母親のにおいは乳児の脳の社会的な発達に影響する

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/01/07

 

 母親の声には泣き叫ぶ乳児を落ち着かせる力があるが、母親のにおいも同じ力を持つことが、新たな研究で示唆された。母親のにおいは母子間の脳活動の同期を促し、それが、乳児の脳の社会的な発達に影響を与えている可能性のあることが明らかになった。ライマン大学(イスラエル)発達社会神経科学センターのRuth Feldman氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」12月10日号に掲載された。

 母親のにおいは、乳児に安心感を与え、また乳児が周囲の世界を認識する上で重要な役割を果たすことが、過去の研究で報告されている。しかし、においが乳児の脳の社会的発達に果たす役割については、明確になっていない。

 そこでFeldman氏らは、母子の脳波を記録して脳活動の同期率を調べることにより、母親のにおいが乳児の社会的交流に与える影響を調査した。実験開始前の準備として、参加者の母親に、コットン100%のTシャツを実験開始日の前々夜および前夜に着用してもらい、瓶の中に保管した上で実験日当日に持参してもらった。乳児の平均月齢は生後7カ月前後だった。研究チームは、大半の乳児は生後7カ月頃から対面での社会的交流をし始めるため、この月齢を選んだと説明している。

 実験ではまず、37組の母子の頭にそれぞれ17本の電極を付け、背中合わせに60秒以上座らせた状態と、対面で自由にやりとりを行う状態の2パターンで脳波を測定した。その結果、脳活動の同期率は、対面でのやりとりのときの方が背中合わせで座っているときよりも高いことが判明した。

 次に、51人の乳児と見知らぬ女性を対面で座らせて脳波を測定した。この見知らぬ女性は、研究に参加した母親たちと年齢が近く、また、研究に参加した乳児の年齢範囲と同じ月齢の子どもを持っていた。乳児のそばには、未使用のTシャツと、乳児の母親のにおいが染み込んだTシャツを順に置いた。その結果、乳児と女性の脳活動の同期率は、未使用のTシャツをそばに置いた場合は低かったが、母親のにおいの染み込んだTシャツをそばに置いた場合には、母親と対面しているときと同程度に高まることが明らかになった。

 こうした結果を受けて研究チームは、「この研究結果は、国を問わず、さまざまな形で影響を与える可能性がある。例えば、母親のにおいがついたアイテムがそばにあることで、子どもは母親がそばにいなくても他人とうまく同調できるかもしれない」と述べている。

 自身も乳児の脳の発達について研究している、米フロリダ大学教養学部のLisa Scott氏は、「この研究報告を見て、本当に興奮した。この研究で用いられた手法は、乳児と母親の相互作用の研究に最近使われ始めたばかりのもので、真に革新的で新しい」と高く評価する。

 研究では、乳児は母親のにおいが近くにあると、見知らぬ人とも安心してやりとりができたことに言及し、「この結果は、乳児にとっては母親のにおいが何よりの安心材料であることを意味しているのではないかと思う。通常、乳児は母親と過ごす時間が最も長く、母親のにおいは、乳児にとっては顔や声と同じくらい馴染み深いことからすると、これはもっともなことだ」と語る。

 Scott氏はさらに、「今回の対象は生後7カ月の乳児だったが、個人的には、乳児が著しい成長を見せる時期、つまり生後9カ月や12カ月、14カ月では、脳活動の同期の仕方はどう変わるのかに、とても興味がある。おそらくは何らかの変化が現れるはずで、この興味深い研究の今後の報告を聞くのを心待ちにしている」と話している。

[2021年12月13日/HealthDayNews]Copyright (c) 2021 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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