ホルムアルデヒド曝露は認知機能低下と関連

職場でホルムアルデヒドに長期間曝されると、後年になって、思考力や記憶力などの認知機能に問題が生じる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。モンペリエ大学(フランス)のNoemie Letellier氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月22日掲載された。
ホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体で、消毒剤や防腐剤、建材や塗料などの原料として、広く使われている。Letellier氏らによると、ホルムアルデヒドへの曝露は、特定のがんの発症と関連付けられているが、ホルムアルデヒド曝露が認知機能に及ぼす影響について検討した研究はこれまで実施されていないという。
そこでLetellier氏らは今回、7万5,322人(平均年齢57.5歳、女性53%)を対象に、ホルムアルデヒド曝露と認知機能との関連を調べる研究を実施した。対象者の8%(6,026人)は、看護師、介護士、医療技術者、繊維・化学・金属工業の労働者、大工、清掃員などで、職業を通じてホルムアルデヒドに曝露していた。対象者は、ホルムアルデヒド曝露年数(6年以内、7〜21年、22年以上)と予測される生涯の累積曝露量に応じて、それぞれ3つの群に分類された。認知機能については、語想起、記憶、注意、論理的思考やその他の思考スキルを測定する7種類のテストを用いて評価した。
年齢、性別、教育歴などの因子を調整して解析した結果、職業を通じてホルムアルデヒドに曝露している人では曝露していない人に比べて、包括的認知障害の発症リスクが17%高いことが明らかになった。また、包括的認知障害リスクを曝露年数別、および累積曝露量別に検討したところ、リスクは曝露期間と用量依存的に関連することも判明した。ホルムアルデヒドに曝露していない群と比べて、ホルムアルデヒドに22年以上曝露している群では同リスクが21%、ホルムアルデヒドの累積曝露量が最も多い群では同リスクが19%高かった。
ただし、この研究結果は、ホルムアルデヒド曝露と認知機能の低下との関連を示したに過ぎず、因果関係が証明されたわけではない。
Letellier氏は、「この研究結果は、たとえホルムアルデヒド曝露量が少なくても、認知機能が低下する可能性のあることを示唆するものだ」と述べている。そして、「仕事でホルムアルデヒドに曝される人は予防策を講じる方が良いだろう。また、企業側も、従業員のホルムアルデヒドへの曝露を減らす方法を検討すべきだ」と主張している。
[2021年12月23日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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