抑うつはドライアイの症状を悪化させる?

慢性的なドライアイに加えて抑うつ症状を抱えている人は、ドライアイはあるが抑うつ症状はない人と比べて、目の症状が悪化しやすい可能性のあることが、米ペンシルベニア大学ペレルマン医学部のGui-shuang Ying氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Ophthalmology」に3月10日発表された。
Ying氏らは、「抑うつがドライアイの重症度に影響を与えているのか、あるいはドライアイの症状が抑うつをもたらしているのかについては不明」とした上で、「重要なのは、抑うつと重症のドライアイが関係している可能性があるという点であり、患者や医療従事者はそのことを認識しておくべきだ」と話している。
ドライアイは極めて高頻度に生じる疾患だが、その重症度は患者ごとに異なる。よく見られるのは、1日中コンピューターの画面を見て過ごすことなどで生じる軽度のドライアイだ。これは、市販の点眼薬と適度な休憩でコントロール可能だ。これに対して、シェーグレン症候群や関節リウマチなどの自己免疫疾患に関連して生じた重症のドライアイに悩まされる患者もいる。
これまでの研究では、慢性的なドライアイを持つ人たちでは、抑うつを抱えている人の割合が平均よりも高いことが示されていた。こうした中Ying氏らは、535人(平均年齢58歳、女性81%)のドライアイ患者のデータを二次解析した。これらの患者は、オメガ3脂肪酸のサプリメント摂取によるドライアイの改善効果を評価するために実施された臨床試験に参加した人々だった。対象者は同試験の開始時と、開始から6カ月後(479人)と12カ月後(486人)に標準化された精神衛生に関する質問票に回答していた。
抑うつありと判定された対象者の割合は、試験開始時が15.7%(84人)、試験開始から6カ月後が17.3%(83人)、12カ月後が13.2%(64人)だった。抑うつありと判断された患者では、1年間の追跡期間中の目の症状が全般的により重症であることが示された。自己免疫疾患の有無など他の因子を考慮した解析でも、同様の関連が認められた。
また、抗うつ薬を含めて多くの薬剤はドライアイの副作用を伴うが、今回の研究では、抗うつ薬の使用とドライアイの重症度との間に関連は認められなかった。さらに、ドライアイと抑うつは、いずれもそのプロセスに炎症が関与している可能性が指摘されているが、研究対象者から採取された涙液中の炎症マーカーを調べたところ、抑うつとの関連は認められなかった。
研究論文の筆頭著者である同大学のYi Zhou氏は、「こうした結果となったものの、抑うつとドライアイを関連付ける要因は不明だ」と言う。「例えば、重症のドライアイが人々の精神衛生に影響を与えることは容易に想像できる。一方で、抑うつのある人では痛みの感覚が異なることを示唆する複数の研究結果が報告されている」と同氏は話す。また、抑うつは生活習慣にも大きな影響を与え得る。抑うつのある人が、毎日、ほとんどの時間をテレビの前で過ごしている場合、それによってドライアイの症状が悪化する可能性もある。
さらに、この研究論文の付随論評を執筆した米マイアミ大学バスコン・パルマー眼科研究所のAnat Galor氏は、抑うつとドライアイには共通した要因がある可能性を示唆している。ただし、現時点では全てのシナリオがまだ検討中の段階にあり、ドライアイの治療が抑うつの改善につながるのかどうかは不明だという。このことを踏まえた上で同氏は、「重要なのは、ドライアイのある患者に抑うつがある場合には、両方の症状に対処する必要があるということだ」と指摘。実際、同氏はドライアイの患者には精神的な健康状態についても尋ねるようにしているという。
Ying氏も、「一般的な臨床的兆候と比べて重症のドライアイの症状が見られる患者には、精神的な健康状態のスクリーニングを実施するのが望ましい可能性がある」と話している。
[2022年3月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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