ヘルペスウイルスが2型糖尿病のリスクを高める?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/08

 

 性器ヘルペスウイルスを含む、ごく一般的なウイルスの感染が、2型糖尿病のリスクを押し上げる可能性を示す研究結果が報告された。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ドイツ)のAnnette Peters氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に5月11日掲載された。

 2型糖尿病の高い有病率の背景には、高齢者人口の増大と肥満の二つが主要因子として挙げられる。これに加えて新たな研究では、二つのヘルペスウイルス(単純ヘルペス2型とサイトメガロウイルス)が、2型糖尿病のリスクを高める可能性があることを示している。単純ヘルペス2型(HSV-2)は性器ヘルペスを引き起こす。一方、サイトメガロウイルス(CMV)は感染しても通常、症状が現れない。ただし、新生児や免疫能が著しく低下している人には、深刻な感染症を引き起こすことがある。感染症を発症しない場合でも、ウイルスは体内にとどまり休眠状態で維持される。

 本研究から、HSV-2またはCMVに対する抗体が陽性と判定された成人は、その後7年弱で糖尿病前症になる可能性が高いことが分かった。糖尿病前症とは、血糖値が正常よりも高い状態のことであり、2型糖尿病のハイリスク状態に当たる。糖尿病前症のリスク因子としては、加齢、肥満、運動不足、糖尿病の家族歴などがある。しかし今回の研究では、それらの因子の影響を統計的に調整後も、抗体が陽性であることと糖尿病前症のリスクの高さとの間に有意な関連が認められた。

 ウイルスへの感染そのものが血糖状態に影響を与えると考えた場合、それには免疫系の異常が関与している可能性があると、研究者らは推測している。免疫系の異常により内分泌系が乱れて、血糖値の制御が困難になるのだという。ただし、まだ十分には証明されていない。Peters氏は、「ヘルペスウイルスと糖尿病前症の関連について、免疫系以外の経路が関与している可能性もある」と述べている。

 一方、米ジョスリン糖尿病センターのGeorge King氏は、「ウイルス感染が糖尿病発症に関与する可能性があるという考え方は、目新しいものではない」と語る。事実、その関連は長年にわたって研究されてきた。ただしその研究は主として、1型糖尿病に焦点を当てたものだった。1型糖尿病は自己免疫疾患であり、インスリン産生細胞に対する免疫系の異常な攻撃によって発症する。それに対して2型糖尿病の発症には加齢や生活習慣が関与しており、有病率もはるかに高い。

 King氏は、「ある種のウイルス感染が2型糖尿病の発症にも寄与するというアイデアは興味深い」と語る。しかし同時に、「2型糖尿病の発症には非常に多くの因子が関与している。約700種類の遺伝子がこの病気に関係しており、それらの一つ一つがわずかずつ影響を及ぼしている」と説明する。つまり同氏は、他のリスク因子の影響を除外して、ヘルペスウイルスのみの影響を評価することの難しさを指摘している。そして、「おそらくその影響は小さなものだろう」と語っている。

 Peters氏らの研究の参加者は、血糖値が正常な32~81歳(中央値49)の成人1,257人。CMVに対する抗体陽性者が46%、HSV2に対する抗体陽性者が11%含まれていた。6.5年の追跡で381人(30.3%)が糖尿病前症となった。

 糖代謝に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、教育歴、喫煙・身体活動習慣、家族歴、血圧、血清脂質、インスリン抵抗性、空腹時血糖値)を調整後、糖尿病前症となるリスクがHSV-2に対する抗体陽性者は59%高く〔オッズ比(OR)1.59(95%信頼区間1.01~2.48)〕、CMVに対する抗体陽性者は33%高かった〔OR1.33(同1.002~1.78)〕。

 この結果についてKing氏は、調整因子に食習慣が含まれていないことを指摘している。同氏によると、食習慣は腸内細菌叢に大きな影響を与え、ひいては免疫能にも関与し、それらを介して2型糖尿病のリスクを大きく変えるという。他方、Peters氏は現在、新型コロナウイルス感染症罹患と慢性疾患の発症や増悪との関連に関する研究が精力的に進められていることを引き合いに出し、「ヘルペスウイルス感染後の体内で何が起こっているのかを理解するため、さらなる研究が必要とされる」と述べている。

[2022年5月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら