気道を加熱する治療で重症の喘息発作が緩和

重症喘息患者に対する最先端の手術による治療法である「気管支熱形成術(気管支サーモプラスティ)」の施行から5年後、喘息の症状が有意に改善し、重度の喘息発作や救急外来の受診、入院が減少し、ステロイド薬の使用量も減少したとする研究結果が明らかになった。米イェール大学医学部教授のGeoffrey Chupp氏らが実施したこの研究の詳細は、「CHEST」3月号に掲載された。
喘息患者の多くは、吸入薬や錠剤、注射薬などの薬剤で症状をコントロールできる。しかし、米クリーブランド・クリニックによると、喘息患者の約5~10%では、薬剤や吸入器などによる治療のみでは症状をコントロールできないという。
このような重症患者では、気道を“改造”して呼吸を改善する気管支サーモプラスティが選択されることもある。気管支サーモプラスティは、先端にバスケット型の電極が付いたカテーテルを気管支まで挿入し、気道壁に触れる程度にバスケットを広げて熱を加え、気道壁の下の平滑筋を減少させるという治療法だ。平滑筋を減少させると気道の収縮が抑制され、喘息発作が起きにくくなると考えられている。この治療法は、2010年に重症喘息の成人患者に対する治療法として米食品医薬品局(FDA)により承認されている。
今回の研究は、気管支サーモプラスティによる治療を受けた米国とカナダの喘息患者284人を対象に実施された。患者の年齢は18~65歳で、喘息コントロールのためにステロイド薬と長時間作用性β刺激薬を使用していた。研究では、対象者の約80%(227人)が5年間にわたって追跡され、気管支サーモプラスティの施行前の12カ月間と施行後5年間の重度の増悪(喘息発作)や救急外来の受診、入院、薬剤の使用状況が調査された。
その結果、5年後に経口ステロイド薬を使用していた患者の割合は、施行前の19.4%に対して手術から5年後には9.7%に低下していた。また、施行前と比べて施行後に増悪が生じた患者の割合は77.8%から42.7%に、入院した患者の割合は16.1%から4.8%に、救急外来を受診した患者の割合は29.4%から7.9%に低下していた。
Chupp氏は、「この治療法が有効であり、5年にわたってその効果が持続し、重大な有害事象も生じないことを示した研究報告は増え続けている」と話し、「このことは、適切な患者に対しては引き続き気管支サーモプラスティを施行すべきことを支持している」と述べている。喘息に対する新しい治療法としては、生物学的製剤と呼ばれる薬剤の使用も広がりつつあり、多くの患者で喘息発作の減少に寄与しているという。同氏は、「気管支サーモプラスティは、こうした生物学的製剤が奏効しない患者に対して有用だ」と説明する。なお、一部の患者では、生物学的製剤と気管支サーモプラスティの両方を用いた治療が行われるという。
米国肺協会(ALA)チーフ・メディカル・オフィサーのAlbert Rizzo氏によると、喘息は気道の炎症で、通常、抗炎症薬や気管支拡張薬を主体とした治療が行われる。しかし、一部の患者がそうした治療に反応しない理由については依然として謎であるという。同氏は、「重症の喘息は、患者の生活の質(QOL)を損ない、時に命に関わることもあるため、複数の治療法が使えることは重要」と述べ、他の治療に十分反応しない患者に気管支サーモプラスティが選択肢の一つとなることを示したエビデンスが今回の研究によってさらに増えたとしている。
Chupp氏らは、今回の5年間のデータからは、長期的な有害事象は確認されなかったと報告しているが、短期的なリスクはあるとしている。また、今後の研究によって、気管支サーモプラスティの施行方法などが改善されるとともに、この治療に適した患者がより明確に示されることに期待を寄せている。
[2022年3月18日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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