19の性差の検討ではないとしても、性別のデータを利用可能とすることが重要ではないか。その情報を分析することが、疾患のより深い理解につながることもある」と語っている。

[2022年6月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら