臥位と立位での血圧差は心腎疾患の独立したリスク因子

横になった時と立った時の血圧の差が大きいことは、心血管疾患や腎疾患の独立したリスク因子であるとする論文が「Hypertension」に3月17日掲載された。パドヴァ大学(イタリア)のPaolo Palatini氏らが、未治療高血圧患者を17年以上追跡した研究から明らかになった。
論文の筆頭著者であるPalatini氏は、「臥位から立位になった時の血圧上昇は、若年高血圧患者の予後にとって重要な因子の可能性がある。6~7mmHg程度の変化でも、長期的には心腎イベントのリスクになるという結果に、非常に驚いた」と語っている。
この研究の対象は、18~45歳でステージ1(140~159/90~99mmHg)の未治療高血圧患者1,207人(平均年齢33.1±8.6歳)。全員が白人で4分の3近くが男性であり、参加登録時点で糖尿病や心疾患、腎疾患を有していなかった。
臥位と立位の血圧を3回ずつ測定し、2週間おいて再度同様に測定。その平均値の差(立位での値-臥位での値)の十分位で全体を10群に分類。すると、第10十分位群の120人は、臥位と立位の収縮期血圧の差が平均11.4mmHgであり、全員が6.5mmHgを上回っていた。一方、その他の群の収縮期血圧の差は平均-3.8mmHgであり、臥位よりも立位の方が血圧が低かった。また、対象者全体の血圧差の平均は、-2.5±7.3/4.6±5.4mmHgだった。
24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で高血圧が確認された割合は、第10十分位群90.8%、その他の群76.4%であり、前者の方が有意に高かった(P=0.001)。このほか、第10十分位群は喫煙者率が高かったが、過体重や肥満、心疾患の家族歴のある人の割合は、その他の群と有意差がなかった。
17.2年の追跡期間中に、105件の心血管・腎イベントが発生した。Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、第10十分位群はハザード比(HR)1.97(95%信頼区間1.10~3.52)であり、臥位と立位の血圧差が、心血管・腎イベントの独立したリスク因子であることが分かった。多変量解析の共変量に、24時間ABPMで認められた高血圧を追加しても、結果はほとんど変わらなかった〔HR1.94(同1.10~3.44)〕。
また、臥位と立位の血圧差の大きさは、ストレスホルモンであるアドレナリンのレベルとも関連が認められた。具体的には、24時間蓄尿でアドレナリンが測定されていた630人での検討で、第10十分位群のアドレナリン(クレアチニン補正値)は118.4±185.6nmol/molであり、他の群の77.0±90.1nmol/molより有意に高かった(P=0.005)。
これらの結果から論文の結論は、「若年から中年の高血圧患者に見られる、立位での収縮期血圧の過剰な上昇は、交感神経系の亢進と関連しており、心血管および腎関連イベントの独立した予測因子であることを示している」とまとめられている。またPalatini氏は、ジャーナルのプレスリリースの中で、「われわれの研究結果は、高血圧患者の治療を最適化するために、立位での血圧測定も必要であることを示唆している。臥位との血圧差が大きい患者には、生活習慣の改善と降圧治療をより積極的に行うべきかもしれない」と述べている。
[2022年3月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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