被毛を使った検査で保護施設の犬のストレスレベルを測定

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/05/25

 

 動物保護施設の慣れないにおいや音は、非常におっとりした性質の子犬にさえもストレスを与えるようだ。血液や唾液、尿を採取してストレスホルモンのコルチゾールを測定する検査の代替法として犬の被毛を用いて検査したところ、コルチゾール値を正確に測定できることが確認されるとともに、保護されてから6週間後の値が有意に上昇していることが判明したという。ユトレヒト大学(オランダ)のJanneke van der Laan氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に4月21日掲載された。

 コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一種で、ストレスレベルの指標として用いられる。ヒトや動物では毛に蓄積するため、毛の中のコルチゾール値を測定することでストレス反応をうかがい知ることができる。ところが、犬のストレスに関する研究では主に、尿や血液、唾液、糞便などのサンプルからコルチゾール値を測定する方法が用いられている。しかし、これらの検査による結果は、比較的短い期間のストレスレベルを表しているに過ぎず、また、サンプル採取や概日リズムなどの短期的なストレッサーの影響を受ける可能性もある。

 そこでvan der Laan氏らは、52頭の保護犬(平均年齢3.8歳、雄34頭、雌18頭)を対象に、動物保護施設への収容直前(T1、51頭から採取)、収容から6週間後(T2、23頭から採取)、里親に引き取られてから6週間後(T3、同24頭から採取)および6カ月後(T4、同22頭から採取)の4時点で被毛と尿を採取してコルチゾール値を測定した。対照は、保護犬と血統、サイズ、年齢、性別などをマッチさせた飼い犬20頭とした。

 その結果、T2時のコルチゾール値(平均21.8pg/mg)は、T1時(平均16.0pg/mg)、T3時(平均17.7pg/mg)、およびT4時(平均18.4pg/mg)よりも有意に高いことが明らかになった。T1時のコルチゾール値と対照群のコルチゾール値(平均17.9pg/mg)との間に有意差は認められなかった。さらに、被毛のコルチゾール値と尿サンプル中のコルチゾール/クレアチニン比との間には、控え目ながらも有意な相関関係が認められた。研究グループは、「犬のウェルフェアに関する研究では、被毛を使ったこの非侵襲的な検査法が有用なツールの一つになる可能性がある」との見方を示している。

 Van der Laan氏は、「動物保護施設に収容されるのも、里親の元に引き取られるのも、環境が全く新しくなるという点では同じだが、犬が受けるストレスは異なるのか否か。われわれにとってその点が重要な疑問だった」と研究背景について話している。そして、犬が新しい環境に慣れることができない場合には、長期的な健康や行動上の問題が生じかねないとした上で、「保護施設のような場所では、ストレスレベルを可能な限り下げる必要がある」と主張する。

 米ワシントン州立大学獣医学分野の臨床指導者を務めるCassidy Cordon氏は、「動物保護施設だろうと一時的な預かり所だろうと、集団生活は犬にとってストレスになる」と話す。同氏は、預かり所のような場所は、騒々しくて音が反響し、他の犬の吠え声がストレスになったり、眠りを妨げられたりする。そもそも日常のリズムが変わるだけでも、犬にとってはストレスになり得ると説明する。そして、「そのような環境が、犬にとてつもなく大きな影響を与えることは確かだ。場合によっては攻撃的になったり、それとは逆に、自分の殻の中に閉じこもってしまう犬もいるだろう」と語る。

 Cordon氏は、「犬のストレスは、施設内に音の一部を和らげるための音楽を流すなどすれば減らすことができる。また、施設のスタッフが、新しい環境で犬ができるだけ充実した日々を過ごせるように手助けしながら、徐々に慣れさせていくことも考えられる。里親が見つかれば、新しい家族が食事や散歩をはじめとする活動のルーチンを築き、そのリズムを維持していけば、犬も適応できるはずだ」と話す。その上で同氏は、「そのリズムを予測しやすいほど、犬も早く適応できるだろう」と付け加えている。

[2022年4月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら