NO合成阻害薬と化学療法の併用、トリプルネガティブ乳がん治療に有望

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/01/13

 

 予後不良として知られるタイプの乳がんに対する治療法として、開発段階にある薬剤と化学療法による併用療法の有望性が臨床試験で示された。化学療法抵抗性のトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に実施された同試験では、一酸化窒素(NO)合成阻害薬であるNG-モノメチル-L-アルギニン(L-NMMA)とタキサン系抗がん薬の併用療法により、約46%の患者で治療効果が認められたという。米ヒューストン・メソジストがんセンターのJenny Chang氏らによるこの試験の詳細は、「Science Translational Medicine」12月15日号に掲載された。

 TNBCとは、エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体、HER-2タンパク質の全てが乳がん細胞に存在しないタイプの乳がんのこと。米国では、乳がん患者の約15~20%をTNBCが占める。TNBC患者では、ホルモン療法やHER-2を標的とする治療薬では効果が得られないため、手術と化学療法を主体とする治療が行われる。しかし、化学療法が奏効しない患者や、化学療法に抵抗性を示すようになる患者は少なくない。

 TNBCではNOの過剰なシグナル伝達が予後不良に関連しているとされる。L-NMMAはNOのシグナル伝達を阻害する作用を持つ。Chang氏らはこれまでに、L-NMMAによって腫瘍の増殖と転移を抑制できることを基礎研究で確認しているという。

 今回の試験では、24人のTNBC患者(局所進行乳がん患者11人、遠隔転移のある転移性乳がん患者13人)が、L-NMMAと標準的な化学療法薬であるドセタキセルの併用療法を3週間ごとに最大で6サイクル受けた。その結果、45.8%(24人中11人)で治療が奏効し、がんの退縮が認められたことが明らかになった。がんの進行度別に見た奏効率は、局所進行乳がん患者で81.8%(11人中9人)だったのに対して、転移性乳がん患者では15.4%(13人中2人)にとどまり、この併用療法は、局所進行乳がん患者に対して効果が大きいことが判明した。また、局所進行乳がん患者のうち3人(27.3%)で、手術時にがんの病理学的完全奏効が確認された。

 Chang氏は、次の段階として、進行TNBCの女性を対象とした大規模臨床試験を行うと説明。また、まれな乳がんだがトリプルネガティブであることの多い化生がんに対しても、この治療法を試したいと話している。

 一方、この臨床試験には関与していない米国臨床腫瘍学会(ASCO)のチーフメディカルオフィサーであるJulie Gralow氏は今回の報告について、「より規模の大きな臨床試験でこの治療法の有効性と安全性を検証する必要がある」と指摘。また、以前は化学療法がTNBCの治療の唯一の選択肢であったが、現在は複数の新たな治療法が承認されている上に、研究段階にある治療法もあることを強調している。

 その一つとして挙げられるのが、今年、米食品医薬品局(FDA)が早期TNBCや、一部の転移性乳がんの治療薬として承認したキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)だ。また、Trodelvy(一般名sacituzumab govitecan-hziy)も今年、既に標準治療を受けた局所進行または転移性のTNBC患者に対する治療薬として承認されている。

 米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCharles Shapiro氏も、進行TNBCの治療選択肢は広がりつつあることを指摘。その上で、「NOのシグナル伝達を阻害するという方法は、新しい治療アプローチだ」と期待を示し、今後さらなる研究で検証すべきとの見解を示している。

[2021年12月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら