免疫療法薬で筋層浸潤性尿路上皮がんの再発率を低減

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/06/14

 

 尿路上皮がんの外科手術後に免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(一般名ニボルマブ)による免疫療法を行うことで、腫瘍の再発リスクを有意に低減できることが、第3相臨床試験で示された。筋層への浸潤が生じている尿路上皮がんの患者約700人のうち、オプジーボの投与を受けた群ではプラセボ群に比べて、治療後11カ月間での再発リスクが低いことが明らかになったという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学、ティッシュがん研究所のMatthew Galsky氏らが実施したこの研究の結果は、米国泌尿器科学会議(AUA 2022、5月13〜16日、米ニューオーリンズ)で発表された。

 今回発表された生存率データは、Galsky氏らが2021年に「The New England Journal of Medicine」で発表した初回データに基づくもの。免疫細胞の一つであるT細胞は、活性化すると細胞表面にPD-1を発現する。一方、がん細胞表面に発現したPD-L1やPD-L2は、PD-1と結合することでT細胞にブレーキをかけて、その働きを抑制する。オプジーボはPD-1に結合してPD-L1やPD-L2とPD-1との結合を阻害し、T細胞の活性化を維持するもので、通常は週に数回、1年間にわたって投与する。

 Galsky氏らは、根治手術を受けた筋層浸潤性尿路上皮がん患者を、オプジーボ(240mg)を2週間ごとに最長1年にわたって投与する群(353人)と、プラセボを投与する群(356人)にランダムに割り付ける臨床試験を実施。主要評価項目は、全対象者およびPD-L1発現率が1%以上の患者(オプジーボ群140人、プラセボ群142人)における無病生存率とした。

 その結果、試験開始から12カ月時点での無病生存率は、オプジーボ群で63.5%、プラセボ群で46.9%であった。また、PD-L1発現率が1%以上の患者の12カ月時点での無病生存率は、オプジーボ群で67.6%、プラセボ群で46.3%であり、いずれの場合でも無病生存率はオプジーボ群の方がプラセボ群よりも高かった。

 Galsky氏は、「尿路上皮がんの患者の治療において無病生存率の有意な向上を示したのは、この免疫療法が初めてだ」と述べる。その上で、「この治療法の重要性をより強固なものとするには、長期間追跡しても一貫した結果となることを示すことが極めて重要だ」と話している。

 尿路上皮がんは尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)の内壁に発生するがんで、発生部位により膀胱がんや尿管がんなどに分けられる。米食品医薬品局(FDA)は、尿路上皮がんの術後補助療法としてオプジーボを承認しており、保険適用の対象となっている。尿路上皮がんが筋層やリンパ節に浸潤している場合には、膀胱、または腎臓と尿管を摘出する手術が標準治療となっている。しかし、このような患者の約半数が、致死的な転移がんを再発するという。

 米ノースウェル・ヘルスがん研究所のXinhua Zhu氏によると、オプジーボに対する患者の忍容性は良好であり、副作用として悪心、便秘、貧血などが生じるが、いずれも軽症で容易に治療できるという。同氏は、「私の経験から言うと、免疫療法は従来の化学療法に比べてはるかに忍容性が高い」と述べるとともに、「今回の研究は、オプジーボの長期的なベネフィットを初めて示したものだ」と付け加えている。

 さらにZhu氏は、「尿路上皮がん患者の半数で再発が起きるというのは、割合としては相当高く、このがんの悪性度の高さを示している。このがんを除去したり再発を遅らせたりできるのであれば、患者に極めて大きな恩恵をもたらすことになる」と述べている。

[2022年5月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら