運動でドライアイが改善?

運動には、ドライアイを改善する効果もあるのかもしれない。その可能性を示唆する研究論文が「Experimental Eye Research」1月号に掲載された。論文著者の1人であるウォータールー大学(カナダ)のHeinz Otchere氏は、「われわれの研究は、現在行われている点眼薬を含むドライアイ治療の代わりに、運動が眼の乾燥の予防策になり得るか否かの結論を得ることを目指した」と、研究目的を語っている。
眼の表面(角膜と結膜)は、涙液の膜で覆われている。涙液は瞬きをした瞬間に眼球表面全体に広がって、角膜や結膜に水分を補給したり、ほこりや汚れなどの刺激物から保護するように働く。健康な涙液の膜は、油や水、ムチンと呼ばれる糖タンパク質が層状になっているが、それらのいずれかの層が不安定だと涙液の膜が途切れやすくなる。その結果、眼球表面が乾燥しやすくなる病気がドライアイで、痛みや灼熱感、かゆみなどの症状が現れる。
Otchere氏らは、このようなドライアイに対する運動の有用性を、18~25歳の大学生52人を対象として検討した。対象者の半数は週に5回以上スポーツを行っているアスリート群で、男性と女性がそれぞれ13人。残りの半数は特にスポーツを行っていない男性17人と女性9人。平均年齢は、アスリート群が22.4±2.1歳、非アスリート群が21.8±2.1歳だった(P=0.357)。トレッドミルを用いて疲労困憊に至るまで運動を行ってもらい、その前後に涙液の分泌量、涙液の安定性〔涙液層破壊時間(TBUT)〕などを測定して、運動の影響を検討した。
まず、運動を行う前の時点での測定結果を両群で比較すると、アスリート群は非アスリート群よりもTBUTが有意に長かった(14.6±2.9対11.9±3.8秒、P=0.021)。TBUTが長いことは、眼球表面の涙液の膜の安定性が高く、眼が渇きにくいことを意味する。このTBUT以外の評価指標は、有意差がなかった。
次に、運動前後の変化を両群で比較すると、涙液分泌量(下の瞼に糸を15秒間挟み、涙で湿った長さ)については、アスリート群では、運動前が22.3±2.5mm、運動後は25.8±1.7mmであり、有意な増加が認められた(P<0.001)。非アスリート群も、有意水準には至らなかったものの、運動前の21.42±2.85mmから運動後には23.73±2.68mmと増加傾向が見られた(P=0.08)。
TBUTについては両群ともに運動前より運動後の方が長く、また、運動後の値もアスリート群の方が長かった(17.7±2.7対14.8±2.9秒、P=0.004)。このほか、有意水準には至らなかったものの、運動の持続時間と運動後のTBUTが正相関する傾向が見られた(P=0.068)。
Otchere氏によると、人々のスクリーンタイム(スマホやパソコン操作、テレビの視聴などの時間)の増加を背景に、ドライアイ症状を訴える人が増えているという。同氏は、「パソコンなどのディスプレーを使った作業に長い時間を割かなければならない状況で、定期的な運動を継続することは困難かもしれない。それでも、われわれの研究結果は、運動が身体や心の健康だけでなく、眼の健康にとっても重要なことを示している」と述べている。
[2022年2月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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