ED治療薬と硝酸薬を同時処方しても有害事象は増えない

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/05/20

 

 シルデナフィル(商品名:バイアグラ)などのED治療薬とニトログリセリンなどの硝酸薬を同一患者に処方しても、有害事象は増えないとする論文が発表された。コペンハーゲン大学(デンマーク)のAnders Holt氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月19日掲載された。

 シルデナフィルなどのPDE5阻害薬と呼ばれるED治療薬と、虚血性心疾患(狭心症など)の治療に用いられる硝酸薬の同時処方は長年、禁忌とされてきた。しかし、虚血性心疾患(IHD)のある男性患者は、性機能障害を併発していることが多いのも事実であり、Holt氏によると、デンマークでは2000年から2018年にかけてED薬と硝酸薬の同時処方の件数が20倍に増加したという。これは、これら2種類の薬を同時処方したとしても、その潜在的なリスクは高くない可能性のあることを示している。

 硝酸薬は、心臓の動脈を広げる作用があり、狭心症の発作の際に舌の下に含んだり、発作予防のために内服したりする。一方のPDE5阻害薬も、硝酸薬とは機序が異なるものの血管を広げる作用があり、その作用は陰茎でより強く働き、勃起を維持する。

 1990年代の終盤にバイアグラが発売されて以来、これら両剤の同時服用によって、血管拡張作用が重複し、血圧が危険なレベルに低下する可能性が危惧されてきた。米国テキサス州の心臓病専門医であるJohn Osborne氏も、「ED薬と硝酸薬の同時処方は、絶対避けるべきと考えられてきた。患者もそれらを同時に服用してはならない。同時に服用したら、軽い場合でもめまいや立ちくらみが起きる可能性があり、最悪の場合、血圧の過度の低下が心臓発作や脳卒中を引き起こすかもしれない」と解説する。

 Holt氏らは、2000~2018年のデンマーク国民の患者データを用いて、ED薬と硝酸薬の同時処方の実態と、それに伴う心血管イベント発生率との関連を調べた。上記期間中に男性IHD患者24万9,541人が記録されており、そのうち4万2,073人に硝酸薬が処方されていた。硝酸薬が処方されているIHD患者に対するPDE5阻害薬の処方率は、2000年は100人当たり年間平均0.9件(95%信頼区間0.5~1.2)であったのが、2018年には19.5件(同18.0~21.1)に上昇していた。しかし、両剤同時処方件数と心血管イベント発生率との間に有意な関連は見つからなかった。

 「両剤を同時処方されていた男性が、それらを同時には服用していないことが、この研究結果に表れているのではないか」とOsborne氏は推測する。つまり、「通常、硝酸薬は朝、ED治療薬は夕方服用するため、相互作用が起こりにくい」とのことだ。米国内科学会(ACP)の会長であるGeorge Abraham氏も、「われわれ医師の多くは、両剤の作用のピークが重ならないようにすれば、問題が起きる確率を抑えることができると考え、患者にもそう伝えてきた。患者は医師の指示を順守しているのではないか。今回発表された研究は、臨床医が長年抱いていた疑問を背景に行われたものと言えるだろう」と述べている。

 ただし、Osborne氏とAbraham氏は、「ED治療薬の作用時間が伸びてきたため、硝酸薬との作用が重複するリスクが以前よりも高くなっていることに注意が必要だ」と語る。Abraham氏によると、「バイアグラの作用時間は約4時間だったが、タダラフィル(商品名:シアリス)は24時間作用が続く。ED治療薬を服用後、時間がたってから胸痛発作が起きて硝酸薬を舌下に含んだ場合、血圧低下のリスクが考えられる」とのことだ。

 一方、Osborne氏は、「これまで患者からのED治療薬の処方希望に窮していた心臓病専門医にとっては、この研究発表によって今までよりも若干、その希望に応えやすくなったのではないか」と語る。「引き続き注意が必要ではあるが、両剤が処方されている患者に重大な有害事象のサインが見られないという事実は、非常に心強い。理論的には相互作用の可能性があるものの、リアルワールドでは起きていないということだ」と同氏はこのトピックを総括している。

 なお、本研究と同様の研究結果が昨年、「The Journal of Sexual Medicine」に報告されている。

[2022年4月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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